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俺の日常に突然美少女が現れた ~俺とタツミさんの青春ラブコメディな365日~  作者: 摂津守
9月

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9月3日(土)図書館でタツミさん

 図書館が好きだ。休みの日は、近所の図書館にしょっちゅう通っている。たくさんの本があって飽きないし、オールシーズンエアコンが効いているし、なにより静かだ。俺は静謐な空間が好きなのだ。図書館はリラックスした時間を過ごすのにベストなプレイスというわけだ。


 今日は昼に図書館を訪れた。現在午後一時。閉館時間の午後五時までいるつもりだ。いつも休日は多くの人で詰めかけ押しかけ、サイレント椅子取りゲームの様相を呈するこの図書館だが、今日は違った。人は少なく、空席が目立つ。図書館に人は少なければ少ないほどいい。それだけ静謐感が増す。


 手始めに俺は雑誌を手に取った。スポーツ雑誌だ。絶対に自腹を切って買うことのない雑誌でさえ、図書館なら無料で読むことができる。出版社にとってあまり嬉しいことではないだろうが。


 スポーツ雑誌をぱらぱらめくる。百数十ページに渡る内容も、ほとんど興味のない競技の記事ばかりだ。俺が興味を持っているのはせいぜい二、三競技だ。記事にして五から六といったところ。有名選手のインタビューがあれば、競技を問わずそれらも読むが、好きなものだけ全部読んだとしても、三十分くらいで読み終わってしまう。


 スポーツ雑誌を読み終わると、次も雑誌だ。次はテキトーに目についたものを手に取る。航空機の雑誌を手にとってみた。実は全く興味のないジャンルだ。だが、たまにはそういうのを読むのもいい。少しだけ視野が広がるような気がするからだ。


 あいにくと、いや、予想通りと言うべきか、やはり興味の持てる内容ではなかった。でも、だからこそ、俺は隅から隅まで読んでみた。わからないことばかりで、あまり楽しくはなく、途中雑な読み方になってしまったが、それでも一応全部目を通した。小さな発見もあったので、俺としてはそこそこ満足だった。


 次は漫画コーナーに足を運んだ。藤子・F・不二雄の短編集が揃っているので、テキトーな一冊を手に取った。実は何度も読んだことがあるのだが、何度読んでも面白いから仕方がない。俺は立て続けに二冊読んだ。


 ラストは小説を読む。ここに来る前からそう決めていた。今日はなんとなくホラーな気分だったので、ホラーコーナーでテキトーなものを一冊手に取った。予備知識一切なしで読んでみたのだが、これが非常に面白く、俺は集中して読むことができた。気がつけば閉館時間五分前だった。


 まだ読み終わっていなかったので、借りて家で読もうと思い、席を立ったときだった、


「それ、借りるの?」


 隣から声をかけられた。タツミだった。キュロットパンツに映画キャラのTシャツと夏らしい格好。片手に文庫本を開いていた。


「お前、いつから……?」


「二時間くらい前かな?」


 俺は全く気付いていなかった。二時間前といえば、藤子・F・不二雄の短編集の二冊目に取り掛かったところだ。つまり、その後一回席を立っているのだ。そのときに気が付かなかったとは不覚である。


「声くらいかけてくれればいいのに……」


「すっごい頑張って読んでたからね、声かけづらくって」


 タツミは苦笑した。

 たしかに集中して読んではいたが、別に頑張っていたつもりはない。そんな必死になっているように見えたのだろうか。なんとなく気恥ずかしくなった。


「今度からは、声くらいかけてくれよな」


 俺は無人貸出機のところへ、本を持って歩いた。

 後ろからタツミがついてきた。


「あれ? 怒ってるの?」


「怒ってないよ」


「ふふっ、変なの~」


 タツミは笑った。俺は苦笑した。

 変なのは俺が一番よくわかっていた。なぜかわからないが、タツミが声をかけてくれなかったことが癪に障った。あっちだけがこっちに気付いていて、こっちがあっちに気付いていないのは不平等だ、そんな意味のよくわからないことを考えてしまっていた。


「ねえ、一緒に帰ろうよ」


「ああ、そうだな」


 ま、とにかく休日にタツミと会えたのだから、それで良しとしよう。

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