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ちっちゃな世界旅行

 俺だ、ダンクィだ。待ちに待っていた日がやってきたぜ! 

 今日は休みだ。え?いつも休みみたいなもんだろって?違うんだなぁこれが。何しろ今日は遊びで下界へ行くんだ。もともと俺は出かけたがり屋だぞ。目的もなくぶらぶらするタイプな。

 生前は秋葉、神田、新宿、たまーに横浜なんか行ってたけど、この世界にそんなところは無い。何しろゲームみたいな世界だ。大陸がひとつなら人種もひとつ。当然のように言葉もひとつ。広いからさすがに地域性ってやつはいろんな面である。

 さて行ってみようか? おっと、まちがってもオカルト物件巡りとか心霊スポットとかにはいかねぇよ。この世界でそんなところ行っても知り合いだらけってオチだしな。


 

ヤスにて


 ここは中堅都市のヤス。なかなか気に入ってる街だ。酒はうまいし女の子もきれいだ。

天国というわけではないが住みやすいんじゃないかと思う。

 まずはそこの店でメシでも食ってから行くか!


 店の外観は普通のチェーン店ぽいな。ふ~ん、看板にはチュウカヤって書いてあるな。日本語で。

気にしてもしょうがねえって。入ってみるか。


「ラッシェー」、「シャーセー」、「ッセー」、「ダー」


 威勢のいい店員達だ。あれか、O将か? それにしてもやけに床がネチョつくな。まずはメニューメニュー♪っと。


・ラーメン

・餃子

・チャーハン

・天津飯

・中華丼

・やきそば

・かたやきそば

・チューリップetc……


 あぁO将だ。俺が毎日のように昼飯に通ってたO将だ。なんか泣けてくるわ。ってことはセットもあるのか? 

 おぉ、満腹セット! 餃子セット! 半チャンセット! よし、ここは迷わず……


「餃子セットください!!!」


 ふぅ、食った食った。って何の話かわかんねえなこれ。

 さてと、街歩きと行きましょうかねぇ~。ごっつぉさんっと。


「ん?ちょっとお客さん?」


 なんか聞こえるけどダッシュだ!


「お代まだだよー!!!」


  走れ! 走れ! あそこの角を曲がるまでは全力だ! 

 イケル! 誰にも負けない! 今の俺なら200メートル競走世界新だ! 靴底が火花を散らすぜ! 

 よっしゃあ、ゴオォールゥゥゥゥゥ、う? 


「なにやっちゃってくれてんのさ?」


 天使がいた。サングラスをかけた変な天使だ。漆原のとこのあいつか。


「食い逃げ、ってありえねーし、しかも餃子セットだろ。ショボ過ぎ、プ」


「悪魔なんだから悪いことしますが、何か?」


「ショボいっつうの、もっとあれだよ。何皿も頼んで腹パンパンにして、もう動けません、って感じ演出しなきゃダメだって」


「いや、そんな食えねぇって。暴食の連中と一緒にされても」


「あれぐらいやってくれねーと、俺たちも張り合い無いんだからがんばってくれよ。あんたたちの悪事がしょぼいと動けねーんだよ」


「え? そんな決まりごとってあったのか?」


「たりめーだろがよ。あれぐらいじゃあ、俺が行って払うわけにもいかねえし、もうちょっと考えてくれよ」


「いや、なんかその、すまんな。期待に沿えなくて」


「次からしっかりやってくれよー、しばらく見てっから」



――――


 てなわけでここ数時間、天使が俺の頭上に浮かんでいるのだ。

 非常にやりづらい。俺の貴重なプライベートを返せといいたくなるほどに。

 そして俺はある店の前で立ち止まった。行くか、行かざるべきか。あの札の魅力はヤバイ。


 ×18最以下お断り×


 元勤務店に良く似た佇まいのそれは俺の自制心をガリガリと削る。入りたい。存分に見たい、読みたい。エロイ本が! ゲスイ本が! 

 しかし、頭上のこいつが気になってしょうがない。なにしろ後で何を言われるかたまったもんではない。俺だって世間体は気にするんだ。悪魔同士でも教えたくないことなんていくらでもあるさ。


「ママーあのおじちゃんなにやってるのー?」

「シッ、見ちゃいけません!」


つづく







 


 

 

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