表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ーサバイバル編
3/36

03.悩んだときには場合分け

最初に気付いたのは、顔の半分が押し付けられている、乾いた土の感覚だった。

うっすらと目を開けると、明るい茶色の地面が目の前に広がる。

どうして地べたで眠っているのだろう、とぼんやりした頭で疑問に思う。


その瞬間、全身が浸かった水の感覚を思い出して、私は一気に覚醒した。


はっと身を起こすと、周囲の景色は一変している。川岸の土手の、あの冬ながらのどかだった風景がどこにもない。


周りに広がっているのは、乾いた土の地面と黒っぽい幹をした木々ばかりだ。


自分の置かれた状況が理解できずに、ぽかんと間抜けな顔をしたまま辺りを見渡す。

きょろきょろと見渡しても景色は変わらず、どこか陰気な森が目の前に広がっている。

次第にあっけにとられていた気分は去り、じわじわと恐怖が浮かんできた。


状況を整理しようと、必死で頭を働かせる。

確か私は、図書館に本を返しに行く途中だった。

で、強風にあおられて川に落ちた。

記憶がないところを見ると、その後は気絶したらしい。

目が覚めたら、見覚えのない森の中。


ここまで振り返って、私は3つの可能性を考える。

①誰かが私を川から引っ張り上げた後、森の中に運んで放置した。

②単純に、私は夢を見ている。

③溺れ死んで今は天国にいる。


……①、だろうか?

冷えた空気の中に混じる木の匂い、乾いてひびが入った土、日差しを遮っているしなびた沢山の葉。

周囲の景色は夢にしては精巧で広大すぎ、天国にしては禍々しすぎる。


呆然と座り込んでそんなことを考えていると、どこかで鳥が大きな声で鳴いた。

はじかれたように立ち上がり、周囲を見渡しながらショルダーバッグの紐をぎゅっとつかむ。

怖い。いったいここはどこなんだろう。

恐怖に駆られてやみくもに走り出しそうな自分を必死で抑える。


落ち着け。パニックになって逃げたところで、まともな場所に出られるかはわからない。

私は深呼吸をして、腕時計を見た。

愛用の黒ベルトの時計は、午後2時を指している。

家を出たのが大体午前9時過ぎだったから、今は気絶してから約4~5時間後だろう。

もし今日中に帰れなくても、いずれ家族も心配して探してくれるはずだ。


そう言い聞かせて自分を納得させようとしても、恐怖はなかなか去ってくれない。

とてもじっとしていられなくて、何かに急かされるように、私は暗い森の中をゆっくりと歩きだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ