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入学3

「し、師匠。これはどうやってやっているのですか? 視覚だけでなく嗅覚も錯覚させているのですか? ということは単なる幻覚ではなく脳に直接働きかけているということになりますよね。いえ、でもここまでのものはあまりにも高度と言いますか不可能です。つまり実物をどこかから引っ張ってきている……?」

 驚きのあまり思わず習っていたときの習慣で師匠と呼んでしまった。

 うーんうーんと、この目の前の魔術を再現するにはどうすればいいのかを考えこんでいると笑い声が聞こえる。

「笑うなんてひどいです! 私は真剣なんですから!」

 笑っているヘンリーなんてレアだ。正直目に焼き付けておきたいくらいだが今はこの自分が再現できるかどうかも分からない魔術にどうしても興味が持っていかれている。それほど高度な魔術式ではないと感じるのに正体の分からないモヤモヤが気持ち悪い。学園の図書館で調べてみたら分かるだろうか。聞いて素直に教えてくれる気がしないし悔しいので、本当の手詰まりになるまで聞いて解決するのだけは避けたい。

 笑い続けるヘンリーを睨みつけながら考えても分からない。ひとしきり笑ってまた元の無表情に戻ってしまった。なんてもったいない。

「それでいい。余計なことは考えず、魔術のことだけ考えていろ。後は俺が何とかする」

 まるで魔術オタクだと言われているようで心外だ。

 真の魔術オタクはヘンリーのほうだと言うのに。朝も昼も夜もずっと魔術式のことだけ考えているような人からの「魔術のことだけ考えろ」という台詞は人生を魔術式の研究に捧げろと言っているに等しい。

「いえ、熟練の魔術師になりたいのではなくて、元の世界に戻るためにはこの世界の魔術に解決策があると推測しているだけなのです」

 と、口から出そうになったが、そんなことを言えばさすがの彼も気分を害すか気でも狂ったかと思うかもしれない。余計なことを言う前に口を固く閉じ、いつの間にか動き出していた外の景色をしばらく眺めた。

 ふと、そんな彼がなぜ学園へとついてくる必要があるのかと疑問に思う。

「特別講師としてここ数年何度も要請があったのを無視していたからだ」

「えぇ……?」

 あきれたような声が出てしまう。リュミエール学園からの要請を無視できる人間がいたなんて。

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