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プロローグとともに人物を紹介します

日本のどこかにある町のお話しです。

 学校の子ども達が夏休みに入ったある日のことです。

木内さんの奥さんは、朝から奇妙なものを見てしまいました。はす向かいの家の片山さんちのフミちゃんが、自宅で飼っているペットのカメを散歩させているのです。甲羅にぐるりと紐を巻かれたカメさんは、ゆっくりゆっくり歩いています。その後を飼い主のフミちゃんがゆっくりゆっくり歩いて行ったのでした。

「どっちが散歩をさせられているのかわからないわね。」

木内さんの奥さんは頭を横に振った後で、洗濯物を干しに行きました。


奥さんが朝のお茶を飲んで、涼しいうちに庭の草取りをしようと思って外に出た時のことです。

フミちゃんが自分の家の玄関の前で、カメにラジオ体操をさせているのが見えました。ご丁寧に携帯で音楽もかけています。カメは・・・戸惑っているようでした。なぜ自分がこんなことをしているのかわからないと口をむっと結んでいます。

奥さんはこれには可笑しくなって笑ってしまいました。

「ククッ、これは片山さんの奥さんに、ご注進しなきゃいけないわね。片山家の人たちは変わってるけど、フミちゃんもご両親の血筋を引いてしまったのね・・。」 


片山さんの奥さんは、木内さんの話を目をキラキラさせて聞いています。これでまた一つネタ話が出来たと喜んでいるようです。片山敏美さんは家族や知り合いの面白いネタを集めて皆に話をするのが大好きな人なのです。下手な漫才師より面白いと、仲間内では評判なのでした。




**********




 ぽうさん横丁の入り口には小さな公園がありました。その公園には四季折々に美しい姿を見せてくれる木々や草花が植えてあるのです。夏休みの今は背の高いひまわりの黄色い花と赤や青のサルビアが、賑やかに遊ぶ子ども達を見守っています。


公園のすぐ側には星の子教室という学習塾がありました。二十七歳になる日村悦子(ひむらえつこ)さんが経営しています。ここはそろばん教室と基礎学習教室を併設した塾なのです。

「まあまあ、今日はお天気がいいから子ども達の声が響き渡っているわね。」

のんびり屋の悦子さんはそう言って、ノートの準備に取り掛かりました。ここの学習塾は変わっているのです。コピーしたプリントではなく、悦子さんの手作りノートが教材なのでした。例えば、算数と国語を習いたい人は、自分でノートを二冊用意してここの教室に置いておくのです。すると悦子さんがその子に必要な問題を書いて、長テーブルの所定の位置に置いておくのでした。子ども達は公園で遊び疲れると星の子教室にやって来て、ノートを埋めると悦子さんの机に置いておきます。悦子さんが丸つけをして返すと、子ども達はお直しをしてまた悦子さんの机へ持って行きます。そこで初めて、問題の解き方や間違えた問題の対処方法を教わるのでした。悦子さんは、まず最初に良い所を褒めます。そうして子ども達に自信をつけて少し上のハードルに挑戦させるのです。なのでここの教室の中では子ども達のやる気の笑顔と、静かに集中する姿が見られるのでした。


火曜日と金曜日には星の子教室が、日村珠算塾に変わるのです。その日にはのんびり屋の悦子さんの声も少し早くなるのです。「用意、はじめっ。」という掛け声とともに、一斉にそろばんを弾く音が聞こえてきます。その日には公園で遊ぶ子もいなくなるのでした。どうしてかというと、この辺りの子ども達はみんな両方の塾に籍を置いている子がほとんどだったからです。




**********




 そんなぽうさん横丁にあるアパートの一室に、一人の男の人が引っ越してきました。難波康介(なんばこうすけ)さんという市役所に勤める二十六歳の男の人です。

康介さんは長年暮した実家を出て独り暮らしをすることにしたのでした。


アパートの管理人をしている木内さんは、難波さんの引っ越しが済んだ頃にやって来て、ゴミ当番表や町内会の回覧板を渡します。

「この回覧板にも書いてあるけど、夏の盆踊りがあそこの公園でありますからね。ぜひ参加して頂戴。男手はいくらあってもいいですから、土曜日の朝の準備人員のところに名前を書いてくださると嬉しいわ。」

木内さんの押しはなかなか強いようです。引っ越しの疲れを引きずったまま、康介さんは示された所定の位置に名前を書いてしまいました。

「何時に公園に行けばいいんですか?」

「十時に集合なんです。来てくださったら町内の皆さんに私が紹介しますからね。」

木内さんは言いたいことを言うと、さっさと帰って行きました。


康介さんは荷物の間に寝転んで、独り立ちした感慨にふけります。

「独りで暮らすということは、町内付合いも自分がしなきゃいけないってことなんだな。」

今まで親に甘えて何もしてこなかった康介さんでしたが、そこは市役所の職員です。自分の義務と責任はよくわかっているようでした。



ここぽうさん横丁の変わり者の住民たちとの不可思議な生活が、この康介さんを巻き込んで始まるようです。皆さんも一緒にこれからこの町に住んでみませんか?


町内の盆踊り・・どんな人たちが来るんでしょう。

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