番外編~バレンタインDay~〈後編〉
できたクッキーを、あとは可愛らしいラッピングで包むだけ。綺麗に出来上がったそれらをみて、ルティシアは満足そうに頬を赤らめた。
全部で6つ。アンナは誰にあげるのか大体検討をついているが、予想よりも少し数が多い気がした。
「ルティシア様。殿下方と皇帝陛下、皇后殿下で全部で4つだと思いますが、残りの2つはどなたへお渡しする予定でしょうか?」
アンナは本当に心当たりの無い様子で首を傾げた。ルティシアはせっせと大きめの袋に5つのものを入れると、残りの一つだけを手に残して、それはアンナの目の前に差し出された。
「勿論1つはアンナの分です。アンナ、いつも傍にいてくれてありがとうございます。」
数秒固まるアンナは、震える両手を抑え、ルティシアからそれを受け取った。感激と幸せと、なんとも言えない感情達が溢れて、泣きそうになっているのだ。
だが、そのような情けない姿を見せる訳には行かない。アンナはまるで宝物を扱うような優しい手つきで、袋をそっと撫でた。
「ありがとうございます。ルティシア様にお仕えすることが私の幸せでございます。どうかこれからも、お側に居させてください。」
「ふふ、はい。約束ですよ。」
バレンタインは、恋人の絆だけを繋ぐものではない。
「これは…まさかルティーが作ったのか…?」
「まあ……!!」
無事バレンタインチョコクッキーを受け取った皇帝達は目を丸くした。アスレイは皇帝の威厳などまるでなかったかのようにぽろぽろ大粒の涙を流し、ダイアナは精一杯我が娘を抱きしめた。
そしてその場へたまたまやって来たエドリック達の手にも同様のものが渡れば、2人もルティシアを抱きしめずにはいられなかった。
「もううう、なんでこんなにも天才で可愛いのかな?天使?食べれないよ今すぐ保存魔法かけなければ!!」
「セヌア、さすがに一口は食べないと勿体ないよ。
一口幸せの味を噛み締めて、残りは保存魔法の上に更に結界を張って誰にも盗まれないようにしなければ。」
「ふふ、さすが私の息子たちね。ついでにガラス張りの入れ物を用意しないとね、いつでも目に届くように飾っておきたいわ。」
「よし、今すぐ用意をさせよう!!」
ルティシアは家族たちの会話についていけなかった。戸惑う侍女や執事達のためにも、ルティシアはなんとかチョコクッキーを完食してもらうように説得した。
かかったのは約1時間。
もはやちょっとした労働。
_______ねえねえルティー
「(お待たせしました、ルーク。どうぞ!)」
_______もう〜待ちくたびれたよぉー!!えへへ、ありがとう〜!!!
夜、アンナが部屋から出たのを確認すると、最後のひとつをこっそりとルークに渡す。
どうやって食べるのだろうかと考えたが、光の玉に飲み込まれるようにチョコクッキーは消えていった。口らしきものは見当たらず、少し残念に思えたルティシアだった。
どうやら美味しさに満足したようで、ルークは「うまい!うまい!」と飛び回っている。7つほど入ってあったのも気づいたら完食していた。
_______ありがとうルティー!とーっても美味しかったよぉ〜〜!!!
「(良かったです。ルークも、いつも傍にいてくれてありがとうございます。大好きですよ。)」
_______えへへやったぁ!!僕もルティーが大好きだよぉ〜〜〜!!!!
ルークの正体は結局今になってもわからないままだが、今更気にしない。いつか教えて貰えたら嬉しいな、くらいの気持ちでいるルティシア。
今はただ、その小さな存在が常日頃隣にいてくれているのが当たり前になっていて、当たり前の幸せになっている。
「そういえば、残りのひとつは何方へお渡ししたんだろう?」
自分の部屋に戻ったアンナは、ふと聴き逃したことを思い出した。
だがまあ、いっか、とまだ7分の1しか食べれてない大切なクッキーをベッドサイドに置いて、眠りについた。
明日もまた、大好きなあの方に元気よく仕えるために。
バレンタイン編完結遅くなりました泣
2月中に終わらせてよかったです…。
国によっては、恋人だけでなく友人や家族に、日頃の感謝として花や些細なプレゼントを渡すと海外の友人から聞きました。
ロマンチックで素敵だなと思ったので、思わずこのバレンタイン編に取り入れたくなりました。
次回からは本編へ戻ります。
お待たせしてしまい、大変申し訳ございません。
ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。
今後もぜひよろしくお願いいたします。




