1話「悪夢」
おはよ、こんちゃ、ばんは〜。
春高いいよね。見てたら書きたくなっちゃった。
っていうだけの文章です!
Q.彼は昔、どんな選手でしたか?
A.いやぁ、やばい奴っすよ。ほんまにありえん位練習しよるのに、毎回メンバーには入らんでコートの外からずっと眺めてて。ああ、訛りはすんません。今はそっちに居るんですよ。
Q.今回の彼を、どう見ますか?
A.さっきああは言いましたけど、まああり得んっすよね。正直信じられないっす。この競技でコレって、もう怪物なんてレベルじゃないっすよね。
しかも、あそこなんてノーマークの無名校っすからね。そこからどうやってあんなまで仕上げたのか、もはや恐怖っす。
Q.次期の大会で当たることもあると思いますが、意気込みはどうですか?
A.こういうんは、勝ちます言うて不敵に笑うんが普通なんでしょうけど、すんません。あれとは戦いたくないっす。対策はしっかり取りますけど、勝てるかってのはちょっと……。
そう言って苦笑いするのは、大阪代表のエース。
中学時代は全国優勝を2度経験し、高校にあがってからは先輩の技を学びつつ、着実に成長。
2年になって初めての大会では、初出場ながら主将を務め、チームは全国準優勝。
その体の持つ跳躍力とパワーは、すべての攻撃を最強の1打と言わせる程だ。
そんな若き天才に、こうも言わせる存在。
それこそが、超激戦区だった千葉県の選抜大会、その決勝にて空前絶後の大記録を成し遂げた人物だ。
彼を見た者は、口を揃えてこう呼んだ。「悪夢」と。
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「熱の無い奴はコートに入るな。」
監督は、いつも俺にこう言う。声が大きすぎて何を言っても少し怖い監督だったけど、多分これだけは本気で怒っての言葉だったと思う。
その言葉によると、俺の目には熱がないそうだ。目に熱ってなんだよって思いながらも練習は人一倍やり続けたけど、結局それだけじゃ熱ってのが何なのかは分からなかった。
それでも、毎度毎度選抜に選ばれず、チームメイトを外から見てるうちに少しずつ分かるような気がしてきた。
彼らには、勝つことに対する執念みたいな、点数の1つにもこだわる強い思いみたいな、そんなのがあるような感じがした。それがあるからコートの中は団結して、一丸になって戦っていけるのかな。そう思い始めると、そうとしか思えなくなった。
確かに俺は、好きでやってるだけで、勝ち負けとかに固執したことはあんまりなかった。
だけども彼らのそれが醜く映ることはなくて、むしろ俺には輝いて見えた。その時は、憧れさえ抱いたかもしれない。
だから俺は、彼らの熱を後押しできるような選手になろうと思うようになった。
少なくともあの日が来るまでは、そう思っていた。