プロローグ
めんどくせぇな。最近の会議といえばいつもあれだ。
『いかにして若者の意識を変えるか』
なんだかんだいっても元凶は社会が悪いの一言で終わりだろうに。
それでもなにもしなけりゃなにもかわらない、困るのは自分達、会社、そして業界。
愚痴っても仕方ないんだけど、俺だって昔は同じように思っていたんだ。
このつまらない現実にはお別れ、こんにちは異世界!と…
今日も退屈な会議は終わって協会会館ロビーで他社の皆さんと他愛のない会話。
それでもこんな日常が心地よかったりするのはなぜだろう?
想えばもう十年か。
あの頃はひたすら異世界に想いを馳せて妄想に耽っていたもんだ。
トラックに跳ねられ異世界召喚、チートにハーレム、テンプレ展開、剣と魔法のファンタジー、神と悪魔にetc…
色々あるけどこんな世界にあたったのも運が良かったといえば、そうなんだろう。
はじめはこの世界の色々なことがいまいち納得いかなかった。
でも先輩は事あるごとに言った。
『責任なんて考えなくていいの。後始末はあっちの仕事だから』
他人がどう思うなんて関係ない。
この世界で我々には基本的に責任なんてないのだった。
そしてこの世界はまだまだ創造中だ!
ついてこれないかな?
自己紹介遅れました、駆け出し悪魔のダンクィ、この世界の創造の末席でやりたい放題させていただいています。
そもそもなぜ悪魔になったかというと…前世の話ですね。
以前の世界では中二病のクソガキだったんだが、まぁ…あの…魔が、差した、っていうのか…車に…飛び込んだ…
[モジモジするな!もっとはっきり言えよ、やりなおし!]
やべっ!はい!言い直します!大魔王様!
簡単に言うと異世界転生にワンチャンかけてタクシーに飛び込んだんだけど、それをたまたま大魔王様が見てたんだ。
普通そこはトラックだろ!って神様はスルーしたらしいんだが、大魔王様は『なんかやってくれそうだな』とこの世界に悪魔として召喚してくれたらしい。
[まぁ間違ってないな!細かいところは…プ、プッ…プライバシーに関わることだし言わんでいいな!…ウヒャヒャヒャヒャ!]
なにかツボにはまったらしい。いつもの事だしスルーすっかな。
[ヒー、ヒー、ウヒャヒャヒャ、…ハァハァ、あのときの事はいつ思い出しても…ブフッ…]
ヤバイ、この後の展開はいつもの理不尽コースだ!
この大魔王様といったら笑い上戸なんだがその後は決まって当たり散らすんだ。
トップといえどストレスがたまってるのか情緒不安定気味。
そして一番の下っ端の俺をおいてみんな逃げる。
誰だって死にたくはないからな。
召喚されたあのとき、契約というか、あの世で大魔王様とお話をしていたときのことだ。
俺は大魔王様に何回も殺されているんだ。
そしてそのたびに生き返らされている。
俺にとって死は軽い。あれ以来は毎日の事だ。
そして大魔王様にとっては殺すことも生き返らせることも息をするが如く当たり前のことだ。
まぁ人間じゃないし理解できなくてもしかたない。
とにかく、とにかくここは黙っておこう。
あれ?落ち着いたみたいだな、肩の震えが弱くなってきたみたいだ。
[フーフーフー…あぁどうした?もっと皆さんにお話ししろよ!広報担当なんだからさ。]
そう、このお話はこの世界を皆さんに知っていただくためのものなのです。