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ホロ暮らし  作者: 御影 夕介
30/42

5-3 EIGHT HOURS, Hannichimachi, Yamagata-shi,Yamagata

「管野のおかげで海行けるわ。マジありがと~。お土産楽しみにしといて」


「了解。現地の干物なら何でもいいよ」


 管野は趣味のアウトドアで国内はだいぶ行き尽くしている。松山がお盆に友達と神奈川へ行くというので、行き方や観光スポットを教えていた。


 このコンビニではかなり長い管野は、地主のオーナーとも良いつきあいができていて、ほかの従業員の休みシーズンに必ず出勤するかわりに、自分はシーズン外に混雑を避けて旅行できるよう、いつでも休みを取っていいと言われていた。


「いらっしゃいませ~」


 松山に聞かれて、管野が神奈川へ一人でキャンプに行ったときの話をしていると、管野と同世代くらいのグラスをかけた青年が入ってきた。彼はいつものように弁当を買って出ていく。


「お弁当くんマジうける」


「あの人、うちの隣の人だよ」


「え、そうなんだ⁉ 喋んないの?」


「普通喋んないでしょ。先週くらいから急に来るようになったよね」


「なんか最初ヤバみあったけど、今元気っぽくね? 女できたかな?」


 管野は一飛のことは全く知らないが、顔と、ずっと食材が来ていたのは見たことがあるので知っている。あまり健康そうでないイメージがあったが、急に弁当を買うようになって、なぜか自炊より元気そうになっているのが不思議だった。


 松山の邪推で管野は思い出す。隣から一飛が若い女の子と話しているのがよく聞こえてきていた。内容はわからないしうるさいほどでもないので、管野はずっと気にしていなかった。しかしあるとき、そういう犯罪のニュースを見て、よもや、と頭から離れなくなった。


 安全そうか確認するためだからやましくない、と自分に言い聞かせて管野が壁に耳をつけようとしたところ、立てかけてあったテントの支柱が倒れてしまい、「ドン!」と激しくぶつかった。隣が一瞬でひっそりしたので、管野はこれはまずいと思った。


 それ以来、管野は謝る機会を探していたのだが、直接チャイムを鳴らす勇気はなかった。どういう人かわからないので怖かったのだ。でも、こうしてコンビニで顔を合わせるようになると、案外良い人そうだった。松山の言うとおり話しかけてみてもいいかもしれない。


「うけるそれ。そこまで思ってるとかもう恋じゃん! 今度誰かに話すね」


 管野が盗み聞きっぽい部分をうまく切り取って事情を説明すると、松山はまず面白がってからだが、誤解を解く方法を考えてくれた。


「管野もどっかのお土産あげちゃえばよくね? あと何か同じ趣味の話とかすれば?」


「趣味ね」


 あの感じなのでアウトドアはまずない、と管野は判断した。あとは家での趣味といえばゲームだ。でもゲームといってもいろんなジャンルがある。


 管野はEODをかなりやっていて、一人だが旅行先でダンジョンやボス攻略を楽しむスタイルだ。その遊び方が面白いゲームだと思っているので、一飛がEODのプレイヤーとは考えづらかった。仮にそうだとしても、家でバーチャルで遊ぶ人と話が合うとは思えない。


「てか管野、ほんとは盗み聞きしようとしてたんじゃね? 変態?」


 説明に無理があったらしく、しっかりバレていた。管野は嘘が苦手なのだ。

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