表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディストゥ・ライフ  作者: 鎌里 影鈴
第一章 天に愛でられた万能なる紅蓮
16/18

第15話 結果報告

二十話構成辞めようかな?

そう思う自分がいます。

 マンションを出てすぐに立ち止まってしばらくすると、視界全体を光が(おお)う。

 直後、住宅街の中から、転送ポータルの上へと景色が変わった。

 原理は知らないが、〈アラハバキ〉の転送室から意図的に移動させられたのだ。

 悠斗は転送室を後にし、通路を抜けて、司令室へと足を運ぶ。

 開けた扉の先に、見知った三人がいた。


「悠斗君! 無事だったんだね」

「ノワルの応戦に行けなくて、ごめんな」

「いいよ別に、大事(おおごと)にはならなかったし」


 謝る佑樹に、悠斗は両手を振って返す。本当に大事には至らなかったし、むしろその後が重要だったため気にはしていない。


『早急で申し訳ありませんが、以後ことについて話し合いましょう』

「……ああ、そうしよう」


 諒が装着した腕輪の上にいる百合奈がそう言い、悠斗は首肯した。

 四人と一体が、それぞれ定位置のような場所に()いて、今後の活動について考える。

 それは(すなわ)ち――カマエルの対処だ。


「まずは、現状を報告する。カマエルは現在、〈AMP〉が用意した能力者(シュロム)専用マンションの一室で眠っている」


 諒が言うと、背に展開されたモニタに、先ほど悠斗とカマエルがいた部屋が映し出される。

 休むと断言したカマエルは、真紅の鎧を脱ぎ、ベッドですうすうと寝息を立てていた。


「何か、盗撮しちゃってる気分だな……」


 同じくモニタを見ていた佑樹が、眉根を寄せて言う。悠斗はあははと苦笑した。


「天使カマエルは、悠斗が明日に情報共有という名目で対話をしてもらいたい――が、ここで問題がある」


 静かで抑揚のない諒の声が、少しばかり重くなる。

 その訳を、悠斗は知っていた。


「――カマエルは、誘発波を止めることはできない」

「「な……っ!」」


 悠斗が真実を口にすると、佑樹と琴愛が狼狽の声を上げる。

 それも無理はない。悠斗も本人から直接聞いたときは、驚きを隠せなかった。

 だがそれは、カマエル自身が発した確かなことなのだ。


「まさか、誘発波が恣意によるものではないのは予想外だった。この計画を推奨した〈大和ハート〉でも、この事態には苦悩せざるをえないだろう」

「そんな……何か方法はないの?」


 琴愛が眉を八の字にして()いてくる。諒は息を止めるように沈黙してから、それに答えた。


「――方法ならある。そうじゃないか? 矢崎」

「ああ、そうだな」


 こくりと頷くと、悠斗は話を継いだ。


「あいつは確かに、誘発波を止めることは不可能と言った。だけどこうも言ったんだ」


(少なくとも、今の私には……)


 悠斗は、カマエルが捨てるように呟いた言葉を皆に伝えた。

 と、それを聞いた佑樹が、思考を巡らせてから口を開く。


「もしかして、天使が誘発波を止める方法を知っている?」

『その考えが妥当でしょう。誘発波は、限られた天使の権能と言いましたし』

「権能。生まれ持った権利と解釈するなら、それが何であり、どうやって停止できるのかは天使自身が熟知しているはずだ」


 百合奈、諒がつらつらと述べる。その考えは確かに道理であった。


「でも……どうしてカマエルさんは、それを話してくれなかったんでしょう?」


 そこで琴愛が、首を傾げながら言ってくる。

 あまり確証はないが、悠斗は立てた予想を言った。


「カマエルは人間が苦手だって言ったから、たぶん俺のことを信用できないんじゃないか?」

『それは違いますね』


 直後、ぴしゃんと閉じるような声が響く。百合奈だ。


「え、百合奈……今なんて?」

『ですから、それは違います。悠斗は、天使に信用されてないわけではありません』


 百合奈は柔らかな表情と眼差しで言うと、腰をを回して、諒に視線を向ける。

 諒はそれに頷きで応えると、両手をスッと前に出し、手のひらを打ち鳴らした。

 この行動は、諒が能力を使用するときに取るものだ。

 しかし、数秒経っても変化は訪れず、何かが現れた様子も見られない。

 やがてその静寂に堪え兼ねて、悠斗は声を出そうとする。

 その時だった。


「司令! お待たせ致しました!」


 突如、後ろの扉が開き、同時に大きな声が部屋中に響き渡る。

 誰かと思い振り返ると――悠斗はその名を呼んだ。


「ジンっ!?」


 そう。大仰(おおぎょう)な登場をしたこの人物こそ、悠斗が〈AMP〉で初めて会った艦員。ジンである。

 黒髪に黒褐色(こっかっしょく)の肌。ボタンまでしっかり留められた同色の軍服。

 ジンは、すたすたと諒の元まで行くと、手に持っていた資料のようなものを諒に渡した。


「ありがとう。藤野」

「お褒めの言葉を頂き、光栄です。それでは」


 そう丁寧な口調で言うと、ジンは素早く踵を返し、足早に退室した。

 まるで嵐のように、鮮やかで一瞬。

 そのためか、悠斗はもちろん他の攻撃艦員も声を発せないでいた。

 沈黙の中、諒は渡された資料に視線を落とし、目を通す。


「そうか……やはり…………」


 そして何やら一人で喋っていると、読み終えた資料を閉じて、顔を上げる。


(みんな)。新たな情報を会得し――どうした。皆、ぼうっとして」

「いや、状況が飲み込めないんだが……今なにしたんだ?」

「? 何かしたかな」

「逆井が手を叩いたタイミングに合わせて、ジンが来たような気がしたけど……」


 悠斗がそう言うと、諒は納得したように「ああ」と声を出した。


「何も可笑しいことはない。僕がこの手で、藤野を呼んだのだから」

「……その、《空間》の能力でか?」

「そう。解析室にいた藤野を、数センチだけ移動させた。これが、呼び出しの合図」

「でもそれって、危なくないのか?」

「最初は皆が迷惑がっていたけど、藤野を始めとした艦員たちが思慮して慣れてくれた。――それより皆、新たな情報を会得した」


 先の事柄を説明した諒はその後、悠斗たちにあることを伝える。


「カマエルはそれほど、人間を嫌悪していない」

「え、今なんて?」


 悠斗は信じられないといった様子で聞き返した。


「カマエルは人間を嫌悪していない。それどころか、興味を持っているように見える」

「いや、それはないだろ」


 嫌悪はないという部分より、興味を持っているという部分を否定する。

 それはそうだ。なぜならカマエルは、人間は苦手だと言った。それが本当なら、嫌気も感じているのではないか。

 継いで百合奈が、悠斗に話す。


『モニタリングした際、映像だけでなく精神チェックも行いました。その結果を拝見しますと、ユウトに対して、反感意識を抱いていないことがわかりました』

「焦燥や悲愴、羞恥など色々な感情があったが、どれも拒絶に至るものではないと判断できる。つまり矢崎は、カマエルに信用されていないわけではないということだ」

「そう、だったんだ……」


 不審な気持ちは残るも、悠斗はそう言った。


「だけど、もしそうなら……嬉しいな」

「っ……」


 続けて悠斗は正直な感想を口にする。その途端、琴愛が無言でこちらに視線を向けていた。


「それと、これも新しい情報だけど……カマエルの魔力は、不安定な状態にあるようだ」

「不安定? それって、つまり……?」


 諒が発したことに、悠斗は詳細を求める。


『精細に言いますと、魔力の出力や調整が思い通りに出来ていないということです。カマエルが気絶したときに、翼は消えていましたね?』

「おう。あとは鎧の一部も、消えてた気がするぞ」

『恐らく天使の衣装も、自身の魔力で生成しているのでしょう。魔力が不安定になったことで維持が難しくなり、消滅したと思われます』


 見たことをそのまま伝えると、百合奈は自分なりに考えた推測を述べた。

 さすが人工知能というべきか。考慮されたことが全て理にかなっている。

 その時だった。


「魔力が、不安定……」


 佑樹が、先ほど聞いた言葉を復唱している。

 何かと思い、悠斗は佑樹に話しかけた。


「佑樹。どうしたんだ?」

「……魔力が不安定。つまりそれは、魔力が自由に扱えないということだよな?」

「まあ、そう……だな」


 断定はなかったため、一拍遅れて肯定を示す。

 すると、佑樹が表情を険しくした。


「ということは……そのカマエルってやつ、結構危ないんじゃないか?」

「え、危ないって、何が?」

「だから、魔力が不安定ってことはつまり――」

限界暴走(オーバーグリッチ)の可能性がある、だな」

「は……?」


 代わりとでもいうように、諒が話に割り込む。

 その意味が、悠斗にはわからなかった。


「ちょっと待て。限界暴走って、能力者にしか起きないんじゃなかったのかよ」


 限界暴走は、能力者が魔力を暴発させてしまう現象だ。人外の天使は、関係ないと思っていた。

 しかし、諒は首を横に振ってから言う。


「確かに、限界暴走はそれを起こした能力者に向かって言うものだ。だが資料を見る限り、魔力の波に乱れがあることは確実だ」

『魔力が不安定である主な理由は、身体か精神、どちらかに掛かった多大なダメージや衝動です。現在のカマエルは、健全な状態ではないのでしょう』


 百合奈がまたもや、自身の推測を述べてくる。

 それに悠斗は反論せず、ただ黙っていた。

 二人が言ったことは、決して真実とは限らない。

 だがもし、それが本当だったら……。

 瞬間、悠斗の心が嫌な方に揺らぎだした。


「今伝えたことを踏まえて、矢崎には明日、カマエルと会話をして、誘発波を止めてもらいたい。――これで以上だ。解散」


 諒が号令を出して、その話し合いは終わってしまった。

このままいけば、多分問題ないです。

全部書き終わったら改善します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ