そうだ!協会へ行こう!
いつものように協会に行く。
黒瓜さんに仕事を手伝ってもらうためだ。
あの人……そう、黒瓜さんはここらじゃ珍しい人間です!
創造主の気まぐれで連れてこられた人間です!
下界では大魔術師として名を馳せた黒瓜さん。実は天才詐欺師という面も持ち合わせている。
この間の騒動で彼に借りを作ったわけだが、みんなに気をつけるよう注意された。
「下手な契約を結ぶと足元すくわれるよ」と。
「都合のいいことにあっちは人間、こっちは悪魔。うまくやりなよ」とも。
あの時は体を治してもらった代償に、「我が社の仕事を手伝わせてやる」と言ったんだがまずかったかな?
あの人がうちの社長を気に入ってるのは本人の口から聞いてたので間違いない。
だから近づくチャンスを与えて貸し借りチャラに出来ると思ったけど、う~ん?
「にいさん、おはよう」
黒瓜さんだ、むこうから声をかけてきたが……
臭い!むちゃくちゃ酒臭い!それ以上になにか腐ったような匂いが。よく見れば足元がどろどろだ。ドブにでもはまったか?
とりあえず一歩下がる。
「おいおい、逃げんとってや。ワシとにいさんの仲やん」
誰がにいさんじゃボケ、と心の中でつぶやくが……
「お?ツッコミ上手なったな」
聞こえている?いやそんなはずはない、俺の口は今もしっかり閉じている。
「大魔術師やで?まだまだヒヨッコ悪魔の心ぐらい読めてあたりまえやねんで」
な、な、な…なんだと…本当か?そんなのありかよ。
「にいさんよりもいろんなことできるで、教えたろか?」
そういや俺は悪魔らしい力なんて何も持ってないんだよな。どうしたらいいんだろう。
「汝の欲する所を為せ!」
――しばしの沈黙が流れた―-
「だから、やりたいことやれ!言うてんねん」
え?それだけ?
「せやで。ほかの悪魔ら、みんな何も考えんとできるようになった、って聞いとる」
ほかの悪魔みんな?みんなって転生者だよな…もしかして…チート?でも社長はチートなんかないって…
「じゃあ、社長に聞いてみようや、な?考えてもしゃあない、行こか」
[あら、いらっしゃい]
社長は俺と黒瓜さんをすんなりと部屋へ通してくれた。
[で、聞きたいこと、ってチートのことでいいのよね?]
社長はなぜか目をあわさない。
[いつかほんとうのことを教えなきゃいけない、ってわかってたけど…今まで忘れてたわ♪]
てへぺろじゃねーよ!ぶん殴るぞてめぇ!
[殴ってくれるの?そっちもイケるクチよ♪スパンキン、スパンキン、スパンキーング♪]
落ち着け俺、落ち着こう
[ほんとのこと教えちゃうわ、まず私の大好物は童貞、おぼえてるわよね。初めて出会ったあの日のことだもん]
はい、魔法使いの道はほぼ確定でしたよ。だからあのときのことは忘れられませんよ。
[でね、毎晩あなたのこと食べちゃってるでしょ。なぜだと思う?]
食われた後、死んでるんだよな…そして復活再生。もしや、あんたなんてことしてくれたんだ!
[察したみたいね。そう、あなたは生きてる限り童貞。復活すれば童貞なのよ。私だけのためのチートよ!]
誰得だよ!ってまさしくwin-winじゃねえか。ありがとうございます!
[てなわけで黒瓜さん。あなたみたいな人と致すことはありません、ごめんなさいね♪]
この晩、俺と社長のまぐわいは今までの記録を塗り替えた。
そして黒瓜さんは横でずっと見ていたらしい。