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エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ー魔女試験編
27/36

27.ランクアップに浮かれるな

悪魔?

何を言われているのか、いまいちピンと来ない。

そう思って呆けた顔をする私に、カリーティザさんは真剣な様子で説明を始めた。


「私たち魔女の主な仕事は、各地に現れる魔物の退治です。

魔物というのは一般に異形の姿をしていて、非常に残忍かつ狂暴な生き物です。

彼らは冥界から現れ、人や農地を襲います。

普通の人間では歯が立ちませんし、軍人でも単独では危険です」


カリーティザさんはそう言って、理解しているか確かめるように、私の顔を見つめた。

一応頷き、聞いていると意思表示をすると、頷き返して続きを話す。


「冥界には、魔物を従える悪魔がいます。

時に人間界へ現れ、人々を惑わし堕落させる存在です。非常に強力ですので、普通の魔女では相手になりません。

そしてベルフェゴールは、数いる悪魔の中でも最高位の一人です。

もし本物なら、あなたを異世界に召喚したのはおそらく彼でしょう」


話を聞くうちに、今までの経験がつながっていく。

きっと森の中で見た化け物が、カリーティザさんの言う魔物だったんだ。

そしてもっと強い悪魔がいて、ベルフェゴールはその仲間で。

悪魔は異世界召喚ができるから、私をこっちに誘拐したのは多分彼の仕業。


……ふうん、全部あいつのせいだった訳ね。

今度会ったときは絶対に、いや、こっちから見つけ出してでも復讐してやる。


「異世界召喚は悪魔の中でも禁呪とされていて、もし行えば過酷な刑が科されると聞いています。

しかしそんな危険を冒してまで、一体なぜ……」

復讐心に燃える私を余所に、カリーティザさんは深刻な表情で考え込んでしまった。



でもどうしよう、これは確実にまずい。

考えたくないけれど、私はただの不審者ではなく、悪魔に召喚された不審者だったわけで。


……やばい、殺されるかもしれない。


「あの、まだ悪魔が私を召還したって、決まったわけじゃないですよね?」

とにかく話をいい方向に持っていこうと、一縷の望みをかけて質問する。


「ええ。異世界召喚は天使にも可能です。

それにベルフェゴールではなく、他の悪魔が行った可能性もあります。

いずれにせよ、人ではない強力な存在が、禁呪を破ってあなたを召還した」

カリーティザさんは、私の目をじっと見つめる。

意外なことに、警戒や嫌悪はそこにはない。あるのはただ、心配し労るような色だけだ。


「首都に戻れば、異世界召喚について資料が見つかるかもしれません。

私の仕事が終わったら、すぐに出発しましょう。

また、危険な存在から狙われないために、魔法の腕を磨くべきです。

道中に教授するので、できるだけ習得してください」


カリーティザさんはベッドから立ち上がり、きびきびと今後の予定を話し始めた。



「私のこと、怖くないんですか?」

思わず問いかける。

でも、言ってすぐに後悔した。悪魔から呼び出された人間が、怖くないわけがない。

カリーティザさんは大人だから、騒がず様子を見ようとしているだけだ。


大事であればあるほど、落ち着いていなければならない。

そんなこと、わかっているのに。


「……怖くはありません」

俯いているのでカリーティザさんの表情はわからない。

気遣わしげな声だけが、耳に入ってくる。


「エリカさん、よく聞いてください」

そう言って、私の顔を両手で包んで優しく上を向かせる。

ベルフェゴールに同じことをされたのを思い出して、思わず怯えてしまった。


「異世界召喚は過去に事例があります。

中にはこの世界に多大な惨禍をもたらした存在もいました。

ですが、同時に大きな祝福を運んだ存在もあったのです」


「あなたが聖なるものか邪なるものか、わかりませんが……あなたは普通の少女に見える。

それに魔力を持っているなら、生かし方次第で人々の助けになれます。

今後学んでいく中で、自分の存在にどういった役回りがあるのか、きっと見つけられますよ」


穏やかな、暖かさをたたえた目が私を励ます。

強張っていた体から緊張が解け、不思議と安らぎに包まれる。

カリーティザさんの真摯な表情から、その言葉が真実だとわかったせいだろうか。


「明朝、迎えに来ます。

明日からは勉強しなければならないことが多いので、大変ですよ?」

いたずらっぽくそう言って、カリーティザさんは立ち上がって部屋を出ていった。

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