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9/10

発病

一日に2話投稿してみました!感想、ブクマお待ちしています!!!感想くれたらもう犬になりますよ。誤字脱字や指摘もお待ちしています!

その悲報は突然飛び込んできた。


「首相が死んだらしいぞ兄ちゃん」

「そうですか・・・これからどうなるんでしょう、日本は」


日本のトップが噛まれたってだけで精神的ショックも大きい。軍隊などに守られているはずの人が噛まれるのは本当はありえないことだ。今、日本が全体的にどうなっているか理解できない状況でこのニュースは大きかった。


「おにーちゃん?大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。心配しないでくれ」


まあいい、日本がどうなろうと妹を守るのは俺しかいない。あ、あと一応服部さんも。それに俺は約束したんだ、結衣とあの家でまた暮らすって。


-------


「しゅ、俊一をみかけませんでしたか!?」


昼過ぎ、この前の家族が家に訪ねてきた。どうやら朝早く家を飛び出してから見つからないらしい。


「見かけていませんが・・・結衣、何か知ってるか?」

「うーん、見てないなあ」

「そうですか・・・、猟友会の方々にも聞いてみます」


なんだか嫌な予感がする、もし村の外に出てたら危険だ。普通の迷子だったらいいが、危険だな。


「俺たちも探しますよ、みんなで探したほうがいいでしょう」

「ありがとうございます!お願いします!」


俺達三人は俊一君を探すことになった。っといっても村の土地勘などないので猟友会の人に地図を貰った。


「おにーちゃん、どこから探そうか?」

「小さい子が行きそうなところか、こことか?」

「いいね!」


俺が指差したのは小さな遊具のある空地だ。この村にはここぐらいしか子供が遊ぶところはない。だが、行ってみるとそこにいたのは俊一くんではなく、村の子供たちだった。


「ごめんね、君たち知らない小さな子見かけなかった?」

「みてないよー!」


子供たちは顔を見合わせて、知らないようだった。うーん、こうなれば村の中を手分けして探すしかないのか?あんな小さな子がもう遠くに行っているとは考えにくいし。村の中を観光ついでに回るとするか。


「ここからは二手に分かれて探しましょう。俺と結衣は右回り、服部さんは左回りに村を回ります」

「兄ちゃんと結衣ちゃんは離れられないもんな!わかったで!」


この編成に悪意はなかったんだけど・・・まあいいか。


数十分、探しながら結衣と話していると、だんだん昔話になってきた。


「おにーちゃん、昔、私が川に溺れたこと覚えてる?」

「懐かしいな」


たしか、家族でキャンプに来て遊んでいるとき、川で遊んでいた結衣が魚を追いかけて深いところまでいって溺れたはずだ。


「あの時、お兄ちゃん川に飛び込んで助けてくれようとしたんだよ!自分も泳げないくせに・・・くふふ」


そうだった、あのままミイラ取りがミイラになって父さんに助けてもらったんだっけ。


「でも、嬉しかった。私のために一生懸命になってくれて」

「恥ずかしいな!忘れてくれ」


結衣に言われるまで忘れていた過去の記憶を鮮明に思い出した。思い出すとめっちゃ恥ずかしいなこれ。


「おーーーーーーーい!!」


結衣と話してると前方に服部さんが見えた。どうやら回り終わったらしい。


「俊一君がみつかったらしいやで」

「本当ですか!?」


どうやらここに来る途中石沢さんに会って教えてくれたらしい。しかし、服部さんは暗い表情のままだ。


「なにかあったんですか?」

「――-噛まれたらしい」


------


「俊一!!!なんで!なんでなの!!」


俊一君のいる村の診療所にいくと母親が息の荒い俊一君に向かって泣きわめいていた。父親は黙って下を向いたままだ。


「何でこんなことに・・・?」

「どうやら、少し前に手を少し噛まれていたらしい。俊一君は他の人に噛まれたらどうなるかを聞いて怖くなって隠れていたらしいんや。そのまま・・・」


服部さんが悲しそうに答える。


「お母さんは噛まれたこと知ってたんですか?」

「ここの村に逃げて来る途中にできた傷だと思ったらしい。俊一君も怖くて相談できなかったんやろ」


―――噛まれた人が辿る運命は、残酷だ。


「俊一が俊一でなくなったとき、楽にしてあげてくれませんか」


俯いていた父親がそう言った。


「まって!!俊一にそんなことしないで!!あなた!!何言ってるの!」

「俊一は、噛まれた後どうなるかを知って隠れたんだぞ?きっと、ゾンビになったままでいるのは嫌だと思う、お前も母親なら俊一のことを考えろ!」


母親は少し黙ったあと、涙をこぼしながら頷いた。


「分かりました、お母さんたちは俊一君を看取ってあげて下さい。そこからは猟友会でやらせていただきます」


―――――その日、夜遅く銃声が鳴り響いた。


次の日、俊一君の簡単な葬儀がとりおこなわれた。俊一君の死はこのパンデミックの脅威を俺たちに思い知らせるには十分だった。

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