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彼女のライバル?3


「セーラおねえちゃん、おはよ!」

「おはようございます、リルさん」


 メアリとユージーンと一緒に朝食の準備をしているところに、可愛らしい声で挨拶をされた。

 父親に抱き上げられてカウンターにぴょこんと顔を出したのは、五歳の女の子。

 わがままペネロペお嬢様が、目の敵にしているらしいリルという少女だ。

 そして、リルを抱き上げている父親が、お嬢様の意中の相手であるカイル・アズーロ。

 なるほど、爽やかかつ精悍な印象で、若い娘がころっと行ってしまってもおかしくはない。

 だがしかし。


「リル、ちゃんとご挨拶できて偉いなー」

「えへへー」


 お嬢様曰く、どこの馬の骨とも知らぬ娘を無理矢理引き取らされたということだったが、完全にお嬢様の思い込みだろう、これ。

 まず、髪色と髪質が全く同じだ。

 顔立ちも似ている。

 そして何より、無理矢理引き取る云々という話が馬鹿らしくなるくらい、カイルはリルを溺愛している。

 お嬢様、付け入る隙なんか一切ないなこれ。


 この寮に来て早々に見切りをつけ、セーラは伯爵家からの依頼は一切忘れ、一ヶ月間たっぷりと筋肉を堪能しようと決意した。



「あ、オムレツだ! リルこれだいすき!」

「卵ばっかり食べないで、ほら野菜も食べな。あーん」

「あーん! んん、おいひい!」

「お、今日も仲がいいなーお前ら」


 ほのぼのした父娘の会話に参入した低音ボイスに、セーラは厨房からぐりんっと振り返る。すごい勢いなのに無表情なので、隣にいたユージーンが若干引いたような表情をしている。

 低音ボイスの正体は、第三騎士団団長のバーナード・グリズリーだった。食堂の入口に頭をぶつけそうな位の大きな体躯に、それはそれは素晴らしい筋肉を纏った御仁だ。

 バーナードが視界に入ると、セーラはついつい熱視線を送ってしまう。

 だって筋肉が素晴らしいのだ。


「おはようセーラ。俺にも朝メシ頼めるか」

「おはようございます。すぐにお出しします」


 着崩した制服から覗く胸筋がとんでもない。こんな近くで拝めるとは、この職場は本当にどうなっているのか。

 セーラは理性を総動員して何とか目の前の筋肉から目を逸らすと、てきぱきとバーナードの朝食をワンプレートに収めて行く。

 バーナードのプレートはいつも大盛りだ。メアリから教わってから、セーラも大盛りを心掛けている。

 プレートとコーヒーをトレーに乗せて差し出すと、バーナードは笑顔で受け取る。

 トレーを持つ腕の逞しさと言ったら、けしからんレベルである。


「ありがとな。ここには慣れたか?」

「はい、おかげさまで」

「そりゃ良かった。困ったことがあったら言えよ? 俺でもメアリさんでもいいからさ」

「ありがとうございます」


 笑顔のバーナードに、相変わらずの無表情で淡々と応えるセーラ。だがその視線は、バーナードの顔ではなく首から鎖骨辺りを彷徨っていた。首にも筋肉がついて、太くて素晴らしい。

 ああ、本当に転職を考えよう。




 カイルとリルの二人の向かいに座ったバーナードは、小さくため息をついた。

 眉間にはわずかに皺が寄っている。


「どうかしましたか、団長」

「いや…。どうもセーラといつも目が合わないんだよな。何か嫌われてんのかな」

「そんな風には見えませんが…。あまり感情を出さない子ですし、割と皆そうじゃないですか?」

「そうか?」


 セーラの筋肉鑑賞は、意外なところで団長の気を引いていた。




メインの親子の影が薄くてすみません( ;´・ω・`)


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