第七翔 〜過大評価と小物臭〜
短いか長いかは個々人の判断にお任せ致します。それではごゆっくりご覧ください。
『永路、どんな感じ?』
「流石はファムだね。初めての僕でも扱い易い、クセが無くてマイルドな感覚だよ」
逆に言えば突出した性能がない、平均的な機体って意味でもある。
10分位、学院のスタジアムを飛んだ感想だ。
「……なあ。両翼のブースター、もうちょっと出力上げられないかな?」
『いいのいいの、そのままで。その機体にはまだ仕掛けがあるんだから』
「仕掛け?」
『にひひ。それは後のお楽しみってヤツで』
「…そうかよ」
『それよりどうすんの?こっちはもう十分にデータ採れたし、まだ時間はあるけど帰還する?』
「うーん、そうだな…」
エナジー残量から見てもまだ余裕は有るけど、初飛びとしてはこんなものだろう。
「じゃあ帰還…」
言いかけてスタジアムの端の方に目が向いた。
「…?」
…二人か?
風迅のメインカメラのズーム機能を使って詳しく見てみる。
「!」
そこには一人の男のFGに言い寄られている、量産機を装着した女の子の姿があった。
しかも女の子の方は明らかに嫌がってるのに、男の方は無理矢理誘っているようだ。
と、業を煮やしたのか男が彼女の腕を無理に掴んだ。
彼女が力任せにそれを振り払うと男は遂に彼女を殴りつけた。
ぷちっ。
「前言撤回、ちょっと用事が出来た」
『えっ。ちょっと永路さん!?どうしたんです』
亜季子ちゃんが皆まで言う前に通信を切る。
そのまま一直線にもめているFGのところへ向かう。
ちょうど男はもう一発、女の子を殴ろうとしているところだった。
「間に合え!」
呟いた瞬間。
ジャキン!と音を立てて左右の翼が二枚ずつ、合計四枚に分かれ、それと同時に機体速度がグンと上昇した。
もちろんいきなりの事だったのでブレーキは間に合わず、僕は体当たりの体で男のFGに突っ込んだ。
「っててて」
「ッテメェ!何しやがる!」
男の怒声が飛んできた。
が、それ以上の声で
「アンタこそ何やってんだ!!」
と言い返す。
「FGってのは女の子殴るために作られた訳じゃねえ!それに!インストーラーとか以前に男のクセに女性に手を挙げるなんて、恥ってモンを知りやがれ!」
まあ、僕も体当たりしたけど。
それは不可抗力ってコトで。
「んだとぉ!テメェ、俺を誰だと思ってんだ!!競翔科三年の期待の星!宮沢一郎様だぞ!!」
「知らねえよ。大体、そう言う自己紹介する奴ってほとんど噛ませ犬的ポジションだろ?」
「〜ッ!!この野郎!ぶっ潰してやる!!」
「ふん、いいぜ!かかって来いよ小物野郎!」
続
く
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