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ディストゥ・ライフ  作者: 鎌里 影鈴
第一章 天に愛でられた万能なる紅蓮
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第11話 襲来からの再び

文章のテンポ感が悪いと思っています。

修行中の身ですので、書いていく内の成長と努力によって自身を鍛えようとしています。

厚かましいですが、応援よろしくお願いします。

「ふぅ……」


 艦内での授業を終えた悠斗は直後、嘆息混じりに息を吐いた。

 別に、教えてもらった内容に飽々しているというわけではない。単純に、情報の量が多くて頭に入り切らなかったのだ。

 これは後々気づいたことなのだが、どうやら自分の持つ知能は、他の人と比べて低いらしい。つまりは馬鹿ということである。

 才知の高低は実の所あまり気にしてはいないが、相手の話を理解できないのはいささか問題だと思った。


「う…………」


 パンク寸前の頭を抱えて、悠斗はだんまりとする。

 と。


『頭、大丈夫ですか? ユウト』


 モニタの上で直立している百合奈が、やや失礼な意を含んでそうな言葉でいった。

 さすがにそれは馬鹿でも気付く。悠斗は半眼で百合奈を睨んだ。


「馬鹿なのは認めるけど、別に何も気にしてないってわけじゃないからな」

『そうですか。無頓着ではないなら、生粋(きっすい)の鈍感さんか、ただの阿呆でしょうか』

「さっきから当たり厳しくないかっ!?」


 容赦というものが微塵も感じられない言葉に、悠斗は悲鳴じみた声を上げる。


「そこは目を(つむ)ってくれないか。矢崎」


 と、そこで、自分の荷物を整理していた諒が話を継ぐ。


「別にいいけど、百合奈が……」

「それは仕方がない。百合奈は嘘が付けない性格なんだ」

「お前もそういうやつだよなっ!?」


 間髪入れずに、悠斗は自分を卑下してくる言動に突っ込んだ。疲れることこの上ない。


「そうだ。矢崎に渡す物があった」


 突っ込みをスルーした諒は言って、荷物から小さなケースを取り出す。

 悠斗はそれを受け取って、ケースの蓋を開く。中には赤色の携帯端末に小型のイヤホン。それと白い銃が収納されていた。

 この銃には見覚えがある――暴走した能力者(シュロム)と対峙した際に、琴愛が使用していたものだ。


「連絡に使う端末に、緊急用のイヤホン型通信機。この銃は鎮静銃(シールガン)といって、対象に抑止性の顕想源(イメウィズ)を撃ち込む道具だ。――これを君にあげよう」

「マジか!? ありがとう!」


 悠斗は礼を言うと、嬉々として喜びを(あらわ)にした。


『ふふ。まるで子どものようですね』


 それを見て百合奈は、口の端を上げて小さく笑う。

 と、そこで悠斗はふとあることを思い出し、諒に尋ねてみる。


「なあ逆井。美麗って子、知ってるよな?」

「鷹谷のことか。――ああ、勿論知っている。何か気掛かりでも?」

「や、大したことじゃないんだけど……艦内で保護しているのって、あの子だけなのか?」


 それは、悠斗がこの組織で気になったことの一つだった。

 無論、AMPを疑っているわけではない。未知の力を持つ人間、能力者を保護するという目的は本当に素晴らしいと思う。

 しかし、その全貌があまり詳しく知らされていないのは疑問だった。

 悠斗の問いに、諒は数秒の間だけ沈黙してから口を開く。


「――そう。鷹谷は約一年前に保護し、現在まで〈アラハバキ〉で検査を受けながら生活をしてもらっている。だが勘違いはしないでほしい。僕らは自由を剥奪するつもりはない。だから、希望があればすぐそれに応えるつもりだ」

「つまり……美麗は艦内での生活を強制されていない、ってことか?」

「そうだ。本人が外に出たいのなら、そうさせる。絶対に」


 強めの言葉を付け加えて、諒は断言する。

 虚言を弄ぶ様子はなく、何か隠している素振りもない。

 悠斗の目には、そう見えていた。


「……わかった。その言葉を信じるよ」

『全く、疑念を持つならもう少し適格な判断を身につけてください』


 百合奈が溜め息をついてから言い、悠斗は苦笑しながら謝った。


「悪いな。何せ気になったもんだから……つい」

『好奇心による行為ですか。――そう言えば、ユウトに伝えたいことがありました。ですよね? リョウ』

「ん? ああ、あれか。このタイミングでどうかと思うが……まあいいか」


 頷いて眼鏡を上げると、諒は抑揚のない声で話を持ち出す。


「簡潔に言おう――先日、天使カマエルが現界した」

「っ……!」


 突然の報告に悠斗は驚き、表情を強張らせる。


「場所は日本の南西にある福岡県。午前五時四〇分に現界。上空に火炎を放出した数分後、本体の消失が確認された」

「そうなのか……住民とかに被害は?」

「被害はない。魔力を行使したのは一回きりで、あとは町中を移動しただけみたいだ」

「そう、か……」


 それを聞いて、悠斗は安心した反面、複雑な気分に苛まれた。

 カマエルは何のために、現界や消失を繰り返しているのか。どうして、悠斗の腕を切断したり、町中で魔法を使ったりしたのか。


「逆井……お前、天使の名前を言い当てたよな。どうしてわかったんだ?」

「ただの推測だ。炎と再生を兼ね備えた天使といえば、範囲は絞られる。僕はたまたま、それの名称を知っていただけだ」

「……もしかして、会ったことがあるのか? 天使に」


 その時、諒の動きが一瞬だけ固まった。


「…………」


 不自然な沈黙を作り、細い息を漏らすと、諒は平淡な声を発する。


「カマエルのような天使は対面したことがない。……が、他の天使なら一人だけ、会ったことがある」

「それは、どんなやつ……?」


 興味本位で訊くと、諒は躊躇(ためら)いもなく答えてくれた。


「僕が見た天使は、闇のような黒い翼を持っていた」

「黒い翼……」


 黒い翼を持つ天使。それを頭のなかで簡単にイメージする。――その時、突如アラームのような音が響いた。


「っ、これは……」

『千葉県北部にノワルを探知しました。至急、殲滅に向かってください』


 百合奈が発した言葉に、諒は(いぶか)しい顔をする。


「また千葉か、最近多いな……石倉と富屋は別件でいないから、矢崎。すまないが一人で向かってくれないか」

「わかった、俺に任せてくれ」


 突然の命令に嫌な表情ひとつもせず、悠斗は転送室へと走り出した。



 ● ● ●



 千葉県北部にある、とある校舎の運動場。

 人の世界に害をもたらす生命体ノワルは、そこにいた。

 数はおよそ二十。ジェル種とローム種が入り乱れていて、その場を徘徊している。

 その一群の数メートル前にある木の陰に、悠斗は身を潜めた。


「こちら悠斗。ノワルの集団を確認した……うわ、多いな」


 遠目から見て、悠斗は苦い顔をする。広場をたむろしているその光景は、まさに奇怪という言葉が相応しい。

 腕に装着した転身用装置(トランスデバイス)から、諒の声が聞こえる。


『確かに数は多い。どうする? ここは様子を見て、応援を待つこともできるが……』

「いや、それには及ばない。訓練の成果、ここで見せてやる」


 提案を自粛して、悠斗は木陰から歩いて出ると、転身用装置にエナジーを接続する。


『ナンバー十四・ガルーダ――起動』


 赤色の仮面と鎧を構成し、身に纏う。その後一気に駆け出して、ノワルの群に奇襲を仕掛けた。

 目先にいる一体のジェルノワルを殴打。一呼吸もさせない勢いで連続の攻撃を喰らわせ、ノワルを消失させた。

 それでようやく、周りのノワルが悠斗に気づき、「ギギギ」と潰れた虫のような声を発してくる。


「はあっ!」


 悠斗は続けて、ロームノワルに連続攻撃を繰り出す。だが相手の装甲は硬く、ちゃんとした手応えが感じられなかった。

 しかし悠斗とて、これを予期していなかったわけではない。戦闘訓練ですでに実証済みだ。

 そしてその対策も、もちろん用意してある。


「――【猛火の両翼(ジャーマアーラ)】!」


 悠斗は仮面の内で、大きな声を発する。すると両手から赤い炎が生まれ、それが腕に絡み付き翼のような炎を形成させた。

 この技の総称は、精命真技(アンチリジェクト)。自身を守るための鎧、アルマの源となるエナジーに貯蔵された魔力の消費量を増幅させる代わりに、通常とは比べ物にならない攻撃を出せる大技だ。

 代償を必要とするが、駆使すれば戦況を(くつがえ)すことが可能だと、司令官の諒から教わった。

 難しいことはわからなくて聞き逃したが、要するに必殺技ということだ。

 悠斗は炎の翼を広げ、ノワルに力いっぱい叩き付けた。

 ロームの頑丈な皮膚を斬りつけ、焦げたような焼け跡を残す。

 攻撃したときに感じた、確かな手応え。実戦で使ったのは初めてだが、効果はあるようだ。

 予想が変わり確信に。それを実感した途端、どこからか力が(みなぎ)ってくる。

 数度斬りつけると、やがてロームは灰のようになってから消失した。

 それを視認した後、悠斗は目の端に映ったノワルに焦点を置く。

 一心不乱に、悠斗はノワルの群れに躍り掛かった。



 それから数十分後。悠斗は異形の溜まり場と化した運動場で、ノワルを抹消し続けていた。倒した数は覚えていないが、およそ十体ほどである。

 身体は明らかに限界の道を進んでいたが、それでも悠斗の猛攻は止まらない。手と足を振り回して、ノワルを攻撃する。

 殴打されたノワルが、悶絶して倒れ、霧のように空気に溶け消えた。

 悠斗は、すぐさま次のノワルに攻撃を加えようとする。

 ――が、それをする寸前で、悠斗は違和感を覚えた。体から突如として、力が抜けていくのだ。

 動揺が走り、乱れた体勢を整える。するとその隙に、一体のロームノワルの攻撃が悠斗の腹部に炸裂した。


「ぐ……っ」


 痛みが全身に響き渡り、それが蓄積した疲労と連鎖する。

 幸い、アルマが破壊されるほどの威力ではなかったため、身体に損傷はない。だが戦うための体力が残っているかと問われても、応と言えるほどの自信はなかった。

 これが精命真技の代償。種類にもよるが、技を発動した際に莫大なエナジーの魔力と同時にそれと相応の体力をも消費させる。

 先ほど使用した【猛火の両翼】は、消耗が比較的に控えめな技だと聞いたが、どうやら長時間使ったことが裏目に出たらしい。


『矢崎、もう体力値が限界を迎えている。すぐに後退してくれ』


 装置の通信機から、諒が指示を送ってくる。

 悠斗は異議を唱えようとしたが、それを口にしようとしたときに複数のノワルが阻害してきた。


『速くその場から離れるんだ、矢崎』

「っ……わかった」


 二度言われた命令に、悠斗は渋面を作りつつも了解し、ノワルの群れから離脱する。

 が、そのとき、ジェルノワルが覆い被さるようにして悠斗に襲いかかってきた。

 悠斗がノワルの行動に気づいたときはすでに遅く、悠斗の体はゲル状の皮に包まれる。


「くっ、この……!」


 何とか抵抗するも、ジェルノワルの表面がベタついているからか引き剥がすことができない。

 ジェルと格闘している間に、ロームらが近付いてくる。

 ジェルの攻撃は大したことないが、ロームの場合は無防備で喰らいでもしたらただではすまない。

 抗いながらも、悠斗は衝撃を覚悟して身を固めた。

 その瞬間、悠斗は全身の血流がドクン、と脈打つ感覚を得る。


「っ……?」


 自身から発生した違和感に、悠斗は体を硬直させ思考を巡らす。

 その時――周囲の空気が震えだした。

 地震が起こり、雲が揺らぎ、風が吹き荒れ、世界が震撼されたように唸りを上げる。

 悠斗はその中で、ある予測をした。

 もしやすると、これは――、

 直後、夕焼け色の空に裂け目が開き、そこから一人の人間が舞うように降りてくる。

 いや、人間(・・)というのは語弊だった。なぜならその生物は、大きな翼を携えていたのだから。

 煌めく翼に、鎧と羽衣を組み合わせたような不思議な(よそお)い。

 そしてそれらの輝きさえも超越した容貌を持った、赤い髪の少女。

 悠斗は息を呑んで、その少女の名を反芻させる。


 炎と再生の天使――カマエルが今、現界した。

次回、天使登場です。

正直いうと、文章の構成に頭使い過ぎて忘れかけていました。

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