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6-5 Genjuku Station, Genjuku, Genjuku-ku, Tokyo
「ついに、この時間がやって参りました! 特別ゲストの方々から重大発表で~す!」
イベント前半の行程がすべて終わった午後七時頃、運営による特別生配信が始まった。アシスタントが八戸やヒヨコ役の声優たちと共に、盛り上がっていたダンジョンやリアルの現宿の様子などを振り返った後、特別ゲストで藤山と、開発の幹部サルヴァートルが登場した。
「この二人久しぶりに出てきたね。いやー、豪華な顔ぶれだな……」
一飛は緊張をまぎらわせようとしたが、逆に自分とパーティの緊張をあおってしまった。歩玖は、自分たちのように現宿駅周辺で配信を見ている、いまだ熱気が冷めきらない大勢のプレイヤーたちもみんな同じ気持ちなのだろうか、とそわそわした。
「でもその前に! まずはケイヴトゥジエンドのストーリーの続きをどうぞ!」
「あ~! 焦らすな~! でもヒヨコも気になる!」
結果発表を待っていて気が気でないが、芽緒はグラスに映るムービーに注目した。
カラスは倒された後、夢幻力の暴走がおさまってだいぶ落ち着き、反省したようだった。ここをヒヨコたちに明け渡すと約束するが、家をダンジョンに作り替えたのは自分ではないと言う。ヒヨコたちは最初信用しなかったが、頭脳明晰な桃ぴよは真実を悟った。
「カラスが言ってることは本当よ! このポエジーアモルファスによって夢幻力が暴走してしまったのは、この子だけじゃなかった。もともとここにいた一羽のヒヨコが、あふれ出す夢幻力で家と自分自身を作り変えてしまったの!」
ヒヨコは強い夢幻力を生み出し続ける存在でいるために、自分にとって枷となる、不必要な部分を切り落として捨て去った。その部分こそ、今ここにいる六羽のヒヨコたちだったのだ。
「え~⁉ じゃあ、ぴよちゃんたちはもともと、同じ一羽のぴよちゃんだったってこと⁉」
驚愕の事実にしえるが驚いていると、桃ぴよは「私たちは鳥アタマだから、三歩歩くとつい大事なことも忘れちゃうけど……今は思い出せるわ!」と言っていてそれも別の驚きがあった。
「俺はそのヒヨコが透明になって空を飛んでいくのを見たカァ。そしたら急にあのでっかい柱が現れて、お前らが落ちてきたんだカァ……。それじゃ、悪カァったな!」
カラスは無責任に情報だけ残して飛び去っていった。ヒヨコたちはそれぞれ、「そいつを倒せば元に戻れるのか⁉」「某とこやつがもともと一羽とは……」「あんな高いところに一人でいるのは怖いよ~」などと意見を言った後、赤ぴよのリーダーシップによって一つにまとまった。
「そのもう一羽を助けに行こう! だって、私たちはみんなそろって全部なんだもん!」
「赤ぴよちゃんは優しいなぁ~」とホロリときているしえるの横で、芽緒は彼女の言葉がやけに胸に響いた。芽緒は、自分の中に強い部分と弱い部分があって、どっちが本当の自分なのかよくわからない。どっちも好きで、嫌いだった。でも、どっちも本当の自分だとしたら。
ヒヨコたちの願いに反応し、光るマメが再び輝きだした。青ぴよは少し惜しかったらしい。
「あ~! オイラのお宝が……! でも、仲間のためなら!」
光るマメはダンジョン中に散らばっていたようで、どんどんここへ集まってくる。そして大きな塊になると、勢いよくマグマの中へダイブした。
「あ、なんか出てきた!」
しえるはみんな違う画面を見ているのに指さしてしまった。ポエジーはマグマからとてつもなく大きなツタとなって生え出し、すごいスピードでダンジョンの出口へと伸びていく。
「現宿から出ちゃったけど……」
いつの間にか風景は現実になっていて、夏の黄昏の街を光のツタがうねりながら駆けていく。上空にエアリアルプリズムがあるところまで来て、ツタは空に伸びる高い塔に巻きつきながら登り、ついにプリズムの底面を捕まえた。
「皆さん、もうおわかりですね! エアリアルプリズムには、東京クラウドツリーから上ります! 明日の舞台は上空390メートル、エアリアルプリズムの中となっていま~す!」
しえるは反応しようとしたが、アシスタントはまだ続ける。
「そして、挑戦するのはこちらの方々!」
「えぐ……!」
いち早く、芽緒は八組のパーティの中に自分たち「エッグタルト」の名前とエントリーナンバーを発見した。みんなで喜び合おうとしたが、アシスタントはまだまだ続けた。
「ごめんなさい時間が押してます! さらに、八戸プロデューサーからも重大発表があります! お願いします!」
「ほんとはもっと喋りたいけどじゃあ手短にね。皆さん、明日はなんと、ダンジョンを作ってくれた、あのふかしイモさんが登場します。どういう形で出てくるかは……内緒です。お楽しみに!」
「え……⁉ うそ……⁉」
サプライズで頭が真っ白になりかけたしえるの画面に、アイルからの「明日会おうね」というメッセージと、運営からの確認事項が届いた。嘘みたいだが、間違いなく本当の出来事だ。
「すごいなぁ……。夢みたいじゃん。えぐ子さん、やっぱり持ってるよ」
「えぐ、おめでとう。あたしたち、やったね……。夢叶ったよ!」
「しえるさん、良かったですね。僕も、明日がすごく楽しみです」
みんなからの祝福に、説明が得意なしえるも、自分の気持ちをうまく言い表せない。
「……ありがとう。みんなと一緒で、私も本当にうれしい!」
明日、憧れのふかしイモに会えるかもしれない。そう思うとしえるの胸は高鳴った。一飛や芽緒の言うとおり、本当に夢みたいだ。幸せでいっぱいなのは本当だが、しえるはまるで夢幻力の暴走みたいに、そのせいで我を忘れてしまったりはしないよう気をつけていた。
夢とも現実とも、両方とちゃんと向き合いたい。レンズが片方なのはそのためでもある。




