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どうやら、友人は異世界の神様だったようです



突然、店の中から大自然の中に放り出されたと思ったら、友人の背中からは翼が生えていた。


何を言っているのか分からないと思うが、俺だって分からない。

頭がどうにかなったんじゃないか、と思いもするさ。


……だが。

こういう『理不尽な事態』に巻き込まれるのには、俺は慣れている。


――慣れて『しまって』いた。


だから、俺は自己流の『処世術』を身に付けた。

間違っているとしても、身に付けなければいけなかった。

不適合となってしまった社会で生き抜くために。


そして、それは意味不明な今の状況でも、変わらずに役立ってくれていた。



……簡単なことだ。



起きた出来事を、脳内で箇条書きに並べるだけである。それも、起きた順番であれば、更にいい。


そして、その出来事を『第三者の視点』から見つめ、結果に対しては否定も肯定も『しない』。

大局を観るように、感情を交えてはいけない。

感情が絡むと、公平な判断が出来ないからだ。


ただ、目の前で起きた『現実』を、そのまま受け入れればいい。


……のだが。


実は、この『そのまま受け入れる』というのが、かなり難しいことらしい。

そこに感情や私情が入ってしまうのは仕方ないことだし、全員が出来ることだとも思っていない。


ただ、こういう考え方もある、というだけだ。



結果として出来事が起きてしまった以上、その現実があった、という「過去」が確定される。

確定されたのなら、その現実がある、という「現在」が生まれる。

その現在を基点として、その後の「未来」が創られていく。


――故に、第三者から見えた事実は『現実』として、受け入れるべきである。



俺の好きな、運命の三姉妹になぞらえた考え方だが、物事への対処としての本質をついていると思う。


だから、俺は不用意に長く取り乱したり慌てたりせずに、目の前の出来事を理解しようと動くことが出来る。



(安心しろ……いつものことだ)



深呼吸を数回繰り返して、心を落ち着かせる。

そして、目の前で起こった出来事を『客観的に』見た。


そうして得た情報を整理し、今現在で必要な情報だけを取り上げて――理解する。



(……あぁ。そういうことか)



魔法は、実在した。

異世界も、実在した。

エルクゥさんは、俺達の世界の人間ではなかった。

どうやら、俺は異世界に来ているらしい。



1分にも満たないこの時間の間に起きた出来事から、俺は部分的にではあるが、自分の置かれた状況を理解し、受け入れた。


そして、理解したからこそ――疑問がわいた。



「……エルクゥさん。俺の願いを叶えたいと言ったあなたは一体、何者なんだ?」



ここにきて、俺はエルクゥさんのことを『本当の意味で』何も知らないことに気付いた。


家族構成は?

仕事は何をしている?

どうして、俺のような人間に良くしてくれる?


そもそも……翼を持った彼女は『人間』なのか?



「教えてくれ。その答えを聞かない限りは、俺も答えようがない」



何一つ、分からないことだらけだ。

同時に、知ろうとしなかったことだらけだ。

そのことに自分自身で呆れながらも、俺は警戒しながら彼女からの返事を待つ。



「……周りを見てください」



返ってきた返事に従い、俺は周囲を改めて見渡した。


抜けるような青い空。

文明に侵されていない、手付かずの自然。

吹く風の匂いは、嗅いだことのない異郷の地の香りがした。



「周りがどうかしたか?」

「この風景。この大地。目に見えるもの、全て。あるいは、世界といってもいいかもしれません」



くるり、とスカートをはためかせて、エルクゥさんは微笑んだ。



「私が『この世界を作った神様だ』と言ったら……狭山さんは、信じてくれますか?」

「…………」



何を言っているんだろうか、この人は。

酔っ払って、頭でもおかしくなったのか。

そういえば時々、聞いたことのない変な言語で電話をしていることもあったし。

少し前に流行っていた、電波系だの中二病だののキャラクターでもやるんだろうか。



それにどうして――そんなに不安そうな表情をしているんだろうか。



他にも、色々と考えたいことはあった。

考えを放棄して逃げ出したい気持ちもあった。


だが、一つだけ。

彼女に対して、確実に言わなければいけないことがある。



「……、信じますよ」



ぽんっ、と。

以前から、さらさらとしていて撫で心地が良さそうだろうな、と思っていた彼女の頭に、俺は手を置いた。

小さい子供にしてあげるように撫でると、すべすべとしていて触り心地がいい。



「……信じて、くれるんですか?」



撫でられている理由が分からないのか、きょとんとしているエルクゥさん。

可愛い、と思いもしたが、その前に返事をしていないことに気付いて、笑って答える。



「信じるも何も……これだけの証拠を見せられたんじゃ、普通は受け入れるしかないじゃないですか」



室内から一瞬にして、屋外に転移。

しかも、肌で感じる自然の感触は間違いなく本物であるし、見上げれば澄み切った青空。

携帯が告げている『圏外』の文字と足元の戦利品だけが、辛うじて、現実と俺を繋ぎ合わせている接点でしかない。


状況証拠としてはこれ以上のものはないし、そもそも、この状況に巻き込んだ本人が「人間ではない」とカミングアウトしているのだ。

信じる信じないは別にして、誰であっても、この状況を受け入れなければいけないのである。


……しかし。

これとは別に、俺には『信じられる理由』があった。



「それに――俺達は『友達』でしょう? それだけで信じる理由になりますよ」



……そう。

俺とエルクゥさんは『友達』だ。


イベントで様々な衣装を着た参加者の写真を取り合ったり、同人誌を買い求めるために戦場となる会場を走り回ったり、衣装を作るために同じ部屋にこもって徹夜をしたり、イベント後にこうして酒を飲み交わしていたり。

付き合い方としては、ある意味では不健全な種類なのかもしれない。


だが、同じ戦場を潜り抜け、同じ釜の飯を食い、同じ喜びを分かち合った――例えるならば、戦友に近い絆を築いているのだ。


俺に向けられていたものが演技だったとしても……それを信じるだけの価値は、確かに存在した。



「…………ふふっ。やっぱり、変わってますよ。狭山さんは」



理由を答えると、エルクゥさんは吹き出すようにして笑った。

顔から不安や心配といった感情が流れ出て、スッキリとした表情をしている。



「変わってますかね?」

「えぇ、そうです。異世界に来たかもしれないのに取り乱しもしない、私が神様だと知っても『友達だから』ですぐに受け入れちゃう……本当、おかしいですよ」

「いやいや、こう見えても焦りましたって。自分で納得できる材料探して落とし込んだだけですよ」

「それにしたって、順応性が高すぎますって! 口調もちょっと他人行儀だったし!」

「時間と場所と状況を見極めてるだけです。言ったでしょ、俺は仮面も口調も使い分けてる人間だって」

「それでも、色々おかしいでしょう!?」

「おかしくないですよ。信頼できる相手だと分かれば、その人の言葉も信用するのも道理です」



相手を信頼し、信用できるのは、相手を信じる理由があればこそ。

それを今まで続けてきたし、これからも続けていく。

そうして生きてきたのだから、それ以外の生き方を知らない。



「……だからこそ、改めて聞きます」



そんな俺が何を聞こうとしているのかを察したのか、エルクゥさんも表情を引き締める。



「俺の願いを叶えたい、という理由を教えてください」

「……分かりました。でも、その前に」



パチン、と指を鳴らすと、近くに白いテーブルが現れた。



「座りましょうか。少しだけ、長くなりそうですから」

「……そのようですね」



彼女に促され、俺はテーブルに用意されていた椅子に座る。

座ると同時に、テーブルの上にお茶請けらしい菓子と飲み物がスッと現れる辺り、これも魔法なのだろう。



「飲みます?」

「さっき、店で食べてたじゃないですか。今はいりませんよ」

「それもそうでしたね。後で食べたいなら自由にしてくださいね」



そういって、テーブルの隅に菓子と飲み物を寄せる。

少しだけ味が気になるが、今は腹が一杯なのも事実。小腹が空いてからでもいいだろう。



「……そうですね。まずは、狭山さんが気にしているところから話しましょうか」



エルクゥさんはそういって、話を切り出し始めた。



「狭山さんの願いを叶えたい、という理由ですが……正直な所、理由らしい理由なんてありません」

「理由は、ない?」

「はい。ぶっちゃけると、ただの自己満足です。私がしたいからする、それだけなんです」



首を傾げた俺に、エルクゥさんは満面の笑みで頷く。

色々ともったいぶって話すかと思っていたので、理由の薄さに拍子抜けしてしまう。



「正直に自分で言いますか、それ」

「同じようなことをさっき、狭山さんも言ってましたけど?」

「あー……確かにそうかも」



異世界に転移させられる前の自分の発言を思い出して、気恥ずかしくなった俺はエルクゥさんから視線を外して頬をかく。

酒に酔ったわけではないが、その場の雰囲気に呑まれていたのだろう。



「……それに、自己満足だとは言いましたが。相手があなただから、というのも理由ではありますよ?」



視線を戻すと、エルクゥさんはこちらをジッと見つめていた。



「以前に言っていましたよね? 俺よりも先に幸せにならなきゃいけない奴らはいっぱいいる、と」

「……あぁ、言いましたね」



いつだったか、彼女の問いに返した言葉だ。

その気になればなんとでもやりようのある俺とは違い、自分の身すら守ることも出来ない人達がいる。


行動の意味と真意を理解していない子供。

本来、守るべき立場にあるはずの、親や兄弟。


そんな人らに虐げられ、幼くして生きる意味を失ってしまい、命を散らせてしまう、罪もない子供達。


全員を助けるなんて、それこそ夢物語だ。

でも、それを望んでしまった。願ってしまった。


かつての自分と同じ存在が増えないで欲しい、と。



「あなたは優しいです。むしろ、他人に対して優しすぎます。旧いと言われても仕方ないのかもしれません」

「褒めてるのか貶してるのか、どっちなんだよ」

「ふふ、これでも褒めてるんですよ?」



そっと俺の手を握り、エルクゥさんは微笑んだ。

微笑んだが……手を握ったまま、俯いてしまう。



「だからこそ……あなたは『おかしい』んです」

「何がおかしいんですか?」



俯いた彼女の肩が震え、今にも泣き出しそうにも見える。

どうして彼女がそうなっているのか、俺には理由が分からない。



「自分を犠牲してでも相手を助けたい、というその精神と想いは崇高です。褒められるべきでしょう。でも、あなたは……その『自己犠牲』の気が強すぎます。それは『犠牲』という言葉の範疇ではありません。もはや『生贄』の域です」

「エルクゥさん、あなたはなにを……?」



続きを言いかけて、握られた手が痛いくらいに力が込められていることに気付く。

指先が白くなるほどに力をこめて握られた手が、彼女から伝わる振動で震えている。



「周囲の調和を保つために己を殺し、誰かに甘えることも弱音を吐くことも罪として。謂れの無い罪にも責められるべきだと。自分を押し殺して、何度も殺し続けて……その果てに、人形のように我のない空虚な存在へと成り果ててしまった」



何を言っているんだ、この人は。



「人形だからこそ代えが利くし、壊れてしまっても構わない。感情も意思も必要ない。能力もない有象無象の一部だと、自分を定義してしまっている。だからこそ、自分自身が『壊れてしまう事』も『当然の事』だと思っている」



……いや。本当は分かっている。

彼女は、視ているんだ。



「……そんな事は、ありません。あなたは『唯一無二の存在』です。人形ではなく人間なんです、代えが利く存在なんかではないんです」



俺の――心を。過去を。



「あなたも、同じように幸せになるべきなんです。救われなきゃいけないんです。助けられなければいけない人なんですよ……?」



彼女は、次に何を言おうとしているのか。

何を口にしようとしているのか。


その様子だけで、おぼろげながらも予測がついてしまう。



「なのにどうして、あなたは――そんなに自分を『執拗に』責め続けて。自分には『幸せになる価値はない』と思っているんですか!?」



それが、背負うべきではない冤罪であるかのように、彼女は叫ぶ。

顔を上げた彼女の目からは、涙が流れていた。

まるで、泣けなくなってしまった俺の代わりに泣いてくれているように。



「……神様だから、俺の心が。俺の過去が視えたんですね」



何を見て、何を聞いて、何を知って、何を感じたのか。

俺には分からないが、彼女が泣くだけの理由を俺は作っていたのだろう。



「余計なことを、しましたか?」

「いえ。別に気にしていないです」



彼女が涙を拭うのを待ってから、俺は言葉を選んで口を開く。



「見たでしょう? 俺の中にある、黒い『エゴの塊』を」



色褪せてボロボロになってしまった、昔の記憶を思い出す。

思い出したところで、何も変わらないし何も変えられないのは知っている。


だからこそ、今の自分の『ありのままを受け入れる』という思考の原点にもなっている。



「……はい」

「子供の頃から『あんなもの』を抱えて生きてきたんです。社会を見限っても仕方のないことだと思いますよ」



理不尽な理由で虐められ続け。

命を軽視する社会の闇と現実を見せつけられて。


社会を信じられない。

人間も信じることが出来ず、更には『自分』すらも信じられない。


社会を恨み、人間を憎み……その果てに、殺意まで抱いたこともある。


そんな闇を抱え続けて生きて、よく犯罪に走らないで済んだものだと思う。



「今は、それなりに折り合いをつけて受け入れてますけど」



唯一の味方であるはずの『自分』も信用できなくなるような出来事なんて、そうは起きるはずがない。


だが……俺には「起きて」しまった。


起きてしまったからこそ、こうなってしまったのだ。

そのことに後悔はない。

ただ、他の道はなかったのだろうか、と思うことはある。戻れないところまで行き着いてしまった今となっては、遅いのだけども。



「気が狂っているだろうってことは、自覚していますから」



多かれ少なかれ、人が狂気を孕んでいるのはこの現代では当然のことだ、と俺は思っている。

同時に、俺のように『この世界では生きにくい』とまで考えるまでに狂っているのは、異常だとも。


だからこそ、幸せになってはいけない。なってはならない。


ただ、普通に死ぬのでは意味が無い。

ここまで生きてきた意味がない。

生きにくいのであれば、生きやすい世界になるための礎になればいい。


そう思い、自分を犠牲にしている……それ自体が既に「狂っている」発想なのだと、知っていながら。



「狂っていると知っていながらも、狂わざるを得ない状況が社会には出来ている」

「そうでもしなければ、俺はこの世界では生きていけない。けれど、その発想もまた狂っている」

「だから、俺には『幸せになる価値はない』……ですか」

「そういうことです」



話をしているうちに小腹が空いてきたので、そっと菓子と飲み物を引き寄せては口に運ぶ。

ハーブティーなどを飲んだことが無い俺だが、喉を通る清涼感に内心で驚きながらも空を見上げた。



……狂わなければ生きていけない世界にしたのは、一体誰なのか。

そんな事を誰かに問い尋ねた所で、すぐに世界が変わる訳ではない。変わらない可能性もある。

だからといって、何かが出来るほどに力があるかと聞かれれば、答えはノーだ。


少なくとも――このまま生きていれば、俺は社会の片隅で何も変わらないまま、何も変えられないまま死んでいく。

そんな未来が空想でも何でもなく、起きるであろう未来として視えているのだから。



「……これは、私のわがままですが」



そう切り出して、エルクゥさんが俺の目を見て続ける。



「私は、やっぱり狭山さんには幸せになって欲しいです」

「どうしてですか?」

「他人のために自分を犠牲にし続けてきたんです、そろそろ『お返し』を貰ったっていいと思いますよ?」

「そんなことを言われても……」



今まで尽くしてきたのだから、今度は逆に尽くされるべきだ。

そう言っているのだろうが、何をどうして返して貰えばいいのだろうか。


そんなことを難しい顔をして考えていると、エルクゥさんはフフッと微笑む。



「それに――私が『友達』の幸せを望んで、何か悪いですか?」

「えっ」



彼女の言葉を聞いた俺は、間抜けな表情をしていたんだろう。

言った本人はそのあと、クスクスと笑っていたが。



「もうっ。狭山さんが言ったじゃないですか、私たちは『友達』だって。忘れちゃったんですか?」

「いや、忘れてませんけど……」



額や鼻をつんつんとされながらも、俺はエルクゥさんの言葉を噛み締める。



「いいんですか? こんな奴で」

「こんな奴? ……狭山さん」

「はい?」

「自分を『こんな奴』だと言わないでくださいっ、自分を卑下しすぎですっ」



謙遜して言ったのだが、エルクゥさんにはムッとした表情で返された。



「自分を蔑ろにしがちだけど、周りには優しく出来るし、自分の非も素直に認められて親孝行もする、立派な社会人じゃないですかっ!」

「でも、俺の過去を視たんじゃ」

「過去は過去ですっ、そんなのは今の狭山さんと関係ありませんっ!」

「えー……」

「悔しかったら、今日から幸せになるために前を向いて生きてくださいっ!」



言い切って、エルクゥさんはフフフと笑う。

そうまで言い切られてしまうと、一応は過去を受け入れた俺が、今も女々しく過去を引きずっているような形に見えてしまうのだが。



「……はぁ。わかりましたよ」



まぁ、そんな自分だからこそ。

こうして、現実と夢の狭間にあるような奇跡体験をしているんだろう、と強引に思い込むことにする。


なぜなら、俺の目の前には意地悪そうに微笑みながら、お節介焼きな一面を覗かせる異世界の神な友人がいるのだから。



「それでいいんです。友達としても、異世界の神としても……あなたには、絶対に幸せになってもらいますから」

「言ってることが無茶苦茶だなー」

「え、どうしてそう思うんです?」

「だって、異世界に行ったとしても、俺が望んでるような未来は得られないんじゃないの?」

「……ふふふ。甘いですねー、狭山さん。甘々ですよ」



指を左右に振り、勝ち誇ったような笑みを浮かべて、神は言う。



「送り出そうとしている異世界の創造神である『私』が言ってるんですよ? それぐらいの運命操作やチートなんて、しないと思ってます?」

「いや……するだろうな、絶対」

「当たり前じゃないですか! 何が何でも、幸せになってもらいますからね!」



バンッ、とテーブルを叩いて立ち上がるエルクゥさん。

目が爛々と輝いて、有無を言わせないようなオーラが全身から溢れ出していた。


どうやら、やる気のスイッチが入ってしまっているらしい。

少しは落ち着かせないと、とんでもないことになりそうだ。



「神様が、一人の人間を贔屓していいのか?」

「友達だから、いいんですっ!」

「えー……」



遠回しに「落ち着けよ」と言ってみたところ、そんな返事が返ってきた。

これは、アレだ。


どうあがいても、避けられない運命らしい。


実際、小声で何を言ってるのかは分からないが、時折「能力のブーストは基本よね」とか「専用魔法は何属性がいいかしら」などと、色々ぶっ飛んだ単語が聞こえてくるわけで。



「……どうしてこうなった」



手に負えない、とばかりに考えを放棄する。

実際、こうなってしまった彼女を止める術を俺は持たない。彼女がやりたいようにやって満足するのを、待つしかないのだ。

逆に言えば、それだけ、彼女が真剣に俺の事を考えてくれている、ということでもあるのだが。



「……とりあえず、程々にしてくれよ?」



暴走しがちな戦友の手綱を握るのは、異世界に行っても変わらないのかもしれない。


彼女の暴走が落ち着くまで、俺は周りの風景を見て楽しむことにした。

自分がこれから生きていくであろう、この世界を。







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