決死の告白
放課後、俺はドキドキしながら屋上へ向かった。
階段を上ったその先に、屋上に続く扉があった。
ここを開ければ……。
ドアノブを回した。そして押す。
開かない。俺の学校は、先生の許可がなければ、屋上に出られないらしい。あー、不運だ。
柳原には屋上に来てって言っちゃったしな。まだ柳原は来てないみたいだし、貼り紙をしておこう。
『柳原へ
屋上は開いていなかったので、
体育館裏に来てください。
山田より』
っと。これでよし!
俺は貼り紙を残して体育館裏に行った。
そして、柳原を待った。
足音がする…来たか?
「おーい山田、こんなとこで何してんだ?」
げっ、クラスのヤンキーの佐藤だ。
「ち、ちょっと人を待ってるんだよ…」
苦笑いで答える。
「ふーん、まあいいが、ここは俺の領地なんでな」
領地とか頭可笑しいんじゃねーの?こいつ。口に出すことは絶対にないが。こんなことを言ったら何をされるか分からん。
先日、こいつに喧嘩を売って殴られた件を聞いた。実質事件モノだが、何故か警察は呼ばれなかった。被害者が怖がって、先生に泣き落としで頼んだらしい。良かったのかなー、そんなことして。まあ俺には関係ないがな。
しかし、俺の目の前にいるのはそのヤンキーだ。あー、不運だ。
「あ、そうなのか。わりーな」
俺はこれでことを終えた。見逃してくれたのは良かった。
「柳原、来なかったなー。せっかく昨日も夜遅くまで練習したのに。てことは、あの張り紙はずっとあそこに!?」
誰かに見られたらどうする!?大変だ、今すぐ回収しに行きたいが、もう夜だ。学校は開いていない。あー、不運だ。
そんなことを考えていると、柳原から連絡が来た。
『光鶴くん、ごめんねー!どうしても帰らなきゃいけない用事があって、行けなかったよー。本当にごめん!でも、明日はちゃんと行くからね!』
メッセージでは普通の言葉だ。いつものは癖なのか?まあいいが。あ、屋上が開いてないこと、言っとかなきゃな。
『そうか。用事があったのか。ならしょうがないな。集合は屋上って話だったんだけど、開いてなかったんだ。だから……』
ここから、文字を打つ手が止まった。
体育館裏は、あのヤンキーの領地らしい。また行ったら、見過ごされないだろう。どうしようか。ほかの場所は人目につく。
「どうしたものか……あ」
そうだ。学校内で待ち合わせる必要なんてなかったんだ。全く俺は頭が硬いな。
うーん…思い切って、駅前とかにしてみようかな。
『…だから、駅前で待ち合わせないか?』
送信ボタンを押す。
ふぅ……俺はドキドキしながら返信を待った。
ピロンッ!スマホが鳴った。どうだ、どうだ?
『りょうかーい!あ、でも早めに済ませてね?明日も用事があるから』
また用事か。多いなー、用事。
『了解した』
俺は返信をして、スマホを切った。
その夜は、告白の練習をして寝た。「成功しますように」と祈って寝た。
次の日の放課後、俺は制服姿で駅前にいた。
柳原を待つ。と、あ、来たな。
「おーい!光鶴くーん!」
柳原はそう大声を出し、手を振って、こちらへ向かってくる。
「待たせたに、ごめんね?」
「全然大丈夫だ。それより、今日は伝えたいことがあって…」
「知ってるにー、伝えたいこととは?また不運だったに?」
「いや、そうじゃないんだ。お、俺は…俺は……!」
俺は顔を真っ赤にしていた。
「俺は…?」
俺の緊張ぶりに、柳原は少し困惑している。
「俺は……ふぅ、。柳原、俺は前から、お前のことがすk……」
ーーウーーーーーーン!ウーーーーーーン!
謎のサイレンが鳴り響く。くそっ!あんなに勇気を出したのに、こんな時でも邪魔されんのか!あー、不運だ。というか、これは何のサイレンなんだ?
「ね、ねぇ光鶴くん?このサイレンなんだに?」
柳原は怖がっているようだ。無理はない。聞いたことがないサイレンだ。
「分からない。とりあえず、何か分かるまで一緒にいよう。下手に家に帰るのは、かえって危険だ。」
俺は冷静を装ったが、実はすごくびびっている。
「そ、そうだね。ありがとう光鶴くん。」
柳原の頬が少し赤くなっていた。
「可愛い。」俺はさらに惚れた。