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エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ー魔女試験編
24/36

24.カレーピザ?

『旧語を話されるそうですが、私の言葉はわかりますか?』

そういって、美女は小首をかしげる。

大人っぽい美人なのに、仕草はどことなく可愛らしい。


『え、ええ。大丈夫です。わかります』

突然入ってきた美人に圧倒されて、質問に答えるのも一拍遅れてしまう。

こんなに綺麗な人は、雑誌や映画でしか見たことがない。


美女は私の答えを聞くと、安心したようにホッと息を漏らして、優しく微笑んだ。

つい、つられて私まで微笑んでしまう。美人の笑顔、恐るべし。


『よかった。では早速ですけれど、いくつか質問させてくださいね』

……質問?

『あなたのお名前は?』

戸惑う私に構わず、美女は懐から小さな手帳と黒い万年筆を取り出すと、真剣な顔つきで聞いてきた。


『エリカです。長谷川エリカ』

突然のことに驚くが、条件反射で答えてしまう。


『おいくつですか?』

『17歳です』

『家族は何人ですか?』

『3人です。両親と妹、それに犬が1匹』


一体何のつもりなんだろう。

戸惑う私に構わず、美女は手帳に答えを素早く控えていく。

でも速記できたのはそこまでで、話は出身地、親の職業、通った神殿などに及んできた。

もちろん素直に答えられず、『覚えていません』の一言で会話は終了してしまう。



短時間で尋問は終わり、美女は手帳を見ながら何か考え込んでしまった。

和んだ気持ちは消えて、焦燥感が込み上げてくる。

これでは不審者だと思われるだけだ。シドの時と変わらない。


「いかがですか、カリーティザ様。なにかお分かりで?」

扉のそばに控えたシドが、皮肉っぽい声で美女に訪ねた。

用心深く隠しているけれど、瞳には美女への敵意が溢れている。


「……そうですね。この子自身の情報は、ほとんど得られませんでした」

手帳を見ながら、カリーティザさんはどこか物憂げに返事をした。

顔を上げ、何かを迷っているような表情で私を見つめてくる。


どうしよう。自分の身元を明かしたほうがいいんだろうか。

でも、もしも迫害されたら?

迷いに揺れて決心がつかず、唇をそっと噛んでしまう。

息を止めて視線に耐える私を見て、美女は決心したように手帳を勢いよく閉じた。


「神官補佐殿。少しの間、私と彼女だけにしてくれますか?」

柔らかい口調で、美女はシドに向かって声をかけた。

シドは一瞬不快そうに口元を引きつらせたけれど、すぐに一礼して部屋から出て行った。


『エリカさん。身元を明かしたくない理由があるなら、無理に詮索はしません』

カリーティザさんは2人きりになると、優しい微笑みを浮かべて私に向き直った。

『ですが、魔女連盟にも規則があります。万人を受け入れるわけではありません』

口調が優しいから、余計に聞くのがつらい。

好きで不審者になったわけじゃないのに。

邪険に扱われるのは、とても悲しい。



いっそ身元を明かしてしまおう、と口を開いた瞬間、驚くような一言が聞こえてきた。

『なので、エリカさんには一つ試験を受けていただきます。合格すれば、魔女連盟の一員として迎えましょう』

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