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妹よ、兄さんは今、乙女ゲーの悪役令嬢をしているよ  作者: 緋夏綟
第1章 プロローグ
1/3

妹よ、兄さんは今、乙女ゲーの悪役令嬢をしているよ

歳は20、両親と妹が一人いる。

そこそこの大学に入り、やりたい事もなし、大学院に行くつもりだ。

刺激が欲しいと思った頃もあった、若気の至りか?

まぁ、心残りと言えば…


「真剣にゲームしてりゃあなぁ…」


ポツリと誰にも聞こえない声で呟く


白い円卓の周りに中世の型落ちドレスが花を咲かせる。

菓子の甘ったるい匂いが、

部屋の大量の花の独特な香りが、

自己主張の激しい香水と混ざり合い

換気していないストーブのついた教室を思わせる。

周りの女達は甲高い声で話し合っている。


(よくこんな部屋で息が吸えるものだ…)


できるだけ浅く呼吸をして、その場を凌ぐ

それが顔を顰めているように見えたのか、1人の令嬢が声をかける


「ドヴォルディー様、如何なさいました?」


1人が心配そうに声をかけると、それに群がるように声が続く


「確かに今日は元気が無いようにかんじますわ」

「何かございましたら私、力になりましてよ」

「あら、私だって!」


心配する声は次第にまた元の声色に戻る


「えぇ、そうね、今日は先に退出するわ」


取り巻き女達に軽く会釈して早々に部屋を出る。


澄んだ空気が喉を通り、変に纏った匂いを拭っていく。

窓からは優しい光が差し込み、春の陽気さを感じるが花のつぼみはまだ固く、冬の跡を感じさせる。


「…セレナード様、」

自分の従者が上着を肩にかけるのを待ってから廊下を進んだ。

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