表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ーサバイバル編
4/36

04.ウォーキングは計画的に

歩き続けても、景色はほとんど変わらない。

途中で、もしかしてきた道をぐるぐる回っているのではと疑い、それからは木が作る影の位置を注意深く見て、同じ方向へ歩き続けたぐらいだ。

行けども行けども続く、陰気くさい枯れた森にいい加減うんざりする。


足の痛みが限界になり、倒れた幹に座り込んだのは午後6時ごろで、歩き始めてから4時間もたっていた。


日も暮れかかってきたらしく、夕焼けの直前だろう赤っぽい光が森の中にも差し込んできている。


どうやら今日中にこの森を出るのは無理そうだ。

疲れのせいで恐怖はほとんど感じず、私は一晩を森で過ごす覚悟を決める。

野宿の覚悟を決めたのと同時に、なんで私がこんな目に、と怒りが湧き上がってくる。


私はただ、図書館へ行こうとしただけなのに。

どこかの誰かにさらわれて、結果的に遭難している。こんなわけのわからない場所で。

犯人を見つけたら絶対にただでは置かない。

復讐のためにも死ぬもんかと決意して、私は野宿の準備を雄々しく始めた。



長時間歩き続けたせいでのどが渇いて仕方なかったが、持っている水は出掛けに持ち出したペットボトル一本分しかない。

できるだけ水は温存することに決めて、3口ほど加減しながら水を飲む。

考えたくないけれど、もし遭難が長引くなら、何とかして水を見つけなきゃ…。

明日はできるだけ水を探してみよう、と決心してペットボトルをバッグに戻す。


野宿は当たり前だけど初めてで、勝手が全く分からない。

水の次に必要なのは食べ物だろう、と考えてバッグの中を引っ掻き回すと、先日コンビニで買ったチョコレートの袋が一つ出てきた。

迷った末に少しだけ食べて、水もまた1口のんでおいた。


そうしているうちに日はどんどん弱っていき、風も冷たさを増していく。

不意に寒さを感じて、取り出したマフラーをぐるぐると巻き付ける。

歩き続けているときはそれほど寒いとは思わなかったが、よく考えなくても今は冬だ。

夜になればもっと寒くなるだろう。

テレビでやっていたサバイバル番組ではどうしてたっけ、と必死で考える。


暗い場所で火おこしをした経験なんて、あるわけがない。

適当に乾いた細い枝と、板のようなものを拾ってきて、必死でこすり合わせて火を起こそうとしたが、煙ひとつでない。

懸命に頑張ってみたが、掌に豆がいっぱいできて、この調子ではとても続けられない。

あきらめの良い私は、寒い中我慢するしかないな、と役に立たない枝と板を投げ出した。

今着ている冬用のコートは羽毛が入っているタイプで、かなり暖かいから最悪でも凍死はしないだろう。

マフラーもあるし。……たぶん。


地面もだんだん冷たくなってきていて、とても寝転がる気分にはなれない。

私は倒れた幹に背中を預けると、座り込んで今日起きたことを考えようとする。

でも、私はひどく疲れていたらしい。



いい夢で始まった日は、あの花畑とは似ても似つかない、最悪な森の中で終わろうとしている。

最後に感じたのはそれだけで、あっという間に私の意識は眠りに沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ