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ホロ暮らし  作者: 御影 夕介
21/42

4-1 Kazuto’s Room, Hannichimachi, Yamagata-shi,Yamagata

 アイルとの対戦が行われる土曜日までのあいだ、それぞれボスの対策や作戦を考えることになった。


 ルールはEPLありで、それぞれのパーティが別個にボスと戦うカウント制、しえるたちの配信はアバターのみでボイスなしと、近づくイベントの最終日とほぼ同じ形式となっている。


 EPLが自由にできる場所のボスとしていくつか候補があったのだが、芽緒は四王子市のバーベキュー場にいる火属性のボスがいいと言った。勝ち負けは目的とは関係ないにしても、せっかくなら勝ちたいということで、アイルが比較的苦手とする属性を選ぶことにしたのだ。


「いやぁ……。忙しくなりそう」


 一飛が気が重い感じだったので、話の流れで冷蔵庫の件を話さざると得なくなった。案の定芽緒からは「早く買えばいいだけじゃん」と言われてしまったが、思いもよらないことに歩玖からフォローがあった。


「何がいいか比べるのって大変ですよね。僕もおばあちゃんにグラスを買ってあげるとき、どういうのにしたらいいかすごく迷っちゃいました」


「そうなんですよ……。ありがとう、あるくさん」


 たしかに家電にこだわるほうではあるが、一飛が一番気にしているのは家電量販店に行ったり搬入業者に来てもらったりしたくないということだった。でもとてもそうは言えない。優柔不断だと思われてもいいので黙っていると、しえるから提案があった。


「せっかくだからさ、新しいの買うまで近所のお店とかお弁当とかいろいろ食べ比べてみるのどう? 暑くないときなら外に出て歩くのも健康にいいかも」


「あ~。なるほどね」


 食材はすぐに止めてもらったし、冷蔵庫の中は一日かけて処理したので、嫌だが今日からは外に出ないと死んでしまう。配食サービスも考えたが、こういう機会を楽しいことに生かそうというしえるらしい案に、一飛は心を動かされた。


「さて、じゃ行きますか……」


 話し合いが終わった後、ぐずぐずしていたらあっという間に暗くなってしまった。隣はいないようだが、一飛はしずかにドアを開け閉めして、生ぬるい夜の空気に包まれる。食材と荷物の回収、ゴミ出し、散髪以外で出るなどどれくらいぶりだったか思い出せない。


 暗い時間になってしまったのは、明るいうちに人と顔を合わせたくないというのもあった。グラスがあるとはいえ、今でも視線を感じるとどうしてもびくびくしてしまう。一飛は、これは長く持たなそうなので、今夜の夕食は最寄りのコンビニの弁当に決めた。


 明るい店内に入ると、一飛は就職してすぐは毎日コンビニ弁当を食べていたのが懐かしくなった。パーティには言わなかったが、品川の近くに勤めていて、晶も何度か通ったことがある。ただ、人に気を遣う仕事で病んでしまったのでそれ以上は振り返りたくなかった。


 コンビニ弁当へのトラウマがかなり薄まっているのは救いだった。最近、調理や保存を考えて魚は注文していなかったので、久しぶりに鮭の弁当を選ぶ。


「どーぞ~」


 レジの若い女性に声をかけられて、一飛は反射的に体を逸らしてしまった。どうやら、この店は無人レジがないらしい。確かめておけばよかったと後悔した。


 普段、しえるや芽緒や紫音のような女子と話しているとはいえ、目の前に実物がいると話が違う。それに三人と違ってギャルっぽい感じだったので、一飛にはハードルが高すぎた。


 一飛は、逃げよう、と考えている自分に気づく。この時代、人に会わずに生活する方法はいくらでもある。でも、そう考える自分が情けなくなってきた。


 しえるの案を良いと思ったのも、このままではいけないと思っていたからだ。しかも、歩玖の成長も見せつけられてしまった。一飛は、ここで逃げたらもっと駄目になっていく予感がした。


 ためらっているうちに、レジは一飛と同年代くらいの男性に変わる。今がチャンス、と一飛はレジへ突入した。


「ありがとうございましたー」


 コンビニを出て、一飛は胸をなでおろした。一時期、人と接触すると拒絶反応のようなものがあったが、だいぶ時間がたっているせいかなんとか大丈夫だったし、不思議と良い気分だった。


 一飛は、一人だったらこんな挑戦はしなかったかもしれない、と思いながら部屋へ戻った。

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