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エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ー神殿編
18/36

18.理想の睡眠は8時間

今後、異世界で一般的に使われている言葉は「」で、日本語や書き言葉は『』で表示します。

見知らぬ天井が、目の前に広がっている。

カーテンの隙間から光が入って、一筋淡い光が走っている部分が特に眩しい。

丹念に磨かれた白い石の天井は、清潔そうだけれどどこか冷たい印象だ。


ゆっくりと身を起こす。

周囲は天井と同じ材質の壁に囲まれた、さほど広くない部屋だ。


「いたた……」

辺りを見渡していると、ふいに目の奥に鈍い痛みが走る。

朝に弱いのはいつものことだけど、これは低血圧のせいじゃなくて、寝すぎた時に感じる鈍痛だろう。

腕時計を見ると午前6時で、ほとんど半日気絶していたことが分かった。


気を失ってから覚醒するのは2度目だけれど、もうだいぶ慣れたらしい。

さほど戸惑う時間は長くなく、すぐにここがどこだったか思い出す。

ここは異世界。ラカン女王国。小さな神殿の一室。

私の知らないものが山のようにある世界。


ベルフェゴールから聞かされた話は、不思議なほど覚えていた。

まるで記憶に焼き付けられたかのようだ。



記憶が鮮明であればあるほど、夢であってほしいという気持ちが強くなっていく。

とにかくこの部屋から出たい。外の空気を吸って考えをまとめたい。

それだけを思って立ち上がり戸口に近づくと、扉にメッセージカードが張り付けられているのに気付いた。



『おはよう。昨夜はよく眠れた?

これから大変だと思うけど、あまり泣いてはいけないよ。

悲観しすぎず頑張ってね。------ベルフェゴール』


見たこともない文字なのに、なぜかすんなり意味が理解できる。

多分アルファベットに近いんだろう。同じ文字が何度も文中にあるのが見て取れた。

ああ、本当に魔法が存在するらしい。

外国語が一瞬で理解できるようになる魔法。できれば元の世界でかけてほしかった。


「うあ!?」

もっとよく見ようと触れた瞬間、カードが緑色の炎に包まれる。

絶句する私に構わずカードはメラメラと燃え上がり、あっという間に燃え尽きた。

灰すら残っていない。

扉にも私の指にも、一切痕跡を残さずカードは消えてしまった。


……すごい。

まさかこの目で、本物の魔法が見れるなんて。


ベルフェゴールは怪しかったけれど、本当に魔法使いだったんだ。


衝撃が覚めないまま半ば無意識にドアノブを回すけど、びくともしない。

鍵はかかったままのようだ。

仕方なく部屋へ引き返し、カーテンを開ける。

窓ははめ殺しだし、換気口もごく小さなものしか見当たらない。せいぜいこぶし大といったところだろう。


どうやら脱出は無理そうだ。

私はベッドに座って、誰かがやってくるのをおとなしく待つことにした。

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