4-4 Les couleur, Itoda, Yofu-shi, Tokyo
歩玖が「みんなの役割を生かす」ために考えた戦術はこうだった。
奉行を先に倒すルートは変わらないが、工夫したのは倒すタイミングだ。奉行を早く倒しすぎてしまうのを避けるため、ターゲットを集中するのではなく、歩玖はゴーレム、芽緒は奉行と担当を分けて攻撃する。
こうすることで、ゴーレムに防御バフの上から大ダメージを与えるのと、奉行の体力を減らすのを同時進行できる。そしてタイミングを見計らって奉行を倒せば、削られたゴーレムの猛攻はしのぎやすくなる。
この方法ならタイミングさえ間違えなければ、歩玖でも全滅しなくなったし、省カウントでクリアできた。ただ、一つ欠点がある。
「どうやってもえぐが死ぬ……!」
芽緒は今日こそ久しぶりにしえるの制服姿を見たかったので、塾の授業を振り替えてまで早めに店に来ていた。が、やっているのはゲーム内のしえるに倒れるまで攻撃を受けさせることだけなので、自分が友達思いなのか何なのかわからなくなってきた。
「そうなんです。この方法だと、カウントは少なくなるんですけど、そのぶんしえるさんが攻撃を受ける回数が減ってしまって、防御力を上げづらくなっちゃうんです。それで……」
みんなの画面に映っている芽緒のテストプレイでは、かなりの好成績でバトルには勝ったものの、しえる一人だけが倒れたままだった。
「まあまあ、あくまでゲームなんだし。全然気にしなくても大丈夫だよ」
しえるは本当に気にしていなかった。それどころか歩玖が一人でこの攻略法を考えたことや、ゲーム内でも自分を頼ってくれているのを喜んでいるくらいだった。
「うーん……。待って、もう一回やってみる!」
芽緒はしえる生存を目指して再挑戦したが、結果は変わらなかった。むしろ、スタイルがぶれたせいで安定せず、カウント数は増えてしまった。
「あ~! なんでよ~! なんでえぐを救えないの……⁉」
冷静さを失ってしまった芽緒は、歩玖から見ても芽緒らしくないと思うほどだった。歩玖は責任を感じて、こんな案を出さなければよかったと後悔した。
「……すみません。やっぱり、別のやり方のほうが良いですよね」
歩玖や芽緒とは逆に、しえるは落ち着いている。
「ううん。私も昨日いろいろ試してみたら、これが一番早かったよ。みんなの気持ちはうれしいけど、私は私の役割でみんなを助けられるのがもっとうれしいんだ。だから、私はこれで行ってみたい!」
「でも……」と反対しかけた芽緒は「いや、えぐがそう言うなら」と覚悟を決めた。一飛は芽緒に思い出させる。
「まだEPLがあるからね。えぐ子さんが絶対落ちるって決まったわけじゃないよ」
「あ、そうだよ! パンダ、仲間っぽいこと言えるようになったじゃん!」
「え? そう? 前からこんな感じだったと思うけど……」
言われてみて、一飛は今までこういうことは思ってはいたが、言ってはいなかったと気づいた。外出するようになって気が大きくなっているのかもしれない。
「そういえば、芽緒さんとパンダさんはEPLやることあるんですか?」
歩玖から二人に聞いてくるのは珍しかったので、ちょっと驚いてから答える。
「あたしは必要があれば、恥ずかしいけど頑張って使ってる。現宿のボス戦でもやるつもりだし。普段やらない人でも、ちゃんと気合入れば一割は伸びるからね」
「俺は大声出すと騒音になっちゃうから無理。本番プレイスキルで補えなかったらすみません」
もうすぐ歩玖を帰さなければいけない時間なので、しえるは話をまとめる。
「じゃ、現宿で思いっきり戦うためにも、アイルちゃんに全力をぶつけてみよっか!」
「はい!」
歩玖は、探し出した「夢」のことを早くしえるに話したいと思っていたが、もし早とちりだったらどうしよう、という不安もあった。その前に、もう一度だけ確かめておきたい。




