マイナー邪神
また関西弁です
邪神アペプは協会所属だ。
なんというか存在感の無いというか、影が薄い、な。
あ”あ”あ”~~~~!!!
取り乱してすまん。俺は阿礼素太黒瓜だ。みんな知ってのとおり大魔術師だ。
わけあって新人悪魔ダックィの仕事に関わらせてもらっている。
今日は協会のことを中心にお話させていただこうと思う。
そもそも、漆原の野郎が
「お前は来なくていい」なんて言うもんやからのぉぉ~!ハァハァ
あのボケだけはいつかいわしたんねん!!!フンッ
あぁ、個人的なことだ、気にしないでくれ。話を元に戻そう。
まず手っ取り早いところから紹介をはじめようと思ったんだ。
で、目に付いたのがアペプだったというわけだ。
アペプはエジプト神話の悪の代表とでも言うかな、太陽神ラーに対するものだ。知らんか?知らんわな。
アポフィスとも呼ばれている闇と混沌の象徴。ラー以前の太陽神でもあり、太陽神の座をラーに奪われてから悪に走ったとされる。
簡単に言えばエリートコースを踏み外した奴ってこっちゃ。
見た目は大蛇。読者の皆さんにはヤマタノオロチさんのほうが馴染みがあるか?
ここまでは設定な? 設定やで! 大事なのはここから!!
転移前の人生がここでの役割に影響するんで、ちょうどいいのがアペプだったというわけ。
どんな人生かって? 気になるよな、気にならん言うほうがおかしいわな。
まあまあええとこの会社の社長やってたらしいわ。競合がほとんどおらん業界、らしいわ。
でもな、あるとき社員の一派が離反して会社立ち上げた。
そいつらいとも簡単に業績上げよって、あれよあれよいう間に業界トップ取ったんやて。
そらあ社長としてはムナクソ悪い話やで。御伽噺やったらこっから復活やろけど、そんな矢先にこの世界に引っ張られたらしいわ。
せやからはじめはうらみつらみでひどいもんやったらしいで。
創造主も普通の悪魔になってもらおう思ったら、「気に入らん」って逆ギレされて邪神枠に収めようとしてもこれまた、そんでいろいろ調べてこうなったいう話や。
でもな、アペプやで。知名度全然無しはキッツいで。後から来たクトゥルフ勢に押されて今や協会でひっそり余生をおくっとる。この世界につれてこられたときの選択肢を間違えた、とでも言えばいいか。
肩こってかなわんな。今日の仕事はこれくらいにしとくわ、はぁ……だっるいわ~
「おい、ちゃんと仕事しろよ」
アペプさんはダンディな声で突っ込んだ。
「なんや、起きとったん?途中で入ってこいや」
「お前、割り込まれたらブチ切れるタイプだろうが」
「仕事やからかめへんて、そんなんやから後輩にナメられるんやで! いっぺんシメたったらええのに!」
「……そういうタイプじゃないから」
「邪神やけど中身はエエおっさんやもんな、嫌いちゃうで。なぁ……今日も行くか?」
黒瓜さんはコップを傾けるしぐさをする
「いつものとこか?」
そうして二人は歓楽街へ繰り出していくのだった。