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プロローグ






じゃらり、じゃらりと足枷についた鎖を引き摺りながら少女は歩く。


「汚らしい混血め!」


「災厄を撒き散らす魔女に死を!我らが皇国に栄光を!!」


怒号が響き、人々が群がり作る終わりへの道を。


……虚ろな、けれど、静かに燃ゆる憎しみの炎を宿した瞳で、ただただじっと一点を見つめながら。


少女へむけて投げ付けられる石が額にあたり、血が流れ、その視界を赤に染めてもその蒼珠の瞳は揺らがない。





(私は、)





(いったい、どこで間違えてしまったのでしょう。)





ざんばらに切られてしまったあわやかな金の髪は薄汚れ、かつての蜂蜜のような艶やかさはなく、その華奢な身体には痛々しい痣や傷が滲む。


ゆっくりと斬首台へと上がり、皇国兵に乱暴に肩を捕まれ、膝をつかされる。


首を木板で固定され、終わりを目の前につきつけられても少女の瞳は一点を見つめ続けていた。


…少女へ、ゴミを見るような蔑みの視線を送り返してくる、この皇国の皇太子とその婚約者を。




(…どうして……?)





(どうしてなの。)






(…異なる種族が、愛を育むことは罪なのですか?)





(……その愛の証である私は、この世界に存在することすら許されないのですか?)






(この命は、罪なのですか?)






もう枯れてしまったはずの涙を一粒溢し、少女が頭を垂れたのを見て皇太子は高らかに叫んだ。



「今ここに!!ブアルク皇国、皇太子であるこのアルノード・ダム=ブアルクの名において命ずる!!我が皇国にもたらされた数々の厄災の責は全てその者にある!!失われた数多の尊き命への償い、その汚らわしい血を以て行え!!」





「ちが、う、わた、しは、なにもっ、していませんっ…」





潰れ、掠れきった少女の言葉は誰にも届くことはなく。


ズシャンッという鈍い音が響いたと同時に。




……人とエルフの間に産まれ、忌み子と疎まれ続けたフロウリ=マーヤックの一生は18歳という短さで幕を閉じた。




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