彼女のライバル?4
今日のアルフォンス・レザンは非番である。
いつもなら昼までベッドでごろごろし、昼食を取ったあとは町をぶらぶらしたりして過ごすのだが、その日のアルフォンスは朝からしっかり起きていた。
何故なら、親友の娘と遊びたいからである。
「リルちゃん! 今日アルお兄ちゃんお休みなんだ。お兄ちゃんも一緒に遊んでいい?」
仕事に出なければならないカイルにはもう許可をもらっている。後はリル本人と、いつも一緒に遊んでいるキティ・セインが「いいよ!」と言えば楽しい休日決定だ。
騎士団の中ではリルに好かれている方だと自負しているアルフォンスは、断られる可能性を全く考えていなかった。
現実は残酷だ。
「ごめんねアルおにいちゃん。きょうはじょしかいのひだから、おんなのこしかさんかできないの」
じょしかい。女子会?
先程到着したばかりのキティも隣で頷いている。セインはいつも通り、ご機嫌そうによちよちと歩いている。
「あ、セインはまだあかちゃんだからさんかできるんだけど、セインがおにいちゃんとあそびたいならそっちにいってもいいよ。セインどうする?」
「セ、セイン…」
リルに振られたアルフォンスは、一人が寂しいばかりにすがるような視線をセインに送るが。
「ぶぅー!」
「セインはキティといっしょがいいのね」
「セイン、いいこにしゅるのよ」
「あうー!」
「というわけで、ごめんねアルおにいちゃん。こんどいっしょにあそぼうね」
「………うん………」
何これ心折れそう。
周りの同僚たちの、生暖かい視線が辛い。
というわけで、談話室の隅で女子会が始まった。
未練がましいアルフォンスは、同じ談話室内のソファに座ってじっとりとその様子を見学している。
女子会の参加者はリル・キティ・セイン(特別枠)・メアリと、そして一週間前にここに来たばかりのセーラだ。
肩で切り揃えたまっすぐの黒髪に、湖の浅いところのような水色の瞳のセーラは、まだ十六歳とは思えないほど落ち着いている。
可愛らしい外見に意識している団員も多いが、如何せん何を考えているか分からないので近寄り難いというのが共通認識である。
彼女が女子会で何を話すのか、大いに気になるところではある。
同じことを考えたのか、談話室では他の団員たちもちらちらと女子会の様子を気にしている。
「キティはね、きらきらのおうじしゃまとけっこんすゆの!」
「すてき! キティのすきなえほんにでてくるおうじさまね!」
「ああ、あの呪いにかけられたお姫様を助ける王子さまの話かい?」
「有名な絵本ですね。女の子の憧れです」
「だー!」
「リルはねー、ほんとうはおとうさんとけっこんしたいの!」
「おやおや」
「なるほど」
「しゅてき!」
「でもね、おとうさんにはもうおかあさんがいるから、リルはおとうさんみたいにかっこいいきしさまとけっこんするの!」
「そうかい。ここなら選び放題じゃないかリル」
「確かに公務員で安定していますし、平民でも爵位を得る可能性がある職業ですから、良いかと思います」
「きししゃまはわるものをやっちゅけるのよ! かっこいい!」
「うーう!」
アルフォンスを含めた談話室内の騎士達が満更でもなさそうなどや顔を浮かべている。騎士への評価が高くて嬉しさを隠しきれない。
そしてリルちゃんは騎士と結婚するらしいが、カイルは相当反対すると思う。というか騎士だろうが王族だろうがとりあえず反対する。絶対だ。
「メアリおばちゃんは?」
「おばちゃんはもう結婚してるからねえ。無口だけどいい男なんだよこれが」
「「きゃー! いいなぁ!」」
メアリの旦那はフリーの庭師だ。その道では有名らしく、数々の貴族屋敷を掛け持ちしているらしい。
団員たちも会ったことは数えるほどしかないのだが、ものすごい強面らしい。
そして、両頬を小さな手で押さえ、顔を赤らめているリルとキティがめちゃめちゃ可愛い。
だがセーラの表情は全く変わらない。この子がときめく事はあるのだろうか。
「セーラおねえちゃんは? カレシいるの?」
「いませんよ」
数人の騎士が小さくガッツポーズをした。
「じゃあじゃあ、どんなひととけっこんしたい?」
「そうですねえ。絶対に外せないのは筋肉です」
「きんにく?」
「ええ。実用的な筋肉が理想です。体を美しく見せるためだけの筋肉は認めません」
えっこの子真顔で何言ってるの子ども相手に?
全員がそう思った。
「へえ、筋肉ねえ。ちょっとわかるよ。自己管理が出来るかどうかっての体型に表れるしね」
「おとうさんもきんにくすごいよ! おなかがすっごくかたいの!」
「キティのパパはあんまりかたくにゃいの」
「キティのパパは文官だからねぇ」
「第三騎士団の皆さんは、実に良い筋肉をお持ちですね。上腕から前腕にかけて、力を入れたときの筋が非常にときめきます」
「じょうわんとぜんわんってどこ?」
「この辺だよ」
「リルふわふわー!」
「キティもー!」
「あー!」
「セインさんもふわふわのぷよぷよですね。子どもはそれで良いのですよ。大変可愛らしいです」
「セーラ、あんた結構いい趣味してるじゃないか」
「痛み入ります」
何だこの女子会。
あまり若い男に聞かせてはいけない内容のような気がするが、同じ部屋に騎士達がいることを分かった上で自分の性癖を暴露するセーラ、どうなってるんだ。
盛り上がっているが、セーラはやはり無表情だ。どうなってるんだ。
「筋肉か…。俺でもワンチャンあるかも…」
「僕、頑張ってみようかな…」
だが彼女の性癖に希望を見出だした騎士もいるようだ。
まあ、それでいいなら各々頑張ればいいと思うが。
「ちなみにセーラ、この寮で一番好きな筋肉は誰だい?」
「団長ですね。ダントツです。最っっっ高です」
若手騎士たちの希望は、あっという間に打ち砕かれた。
だって団長、もはや熊じゃん。
その頃、ルード伯爵邸では。
「もう一週間も経つのに、何の報告もありませんわ! どうなってますのー!」
「どうどう、落ち着けペネロペ! 急いては事を仕損じると言うではないか!」
ルード伯爵が汗をかきつつ頑張っていた。
まさか3話に渡ってセーラの筋肉談義になるとは…笑
タイトルのライバル、影が薄くてすみません…
作者は細マッチョが好きです。




