航海一日目
「なぁアンタ海賊なんだろ?」
ソイツは目を丸くした。
「俺を連れてってくれ」
あれから五年――――
「ウィル!ウィリアム!!何処だ!?さっさと掃除やれ!!」
「アルバ五月蝿いでぇ。ウィルなら甲板で寝とるさかい…」
大海を泳ぐ大きな船。名前のない海賊船。
船長のアルバ・ゼアノートは若いなりにも他の海賊を纏めていた。
「ユウもさっきっから何してんのかわっかんねぇけど…船の大掃除!!手伝えぇ!!!!」
大海を泳いでいるように見えたそれは陸の上でボロボロで横たわっていた。
「せやかて…船の大掃除くらい俺様の手に掛かればすぐ終わるわ…せやから黙っといてくれへんかなぁ?」
黒い笑顔が輝いた。美しい金髪とは裏腹に黒く微笑む彼は朝霞由宇という。唯一の日本人で、海で遭難していたところを拾ってもらった。
「アルバさん…そろそろ喉枯れますよ?」
「あら〜ウィリアムく〜ん…一体誰のせいでこんなに叫んでると思ってんだこの糞餓鬼ぃ!!!」
「滑舌いーね」
「じゃかぁしッ……」
アルバの顔を掠るように何かが通り過ぎ、後ろの壁に刺さる音がした。
「アルバが1番五月蝿いから……静かに掃除しないと御飯無しだよ?」
壁を見ると、そこには銀色に光ったフォークが刺さっていた。
アルバの顔が一瞬で青くなった。
「ちょ…朴兪ちゃん…?」
朴兪と呼ばれた黒髪を二つのみつあみに縛った女の子は、名を李 朴兪と言った。
この船の唯一の女子であり、最年少でもある。
左手にはビーフシチューの付いたおたまを持っていて、いかにも料理してましたという雰囲気を漂わせていた。
「とにかくアルバは黙って掃除。由宇さんもウィルもアルバを構うくらいだったらアタシを手伝って」
この船の裏の船長は彼女なのかもしれない。
最年少なのに誰も反論出来ないのは、彼らの命が彼女にかかっているからなのだ。
彼女を怒らせたり、増してや船から降ろす等したら、食事を作ってくれる人がいなくなってしまうのだ。「掃除しよっかなぁ…」
アルバは目を泳がして言う。すると朴兪の視線はウィリアムへと移った。
「何したらいいわけ?」
頭を掻きながら仕方なさそうに目を細める。
「お前の大好きな甲板でも直してくれ」
「釘とかなくなったら俺んとこ来ぃや?」
そんな光景を見て朴兪は満足そうに笑った。
船の修理が終わり、食事を終えた後、三人がお腹を壊したことは朴兪は全く知らなかった。
初の自作小説でどうやって書いたら良いかよくわからなかったんですが…頑張りました。