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彼女のともだち3


 子どもの会話が、こんなに見ていて面白いと初めて知った。


「いらっしゃいませー。どのふくにしますか?」

「ピンクのくちゅしたくだしゃい!」

「くつしたはおやゆびのとこがやぶれてますけどいいですか?」

「いいれす! おいくらでしゅか?」

「えっと、えっとこのしろいいしならみっつ、あおいいしならひとつでいいです」

「しろいのでおねがいしましゅ」

「ありがとうございまーす! このいちごはサービスです」

「まあしゅてき! ありがと!」


 キティはすっかりリルに懐いたようだ。二人でお店やさんごっこをしている姿は大変微笑ましい。

 非番の団員や、夜勤明けにも関わらず眠らずまったりしている団員たちも目を細めて二人を見つめている。

 それはともかく、お店やさんごっこには突っ込みどころが多すぎる。

 なぜ破れた靴下を売るのか。しかも客はそれを普通に買う。

 お金がどこぞで拾ってきた小石なのは別にいい。本物の硬貨はまだ早い。

 だがなぜ、衣類を扱う店でいちごをサービスされるのか。

 靴下が破れている詫びなのだろうか。いや、破れた靴下売るなよ。

 ちなみにいちごはおままごとセットのおもちゃのいちごだ。


 先程まで二人の周りできゃっきゃっとはしゃいでいたセインは、カイルの腕の中でぐっすり眠っている。

 はしゃぎすぎて眠くなり、ぐずり出したセインを、しばらくメアリがあやしていたのだが、掃除が途中だったらしく、突然カイルに押し付けて姿を消してしまった。


「何事も経験だよ。リルで体験できなかった分やっときな」


 という一言を残して。

 カイルの手に渡ったセインはさらにむずがり泣き出して、途方に暮れて固まるカイルを助けたのは、小さなレディたちだ。


「おとうさん、しっかりだっこしなきゃだめよ! おせなかとんとんしてあげて!」

「リ、リルのパパしゃん、セインはおみみのちかくでしーってゆうとすぐねりゅの」

「と、とんとん? こうか? しーって…?」

「おとうさん、そのちょうしよ」

「キティがしーってやってあげりゅ」


 二人の心強い協力のもと、ほどなくしてセインは寝息を立てはじめ、ひと心地付いた頃には、他の団員がにやにやとこちらを見つめていてぶっ飛ばしてやりたくなった。


 というあれこれもあり、下手に動いたらセインを起こしかねない状況もあって、カイルはじっとソファに座ったまま娘たちのごっこ遊びを見学していたわけである。


「あにゃた! こにょくちべにはにゃに!?」

「ち、ちがうんだまいはにー! これはおさかなやのマリリンがころんだのをたすけたときについたんだ!」

「うしょばっかり! こりぇでにゃんどめ!? じっかにかえり、えっと、かえりゃせていちゃだきましゅ!」

「まってくれまいはにー! ぼくはきみひとすじなんだー!」


 お店やさんから家に帰ったキティは、その後夫役に変わったリルとなぜか痴話喧嘩を始めた。それも一般的に修羅場と言われる結構ハードなやつだ。

 二人とも、どこで覚えたんだこんなの。

 女の子ってこういうの早い、と聞いたことあるが、早すぎはしないだろうか。

 てか魚屋のマリリンって誰だ。


「こんな本格的なままごと初めて見たわ」

「下手な劇場行くより面白えな」

「リルちゃん、しっかりしてると思ってたけど超演技派じゃん」

「いや、あの大人しいキティも意外な才能を発揮したなぁ」

「てかマリリンて誰だよ」


 周囲の団員たちも興味深げに観賞している。


「子どもって親とか周りの大人よく見てるからなあ。どっかで見たの真似してるんじゃん?」

「え、カイル、浮気したの」

「してねえわ」


 失礼なことを言われてしまった。

 こちとらリルの母親と別れてから、あいつ一筋だわ。


「キティのあのクオリティ…、フィリップとカテリーナの夫婦仲大丈夫かよ…」

「あの夫婦に限ってそれはねえよ! まあ喧嘩は多そうだけど、仲直りも早そう」

「確かに」

「なあ、マリリンって誰なんだよ」


 結局マリリンの正体は分からなかった。



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