彼女とお祭り2
カイルの休みは祭りの五日目に当たる日となった。
その休みを迎える前に、購入した造花を使って花冠を作らなければならない、のだが。
「お前、下手くそだな」
「あーあー、めっちゃ曲がってるじゃん。そんなのリルちゃんに被せるのかよ」
「ちょっとカイル、何度言ったらわかるんだい。そこはそうじゃなくてこう! 全部ほどきな、やり直しだよ!」
「おとうさん、リルがやろうか?」
「………」
そうだった。カイルはこういうことには驚くほど不器用だったのだ。長らくこういったことをしていなかったために、すっかり忘れていた。
非番で寮にいる同僚たちからもさんざん扱き下ろされ、心が折れそうだ。
手の中にある黄色と白の造花を使って編み始めた花冠は、到底花冠には見えない。花はあちこち向いているし、余った茎が飛び出していて、被ろうものなら頭に刺さりそうだ。
こんなもの、とても愛娘にあげられない。
誰が見ても分かるほどにしょんぼりしたカイルは、無言でメアリの指示通りにその塊をほどき始める。
リルは、そんな父親にぴったりと寄り添っている。
「おとうさん、だいじょうぶよ! いんちょうせんせいがいってたの、どんなむずかしいことも、できるまでやったらできるのよって!」
「そうだな。ありがとリル。おとうさん、がんばるからな」
「うん!」
そして周囲に何度もダメ出しを食らいながら、やり直しを続けて、ようやく完成した頃には日が暮れていた。
始めたのは昼食後だったのに。
メアリは既に夕食の支度に行ってしまい、リルは途中ソファの上でお昼寝タイムに突入していた。
「で、出来た…!」
「わああ! おとうさん、かわいいねえ!」
多少の歪さはあるが、始めたばかりのものに比べたら格段にきれいなものがカイルの手の中にある。
リルは瞳を輝かせて、その花冠を見つめていた。
「おとうさん、リルにかぶせて!」
「よしきた」
黄色と白の造花で出来た花冠を、リルの小さな金茶色の頭にそっと被せてやると、リルはぴょんぴょん跳ねながら談話室に無造作に置かれている姿見の前に立ち、鏡の中の自分を見て顔を綻ばせた。
「うわああ…! リル、おひめさまみたい!」
その喜びように、何だかカイルは泣きそうになる。
自分が不器用なせいで、一日遊んでやることも出来ずに付き合わせたのに、文句も言わずに傍にいてくれ、歪さが残る花冠でこんなに喜んでくれる。
ああ、幸せだな、と心から思う。
「リル、おいで」
カイルが呼ぶと、リルは頬を紅潮させて父親の腕の中に飛び込んできた。
カイルは娘の体をしっかりと受け止めると、膝の上に乗せて顔を見合わせる。
「たくさん待たせてごめんな。お祭りの日は、それを被って一緒に出掛けよう」
「このまえかった、きいろいワンピースきていい?」
「もちろん」
造花を買った日に新調したワンピースは、二人の部屋の壁にかかっている。それを買った日から、リルが毎日ワンピースのスカートを撫でながら嬉しそうにしているのを、もちろんカイルは知っていた。
「えへへ。たのしみだね、おとうさん!」
「ああ、たのしみだな、リル」
娘の満面の笑顔が、不意にリーナと重なって、鼻の奥がつんとした。




