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彼女のともだち4


 お昼寝のあとは、騎士団寮裏にある庭で土遊びを始めた。

 以前、団員が子どもたちにと買ってきた子ども用のバケツとシャベルを持ち、きゃっきゃっと笑い声を上げている。

 すっかり目が覚めたセインは姉たちの横でチョウチョを追いかけている。既に何度か転んでいるが、泣かずに立ち上がり、歩き続ける。以外と逞しい。


「はいだーりん! きょうはごちしょうよ!」

「わー! おいしそうだね、まいはにー!」


 お昼寝を挟んだ夫婦は、どうやら仲直りをしたらしい。安心した。


「あーん! どう?」

「もぐもぐ、とってもおいしいよ、まいはにー! あいしてるよ」


 葉っぱに盛り付けられた泥団子を美味しそうに頬張るふりをした夫役は、妻に熱烈に愛を囁く。


「まあ、はじゅかちいわ、だーりん!」


 妻役はまんざらでもなさそうだ。

 …一体何を見せられているのだろうか。


「うわー、ラブラブじゃん」

「むなしくなってきた…。彼女ほしい…」

「あれ、目が霞む。涙かな…?」


 子どもの、それも女の子同士のおままごとにも関わらず、その迫真の演技に、感受性の強い団員数人がリタイアした。

 とぼとぼと談話室に戻っていく寂しげな背中が切ない。

 まあ、彼女がいるならそもそも休日に寮で子どものままごとなど見ることもなかったろう。

 何かすまん、とカイルは心で詫びた。




 楽しい時はあっという間に過ぎる。

 夕方になって迎えに来た両親に、キティは「まだあそぶ!」と泣き出した。地団駄を踏むその様子に周囲の団員だけでなく、フィリップたちも驚いている。

 家ではともかく、どうやらこういう場でぐずることは大変珍しいらしい。ちなみに、セインは再び眠っている。よく寝る子だ。

 リルはキティに手をぎゅっと握られ、もう片方の手でキティの頭をよしよしと撫でている。うん、かわいい。


「キティ、またあしたいっしょにあそぼうね! そうだ、あしたはおえかきしましょ!」

「うう、ぐすっ、おえかき?」

「うん!」


 カテリーナがリルの提案にすぐさま乗っかる。


「いいじゃない。キティ、おうちにあるスケッチブックとクレヨン、明日持ってきましょうよ。リルお姉ちゃんとたくさんお絵描きできるよ」

「うっ、うん、ぐじゅ、おえかき、すゆ」


 顔から出るもの全部出しているキティの顔を、カテリーナはハンカチで拭いてやり、ようやく落ち着き始めたところで抱き上げた。


「リルちゃん、カイル君、今日はありがとうね。明日はカイル君も仕事なんだっけ」

「ええ。この調子なら平気そうですね」

「うーん、そうだといいねー。じゃ、また明日!」

「え、あ、はい、また明日」

「ばいばーい!」


 ごきげんに手を振るリルの姿を見ながら、カイルはちょっと不安になる。

 ……明日、大丈夫だよな?



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