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8話 隣県知事たちとの会合

 10月下旬に差し掛かった頃、雪華が中央に出した情報の裏付けをとったり県知事に説明したりと色々な作業に追われた政府執行部、また内容を全て公開するなどの件に関しては政治家や事務官達と討論となる。


 更に衛星が落ちていない状況のためメルリアにや各種宇宙関連機関などに問い合わせるなどの情報収集に奔走した。その結果事実であることが裏付けされた事で全てを公表する事を検討すると言ってきた。

 当然公表次期は神崎家の了承を得てからという事である。


 また政府執行部が調整に動いている時、神崎領に神崎総帥の家では隣県の知事と副知事や市長などが集まって政府からの指示を携えやってきていた。神崎家本宅である御陵屋敷には菊の血族は立ち入ることが出来ないため、雪華が来ることになっている。


「雅彰さん、総理や神崎総帥の指示でやってきましたが、本当に大丈夫なんでしょうな?」

「我々の県は守られると言うことは」


 神崎総帥が政府執行部に神崎家との連絡役として中央にいるため、長男の雅彰が代理となっているので、知事から預かったという指示書を読み沈黙しながらも彼らの話を聞いていた。


「まぁ、落ち着いて下さい、もうすぐ当主がこられますので」

「その当主はあの榊雪華さんだったかね」

「今は神崎雪華様です」

「……その当主がなぜここにおらんのだ、この屋敷は神崎家の屋敷ではないのかね」


 周辺は津波で流されたり地震で倒壊している所が多い中、被害はあったものの倒壊を免れていた神崎家の屋敷、結界を張っていたのが功を奏したという状態で、今は安全な場所で寝泊まりをしている。


「ここは神崎家の本家ではありませんからね、本家は神崎領の中にある御陵屋敷です」

「どういう事です」

「簡単な話ですよ、我々が分家である菊の末裔だからです、ご存知のように我々の先祖菊は次期当主である弟殺しのうえ父親殺しの汚名を持ち怨霊となってしまいました。そのため父親である神崎信之介からの呪詛を受けている血筋でもあるんです」

「呪詛………」

「菊の血を受け継ぐ神崎家は、本家である御陵屋敷には立ち入れません、立ち入れば体調不良をおこし、そこに居られないのです。更に言えば、信之介の呪いは菊の血族の中でも第一子以外は皆10年以内に命を落とします。これは未来永劫、子々孫々まで続いていますので、ですから私も本家には行けないのですよ」

「しかし、その怨霊となった信之介殿はもういないと総帥は言っていたが……」

「あぁ確かに、メルリアにいた当主を殺すために怨霊となった菊が飛んでいったのを確認し、信之介は直系の末裔を助けるために更に追いかけて戦ったそうです。これは当主自らが立ち会ったそうですが、勝利したのは信之介で菊は負けて二度と生まれ変わることはないと言われました。ただ信之介は菊の血筋が残っていることに対して不安があったのでしょうね、呪詛は解かずに旅立ったと当主から伺っています、なので我が家は本家には近づけませんし、それにまだ璃桜が御陵屋敷には居ますからね」

「その璃桜と言うのは?」

「信之介の息子です、菊に殺された弟で本来の次期当主となるはずだった方ですよ、この方は怨霊にはなっていませんが、直系一族と雪華様を守るためにまだあちらにわたっていないのですよ」


 これを聞いた面々は一応に顔を見合わせていた。そんな所に雪華が到着したのである。


「お待たせして申し訳ありません、色々とやることが多くて」

「かまいません承知している所をお呼びだてしたのですから、それとこれをどうぞ、彼らが持ってきた書類です」


 雅彰が対応し席を勧めながら県知事たちが持ってきた書類を見せた、雪華は座ってから一応の挨拶をそれぞれと交わしてから、書類に目を通した。書類の指示は以下の文面だった。


『1,県は全て神崎領となり、県政は消滅することとなる。その為、領主神崎雪華の指示に従うこと。

2,その代償を持って県は放射能汚染から守られ神崎領の恩恵に与れる事になる。

3,今後一切、国は県側の苦情は受け付けつけない、既に神崎領は独立自治体であるため、国は口出しが出来ない。』


 以上の内容だった。これに対して雪華は大した興味も持たず、ただ難しい顔をしている者達の顔を見て、一言言った「何か言いたいこと、聞きたい事はないか」とその言葉に政治家たちはお互いに顔を見合わせていた。そして代表して県知事が口を開いた。


「この指示書の内容に対して、正直な所を言えば異論を唱えたい。しかしながら放射能から守られるのなら、やむを得ないと考える」

「それで、県政のあなた方だけではなく議員たちも同意してくれますか? 今ここにきているのはトップの方々ですよね、末端の役人が知りませんでしたなどと言って市民を混乱させるようような事になりませんか?」

「それは……」

「その様子では指示書がきてすぐに飛んできたという感じですか、では1週間猶予を与えますので、議論でも何でもして下さい、そして当然市民にも通達して下さい、この一件まだ公にしていないのです、避難場所の確保が出来なければ国民の多くが死に至ります、それを少しでも回避するためにあなた方の県を神崎領にして他県からの避難民を受け入れる様にすると言っているんです、言っておきますが、これは神崎家が提案し政府執行部が決定した事ですから」


 雪華の言葉に戸惑う面々に対して、雅彰が既にそちらの県が神崎領であるという証拠の境界柵を設置し始めているという事実を告げた。正直早めに作業をしなければ間に合わないと雪華が急かせた為である。


「わかりました、早急に対処いたしますが、なぜそこまで急ぐ必要があるのか理由をお聞かせ願いたい」

「時間がないんです、衛星が落ちる時期や放射能拡散がいつ起きてもおかしくない状況なんです、ですからまだ通信が可能な時に全てを終えないと助けられる人も助けられません、それにこちら側の対処が遅ければ、避難できずにここまでこられない人まで出てきますから、何としても早めに結界を張りたいんです、ただ、全ての国民を助けられないんですが、せめてこちらに避難できた方だけでも守りたいと思っています」


「時間がない」この一言で知事はそこまで切迫状況に陥っているのかと感じた、政府からの指示も早急に対応するよう急いでいるようだったと感じたからだ。


「もう一つお聞きしたい、神崎領となるからには県民、市民の土地が全て神崎家の所有となる、そういう事ですよね」

「そうです」

「では彼らの資産がなくなると言うことにはなりませんか」

「確かにそうですが、完全に無くなるわけではありません、土地代という賃貸料を神崎家に支払ってくれればいいのです、土地代とは固定資産税の半分+αが家賃です、既に土地の支払いが終わっている家庭は支払い分は免除の対象となりますが対象期間が済めば土地代は支払っていただきます、また土地の上に建っている家屋に関しては個人が建てた者ならば個人所有を認めているので子々孫々引き継いでもかまいませんが建物にかかる固定資産は個人で支払っていただきます、これは神崎領に住んでいる領民と同じ条件ですので不公平は無いはずです」

「では集合住宅のような大きなものはどうなりますか?」

「それはこちらで買い取りとなります、そして個々に部屋に住む住人に対して家賃が発生します。また分譲の場合は土地も建物も神崎家の所有となりますが、家賃に関しては他と同じく固定資産税の半分+αと共益費が家賃となります」


 雪華は現在の神崎領で発行している領民便りを何部か渡し、領内規則・内規なる冊子なども渡して今日の会談は終了となった。

 だがさすがに1週間は短すぎたようで2週間後に再度県幹部達が神崎邸を訪れていた時は既に11月初旬である。


「期日を大幅に遅れて申し訳ない」

「まぁ、仕方ないですよ市民の反発があったのですから、でぇその市民はどんな感じですか?」

「神崎領に住む人々の意見を聞くことが出来た事で一定の落ち着きと、受け入れざるを得ないという風になったようです、極めつけはあの境界柵でしたがね」

「なるほど、柵は結界を張るうえで重要なものですからね、早急に完成させておかないと、間に合いませんし」

「そうですか」

「それと知事、県民、市民に対して領民の証である身分証明書(IDカード)の作成の協力が出来そうですか?」

「国が発行して居るものではだめですか?」

「あれでは特定が無理なんですよ、特にこの災害が多い場合。神崎領の場合は特殊なものを使っています、たとえ火災などで黒こげになっても、腕や足が千切れで体の一部しか見つからなくても、個人特定が出来るものなんです」

「そんなものがあるんですか!」

「なのでご協力いただきたい」

「わかりました、では何をどうすればいいんですか」

「こちらから人を派遣します、全県人、全市民をあちらに大きめのテントを張りますので乳飲み子から、高齢者、障害者を漏れなくつれてきて下さい。車いすで来られる方もです、寝たきりの方については別働隊で出向いて作りますから、また病院で生まれてすぐの乳児や意識を失ってICUに入っている者も対象です。これはかなり早急に明日からお願いします」

「わっ、わかりました」


 細かな指示を出して雪華は自身の執事である小花衣に対応の指揮を任せた。自身は身分証明書(IDカード)の土台になる物の作成を御陵屋敷の執務室で、急遽倍増して作成に当たっていた。

 これはいくらあっても良いものなので在庫を含めてかなりある。とはいえ今後も必要になるだろうと考え、せっせと作成しているのだ。

稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。

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