明日の仕事はどこかしら
ひさしぶりに会社紹介を続けよう。
我が社というか悪魔業界での実務はほぼ下界、人間界への派遣であると言ってもいい。
神業界でもそれは似たようなもので、やつらは教会みたいな出張所まで用意している。こちらは直行直帰が当たり前なのに。
まあそれはおいといて「直行」これが問題である。
基本は人間が「来てください」と召喚してくるのだが、ここのシステムがまず勘違いされている。
悪魔を呼ぼうとする人間は真面目な顔して「○○様来てくださいませ、我が身をささげます」とかいってたりするが、それは悪魔にはこう聞こえる。
「派遣要請○○様、報酬は依頼者の命」
悪魔には、と言ったが実際には会社のコールセンターである。業務課お客様受付センターである。
ちなみに苦情受付部門は無い。
そして実働部隊へ回され、条件の合う悪魔が派遣されるのだ。ではちょっとセンターを見てみましょうか。
・見込み案件、対象悪魔不問、条件委細相談
よくあるのがこんな感じで漠然とした案件。このような時は営業担当(口がうまいだけの下級悪魔)が、まず依頼者と打ち合わせをしてくる。
・派遣要請、対象:上級悪魔に限る、内容:殺人、報酬:依頼者の命、ただし回収は20年後
そしてほとんどがこうなる。ちなみに回収では死神さん達が活躍されています。
まずは営業部売り上げトップ社員のアマノさんについていきましょう。
彼は言うまでも泣く天邪鬼です。いきなり依頼者を怒らせています。怒りのエネルギーを獲得しています。悪魔の営業ならではですね。
どうやらまとまったようです。詳しく聞いてみましょう。
・依頼者は16歳女性、貴族
・内容は王子様との恋敵を蹴落とすこと
・報酬は恋敵から好きなだけ搾り取ればいいとのことだったが、将来生まれるであろう自分の娘達の命へと変更
なかなかの悪徳依頼者ですがアマノさんの契約はその上を行きます。
娘達の命について世代は問わない、虫眼鏡でも読めない小さな特記事項のなかにそれがあります。
生まれてもすぐに殺さず適度に間引いていくのでしょう。
あれ?もし依頼者がすぐに死んだりしたらどうするのでしょう?丸損では?
「ああ、天使のツテがあるからだいじょーぶだよ。サポートしてくれる」
営業職のコネってやつですか、もしそれでもダメだった場合はどうなるんでしょう?
「なに言ってんだ、依頼者本人がすぐ死んだら負のエネルギーは極上だろう」
あぁ悪魔だな、次にいきましょう!
「俺の仕事はこれで終わりだよ。あとは業務課で担当者を決めて引き継ぎ、今回のは天使との連携も必要だけどな」
意外としっかりやっているようです。
ついでながら、天使さんにも来ていただきました。なぜかサングラスをかけていますが……
「あんたたちのところはいいよ。うちはどこも人手不足でさぁ、わかるゥ?」
いきなりのネガティブ発言です。
「なんたって転生者ばっかりなんでね。天使のなり手がいないのナ」
下界の人間はこの世界の住人ですが天界の神々、悪魔は転生者です。素養がないとなれません。
「お前らの上司にもさぁ、元は神や天使だったのいるじゃん。おれも堕天しよっかな~なんてナ」
あぁ、堕天使ってこうやってなるんでしょうか。
「協会辺りでテキトーにやってるのもいいかな、っておもうわけヨ」
何も言えません。
そこに突然大きな手があらわれ天使をつかんでこう言いました。
「帰るぞ!お前には六畳一間の天国があるだろ」
こめかみに青筋を立てて引きつった笑顔の神がいました。
元堕天使の漆原さんでした。