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*0* 過去の記憶
「英利はお母さんいなくても、平気だよね?」
―――ううん。お母さんいなきゃ、やだよ
「お母さんね、これから英利のお母さんじゃなくなるの。」
―――なんで?
「お父さんがね、会社をクビになったのよ。」
―――カイシャを、クビ?
「お母さんね、お金をくれないお父さんには、もう用がないの。」
―――カイシャをクビになると、お父さんはおかねをくれなくなっちゃうの?
「だからお母さん、お父さんとバイバイしようと思って。」
―――お母さん、どこいっちゃうの?
「英利は、これからもお父さんと暮らしてね。」
―――お母さん!
玄関を開けて、『彼女』は言った。
「アンタも、あのクソオヤジも、大っ嫌い!」
バタンと、ドアが閉まる。
俺はその場に立ち尽くす。
この時、俺は4歳で母さんは、22歳。
・・・もうずっと、昔の話や。