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エリカ  作者: 笙子
ラカン女王国ー神殿編
14/36

14.でもなんで梅?

ノッカーの年代物らしい重厚な音が響いてすぐに、一人の男性が門を開いた。

30代前半くらいで、薄茶色の髪と水色の目をした男性だ。

修道士なんだろう。引きずるほど長い、黒いローブを着ている。

男性はマルスさんと軽く挨拶を交わした後、いぶかしげに私を見つめた。


マルスさんは男性に向かって帽子を取り、丁重な態度で話し始める。

内容は私のことだろう。話の流れの中で、私を胡散臭そうに見る回数が増えていく。

普段ならむっとするほど不躾な視線だったけれど、今はなんだかいたたまれなくて、私は地面に目をそらした。

いくら若い女でも、森の中から出てきてしかも言葉の通じない外国人じゃ、不審者扱いで当然だ。


それでも話が終わると、男性は軽く頷いた後、私たちを通してくれた。

門前払いされなかったことに少しほっとしてしまう。

ジーナさんに続いて門をくぐると、白い小石を敷き詰めた小路が教会に続いていた。

泥だらけの靴で踏むのがためらわれるほど綺麗な道だ。でももっと綺麗なのは、周りを囲んだ中庭にある花壇だった。


教会のイメージに合わせたのだろうか、雪と見間違うほど白い花が沢山咲いている。

花の色こそ白で統一されているが、種類は多様らしい。茎の長さや葉の形もそれぞれ違っているのが遠目からでもわかる。

一色だけの花壇なんて珍しくて、歩きながらつい見とれてしまう。


ふと教会のそばに立つ背の高い植物に気付いた。

あの植物だけ、なんだか雰囲気が違う。

そう思ってよく見ると、その植物は白い小さな花を沢山つけた、立派な梅だった。

どう見ても外国なのに、なんで梅?

不思議に思ったが、これ以上疑問が増えるのが嫌で無視をする。


普通に考えて教会に梅はミスマッチだけれど、ここでは不思議に調和していた。

この協会は柱が多くて、とても開放的な造りをしている。

そのおかげで梅とも合うんだろう。鐘を除けば教会というよりギリシャの神殿のようだ。



梅のそばを通って手すりのない階段を上り、大きな扉をくぐって室内に入る。

ガラスを使った大きな窓に囲まれた、広いホールだ。

花で飾られた庭に比べて、内装はずっと地味に整えられていた。教会に多く見られるステンドグラスさえない。

私たちをここまで案内した男性は、ジーナさんに向かって数語話しかける。

ジーナさんはほっとした様子で男性の言葉に頷き、私に向かって微笑みかけると、手でついてくるように合図をして歩き出した。


ジーナさんは教会に詳しいらしい。

迷わず通路を進んでいき、小さな扉がずらっと並んだ廊下へたどり着くと、私に部屋へ入るように促した。

扉を開けると、大きな楕円形の窓が目に入る。家具は白いシーツのかかったベッドと、木製のデスクとイス、あとは小さなチェストだけだ。

数日ぶりに見るまともな寝床に感動する。ああ、今日はここで眠りたい。


ベッドの誘惑に屈しそうになった瞬間、ジーナさんがチェストから数枚服を取り出し、渡してくれた。

黒い長袖の刺繍の入った上着、白いシンプルなチュニック、黒いぴったりしたズボン、下着までそろっている。

お礼を言いながら慌てて受け取ると、最後に小さな籠を渡してから数語私に話しかけ、ジーナさんは部屋の外へ出て行ってしまう。

一瞬ぽかんとしてしまったが、多分これに着替えるよう言ったのだろう。

森の中で駆けずり回ったせいでドロドロになった服を籠に入れ、清潔な服に着替えると生まれ変わったような気がした。

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