第一章 プロローグ
初めまして。鎌里 影鈴です。
集中すると周りが見えなくなる人間です。
今作品を見てくださる皆様、誠にありがとうございます。
上は埋め尽くす限りの灰色、下は揺らめく赤。
目の前の景色を単純に例えるのなら、この言葉が適切だろう。
数日前に見た景色とは、まるで別物だ。
揺れる赤色の中に、黒いものが蠢いている。
端的に言うと――あの黒が全てを一変させた。
建物を破壊し、町を焼き、煙が立ち昇る。
結果として、この世界は破滅の道へと導いたのだ。
しかし……人類がそれを望むことはなかった。
火の海と化した、とある街並みの一角。
周囲にある建物のほとんどが半壊されて、瓦礫があちらこちらに転がっている道路。
そこで少年は一人、歩いていた。
「………………」
立ち止まることも注視することもなく、少年は、耳だけを凝らして周りの音を聴く。
パチパチと火花が飛び散る、炎の音。
テレビとかでしか聞いたことのなかった、銃の乱射する音。
そして――禍々しい獣の息づかい。
「……!」
それを聞いた少年は顔を上げる。するといつのまにか、目の前に黒い怪物がいた。
怪物は人の二倍以上ある背丈で、少年の頭上を見据えている。
二つある目は赤く、威圧感が半端ではなかった。
恐怖というものが全身に襲い掛かってきて、少年は硬直する。
その直後、怪物の背から、何かが飛び出した。
メキメキと、騒音の中で更に気味の悪い音を響かせる。
少年がその時思ったことは、ただ一つ。
――――もう、この世界は五月蝿い。
二○○六年、五月十四日。
この日、日本の面積およそ三割が、焦土となった。
今作品は、別作品の後、同列に書いているので、投稿は遅くなります。