5-3 EIGHT HOURS, Hannichimachi, Yamagata-shi,Yamagata
「管野のおかげで海行けるわ。マジありがと~。お土産楽しみにしといて」
「了解。現地の干物なら何でもいいよ」
管野は趣味のアウトドアで国内はだいぶ行き尽くしている。松山がお盆に友達と神奈川へ行くというので、行き方や観光スポットを教えていた。
このコンビニではかなり長い管野は、地主のオーナーとも良いつきあいができていて、ほかの従業員の休みシーズンに必ず出勤するかわりに、自分はシーズン外に混雑を避けて旅行できるよう、いつでも休みを取っていいと言われていた。
「いらっしゃいませ~」
松山に聞かれて、管野が神奈川へ一人でキャンプに行ったときの話をしていると、管野と同世代くらいのグラスをかけた青年が入ってきた。彼はいつものように弁当を買って出ていく。
「お弁当くんマジうける」
「あの人、うちの隣の人だよ」
「え、そうなんだ⁉ 喋んないの?」
「普通喋んないでしょ。先週くらいから急に来るようになったよね」
「なんか最初ヤバみあったけど、今元気っぽくね? 女できたかな?」
管野は一飛のことは全く知らないが、顔と、ずっと食材が来ていたのは見たことがあるので知っている。あまり健康そうでないイメージがあったが、急に弁当を買うようになって、なぜか自炊より元気そうになっているのが不思議だった。
松山の邪推で管野は思い出す。隣から一飛が若い女の子と話しているのがよく聞こえてきていた。内容はわからないしうるさいほどでもないので、管野はずっと気にしていなかった。しかしあるとき、そういう犯罪のニュースを見て、よもや、と頭から離れなくなった。
安全そうか確認するためだからやましくない、と自分に言い聞かせて管野が壁に耳をつけようとしたところ、立てかけてあったテントの支柱が倒れてしまい、「ドン!」と激しくぶつかった。隣が一瞬でひっそりしたので、管野はこれはまずいと思った。
それ以来、管野は謝る機会を探していたのだが、直接チャイムを鳴らす勇気はなかった。どういう人かわからないので怖かったのだ。でも、こうしてコンビニで顔を合わせるようになると、案外良い人そうだった。松山の言うとおり話しかけてみてもいいかもしれない。
「うけるそれ。そこまで思ってるとかもう恋じゃん! 今度誰かに話すね」
管野が盗み聞きっぽい部分をうまく切り取って事情を説明すると、松山はまず面白がってからだが、誤解を解く方法を考えてくれた。
「管野もどっかのお土産あげちゃえばよくね? あと何か同じ趣味の話とかすれば?」
「趣味ね」
あの感じなのでアウトドアはまずない、と管野は判断した。あとは家での趣味といえばゲームだ。でもゲームといってもいろんなジャンルがある。
管野はEODをかなりやっていて、一人だが旅行先でダンジョンやボス攻略を楽しむスタイルだ。その遊び方が面白いゲームだと思っているので、一飛がEODのプレイヤーとは考えづらかった。仮にそうだとしても、家でバーチャルで遊ぶ人と話が合うとは思えない。
「てか管野、ほんとは盗み聞きしようとしてたんじゃね? 変態?」
説明に無理があったらしく、しっかりバレていた。管野は嘘が苦手なのだ。




