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13. 皇宮の騒動

なんだか嫌な予感がした。


普段ならルティーはきっともう寝ているであろう時間にようやく書類が終わり、少しだけルティーの様子を覗こうと思った。


なんともない、きっと天使のような寝顔で寝息を立てて休んでいるだろう姿を想像して足を運んだ。



_ガチャ




しかし扉を開くと、ベッドで寝ているはずのルティーとなぜか目が合った。




「え」




ルティーの下には魔法陣が浮かび上がり、光出した瞬間に僕は慌てて手を伸ばした。




「ルティーっ!!!」




寸前のところで間に合わなかった。あっという間に僕の目の前から消えたルティー。シンと静まり返る暗い部屋の中、僕は我に返った。




「誰か!!今すぐ父上たちを起こして!!緊急事態だ!!」




皇宮は大騒動になった。


急いで騎士を手配して外を、皇宮全ての人に建物の隅々までルティーのことを探させた。




「エド!ルティーが消えたってどういうこと!?」


「母上っ。わかりません、突如魔法陣が現れ、ルティーが目の前から消えました…僕がもっと早く反応出来たら…っ」




皇宮には結界が張られている。無闇に魔法陣、それも転移魔法のような上位魔法を使えるはずがない。




「…誘拐…か。」




考えられるのはそれしかない。


しかしなにかが引っかかる。いつも寝ているはずのルティーが起きていたこと。もしかしたらただ単に眠れなかっただけかもしれない。


だが、それならなぜ床に座っていたのだろうか。魔法陣に驚いているというよりも、僕が部屋に入ったことに対して驚いているようにも見えた。


…もしかして、転移魔法が現れることを知っていた?


(いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。一刻も早くルティーを見つけなきゃっ)



「ああ、ルティー…どうしてこんなことに…!」



泣き崩れた母上に寄り添うセヌア。

捜索範囲は国中となり、父上の指示のもとルティーの捜索は夜明けまで続いた。


本当なら僕も探しに行きたかったけど、誘拐の可能性もあるなか、身分的に一人で外出する訳にはいかない。


もどかしくて、何よりも大事な妹ひとりすら守れない自分に腹立たしくて、





「お願い、ルティー…どうか無事な戻ってきて…っ」




祈ることしかできない僕を、どうか許して。






**************





「ルカ様、あれは!」


「国の兵だね。追手も追いついてきてない。」



ルティシアを抱えているにも関わらず、ものすごい速度で逃げきれたルカは息切れひとつもしていない。


ようやく一息つけると、揺れるルカの胸の中で安堵したルティシアだったが、次の瞬間1本の矢が後ろから迫ってきた。


寸前で避けたルカは顔をしかめる。



「この矢、追跡魔法がかかってる…急ごう」



遠くに見える光は国の兵で間違いない。しかし距離はまだ少しある。追跡魔法を矢にかけて狙ってきたということは、相当レベルの高い敵がいるということ。


距離は離れているはずなのに、どうやら安心するにはまだ早かったようだ。



「ルティー、安心して。僕がいる限り君には傷1つつけさせないから」



切羽詰まっている状況にも関わらず、まるでナイトのようなルカのセリフにルティシアは息を飲んだ。


不安が高まった心に平穏が戻ってくる。

今回森に飛ばされてしまったのは誰も悪くない、単なる事故にすぎない。…だが、この事故がなければルカと出会うことはなかったし、彼はそのまま他国へ攫われてしまったかもしれない。


そう思うと、今ふたりが無事にここにいるのは奇跡としか思えない。


ルティシアはほっと息をついてルカの胸に身を寄せた。



「はい。ルカ様は、王子様みたいですね。」



ふふ、と思わず頬が緩んでしまい口から出たそのセリフ。


ルカは思わず足を止めそうになった。




「(本当のお姫様にそんなこと言われたら、勘違いしてしまいそうだよ…)」



王子だなんて恐れ多すぎる。なにしろ、自分の大事な友人こそが本物の王子で、君はこの国の姫。

せめて、君のたった一人の騎士になれたらと思わずにはいられない。


ルカに身を預けているルティシアは、その黒い髪に隠れている耳が赤くなっていることに気づいていない。


追われている中だというのに、2人を纏う空気はどこか穏やかで、少し甘かった。




____ルティー!!



「!…ルーク!」




甘い雰囲気は、ルティシアを呼ぶ声によって強制的に終了された。


しかしルティシアはさらに慌てる。




「ルーク…?」


「え、あ」


_____もう〜沢山探したんだよぉ!こんなに遠くまで来ちゃってたんだねぇー!





思わず口に出してしまったその名前に、ルカは首を傾げた。誰もいない空間をキョロキョロと見る。


ルークのことは、自分にしか見えないことを忘れていた。どうやって誤魔化そうかと、焦っていると、突如目の前に真っ白な毛並みな2人の視界に入った。



_______仕方ないなぁ〜、ルティー以外僕のこと見えないのに〜全くルティーはおっちょこちょいなんだからぁ



ルティシアは唖然とした。目の前に現れてた犬…いや、狼?からルークの声がした。




「もしかして、ルークってこの子のこと?」


「え、あ、そ、そうです!ルーク!この子がルークです!」




えっへん!助けてやったぞ!、と自慢げにしっぽを振る犬…いや、狼をルティシアは目をぱちぱち瞬かせながら見た。







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