創造主の手のひらの上で
えーとみなさんこんにちは。
この前はどこまで話したでしょうか?社長に色々されて前後の記憶がありません。
笑顔の社長に記憶を消されたことしか覚えていません。
気がついたら下半身が無かったんですが、たまたま歩いてきた協会の黒瓜さんに治してもらいました。
[逃げたよね?一緒に居たいって言ってたくせに!]
どうやら社長はまだ怒っているみたいだった。
機嫌をなおしてもらおうと、精気を捧げたのにまだ収まってないみたいだ。カラッカラになるまで頑張ったのに。
下界は今や阿鼻叫喚の地獄絵図。それどころか同業の悪魔や神々も区別なく、残虐非道の限りを尽くす様はまさに大魔王と呼ぶにふさわしい。
今まで社長のことを軽くみていた自分が怖い。
ちょっとばかり他より力のあるサキュバス。性欲さえ満たせば大人しくなる。
そんなもんじゃなかった、何にも見えてなかったんだな。
今までよく消されずにやってこれたもんだ。
あぁ、こんなこといってる場合じゃ……
あれ?なんか雰囲気が妙だな、我が社は落ち着きすぎじゃないか?
見渡してみると……
秘書の皆さんが笑顔だ。
それもとびきりの笑顔だ!
歓喜に溢れる表情とはまさにこのことだろう。
「こんな時の社長は放っておいていい。昔も同じことがあった。なにも考えなくていい。とにかく自分の身を守ろう!ではお先」
秘書さん行ってしまった。そして我が社は、皆が社長から逃げるように長期休暇に入った。
ーとある街角で-
そんなこんなで特にやることもないので知り合いと駄弁っていた。
「あんたのとこいいよねー♪社長一人で仕事してさぁ。みんな休みで好き勝手してるんでしょ」
「そうそう。おまえのところに転職したいっての」
「うちの社長なんか何にもしねえぞ。まぁ怠惰だから当然なんだけど」
「創造主調整はいるみたいだね。出番みたいだ」
その言葉は突然やってきた神のヴィシュさんだった。
色々と話して知らされたんだがどうにもうちの会社はやばかったらしい。
「創造主のリセットが起こったらすべてが終わる。その際になにが起こるかわからない」
ヴィシュさんは創造主が以前に手がけていた世界からの引き抜きといわれている。
もしかしたらそのリセットというものの結末を知っているのかもしれない。
しかし彼はそれについては今まで誰にも話したことが無い。
「でも今回は調整で済むんだと思うよ。芝さんがそろそろ来るっていうんで」
皆が彼の話を真剣に聞いていた。そしてその話は何日も何日も続いたのだった。
そしていつの間にかいつもの日常が戻ってきていた。
社長も通常運転に戻り
[みんなもうちょっとやすんでていいよ~♪ちょっと稼ぎ過ぎたわ♪]
悪魔の仕事は基本的に暴れればいいからこれでいいのか。責任は神がもってくれるし。
そして、後始末は芝さんの仕事。そのあとをヴィシュさんが引き継ぐ、と。
事の発端はわが社の成果減少に気づいた創造主が社長に火をつけたことらしい。
「君たちのせいでリセット、なんてしたくないんだよねぇ」
これが創造主の調整…いや~な感じじゃね?
ちなみに他社はその前の段階で指導勧告が届き頑張っているそうです。
ヴィシュさん ヒンドゥー教の神 ヴィシュヌ 維持者、守護者
芝さん 同じくヒンドゥー教の神 シヴァ 破壊と再生を司る