14.身バレ
_____そういえば、変なやつらがいたからぁ、やっつけといたよ〜!!
凛々しい見た目と反し、口調がいつものルークで少し安心しました。しかし話している内容は全く可愛くありません。怪しい人物とは恐らく追手のことでしょう。
褒めて褒めて、と言わんばかりにしっぽを振るので、先程ルカ様に下ろしてもらった私はそのままルークに近づいてはその綺麗な毛並みに手を触れました。
「(ルーク、ありがとうございます。たすけにきてくれたのですね。)」
_____えへへ、無事でよかったよぉ〜
ルークの返事はルカ様には聞こえませんので、いつものように心の中で会話をしました。
それにしても、もしかしてこの姿がルークの本当の姿なのでしょうか。
「ルティ、まさか狼を飼ってるの…?」
「え、あ…はい。あの、実は内緒なのです。どうか、秘密にしていただけませんか?」
「わかったよ。じゃあ、これは僕たちだけの秘密だね。」
狼の姿のルークを警戒してしまうのではないかと心配しましたが、ルカ様はルークが味方だと信じてくれたようで安心しました。
「どうやらルークが追手を倒してくれたようです。おそらくもう大丈夫だとおもいます」
「え…そ、うなの?凄いな…それに、彼と意思疎通できているの?」
「あ、えっと…か、勘です。」
凄いね、と素直に褒めてくださるルカ様には感謝と、嘘をついた罪悪感の気持ちで溢れています。
それにしても、褒めろ褒めろと今度はルカ様にしっぽを振るルークは誰にでも懐くのでしょうか…
_____そんなことないよぉ。だってこの人はルティーを助けた良い人なんでしょ〜?
また心を読まれてしまったようです。困った顔を浮かべてしまった私に、ルークは艶々な毛並みを私の体にくっつけてきました。狼なので6歳の私の体とほぼ同じくらいの大きさで、ルークじゃない普通の狼でしたら圧倒されていたでしょう。
しかし甘えてくるのも結局可愛くて、思わず抱きついて撫でてしまいました。初めてのルークの温もりに、頬が緩んでしまったのは内緒です…。
「兵の人たちもすぐそこに来ています。まだ残党が残っている可能性もありますので、急いで保護してもらいましょう。」
「そうですね。」
私の手を引いて進むルカ様。…なんだか話し方に違和感を覚えましたが…
「ルカ様、どうして急に敬語を…」
私の問いかけに足を止めたルカ様は、困った笑顔を向けてきました。
「本当は初めから気づいていました。黙っていて申し訳ございません。ルティ…いえ、ルティシア・フィネ・イルネール皇女殿下ですよね。」
「!!」
気づかれていると思いませんでした…いえ、しかしこの髪色と目の色はおそらくそうそういないでしょう。まさか、ずっと私に合わせてくれていたのでしょうか…?
「気づいてたん、ですね…。いえ、こちらこそ黙っていてごめんなさい。」
「どうか謝罪はおやめください!でも、なぜあのような場所に突如として現れたのか気になることは沢山ありますが…」
ルカ様はそう言い、ルークの方にも視線を移しました。
「…貴女様のおかげで僕は命を救われました。守る立場でありながら、むしろ守られてしまい情けない限りです。」
「っそんなことありません!ルカ様は私をまもってくれました。その…おそらくルカ様の抱いている疑問に全てお答えはできませんが…あの…」
やはり、ルカ様はルークのことをお父様たちに伝えるのでしょうか。秘密だと仰ってくれましたが、そもそも皇女が狼を秘密に飼っているだなんておかしい話ですよね。まあ、私もまさかルークが狼の姿になるとは思いませんでしたが…
そんな私の不安を察したかのように、ルカ様は私との目線の高さを合わせるように屈んでくれました。急に距離が近くなって思わずドキッとしてしまいました。おかしいです、先程なんてほぼ0距離だったのに…
「安心してください。ルークのことは誰にも言いません。僕と、皇女殿下の秘密です。」
「!……は、い。ありがとう、ございます」
ルカ様の微笑みにまたもや心臓が少し締め付けられました。ああ、一体これはなんなんでしょうか。
とりあえずルークの存在がお父様たちにバレることがないことに安堵を覚えました。
繋がれているルカ様の手から伝わる温もりに、更なる安心感と、初めて味わう緊張感に言葉がつまずきました。
_____じゃあまたあとでね、ルティー!お部屋で待ってるよぉ〜
「(あ、ルーク…!)」
「行っちゃいましたね…」
「あ、えっと…先に戻るようです。」
「賢いんですね。では、僕たちも行きましょう。」
急に帰ってしまい、取り残された私とルカ様。ルカ様は優しく手を引いてくれました。
皇女と知られると、こんなにも距離を感じるのですね。ルカ様は間違っていません。ただ、ルティシアに生まれてから、家族や皇宮の人たちとしか関わっていなかったため、この距離感にもどかしさを覚えてしまっただけです。
先程の守るという言葉も、私が皇女なのを既に知っていての言葉だったのですね…なんでしょう、なんだかとても心が悲しいです。
しかしいずれ私は皇女の身分を捨てる身。その時には、私を、ただのルティシアとして見てくれる人に出会えたら…きっと、それ以上の喜びはないはずです。
きっと…___
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