第三翔 〜ポニーテールは甘い罠〜
最初に言っておきます。作者はポニーテールが大好きです。
麻火に報告書作成をお願いして、僕は教室を後にした。
「えっと確か技術科棟は……」
僕が通っている国立翔者養成学院には、3つの科棟が存在する。
僕や麻火が所属している、FGの装着者「インストーラー」を育てる『競翔科』。
FG技術について詳しく学び、FGの技師である「ギアニック」を育成する『技術科』。
FG広報、及びスタジアムの管理や調整などを行う「アドバイザー」を養成する『管理科』。
と言っても別々にカリキュラムをこなしている訳ではなく、午前中は高校課程の授業を全員が受け、午後から所属別に行動する。と言う具合になっている。
因みに僕と麻火は競翔科所属の二年生。ファムは技術科所属の三年生だ。
「お?あれは…」
技術科棟の格納庫に通じる渡り廊下。
そこにはギアニック用作業服を着た、ふさふさのポニーテールの女の子がいた。
「亜季子ちゃん」
「あ、永路さん!お待ちしておりました!」
槍橋 亜季子ちゃん。
技術科所属の一年生にして『ギアニックのホープ』とあだ名されている、期待の新人さんだ。
「永路さんの専用FGは第七格納庫に収容させて頂きました。ご案内しますね」
「ああ、宜しく」
案内されるがまま亜季子ちゃんについて行く。
…それにしても、立派なポニーテールだ。
歩く度に上下に揺れる様は本物のポニーの尻尾みたいで…。
その、何て言うか、モフモフしたくなる。
気が付くと、僕の右手は彼女のポニテにあと数㎝のところまで伸びていた。
多分、亜季子ちゃんが「あ、そうだ」と振り返らなければ、そのまま彼女の髪をモフモフして、『モフモフ先輩』とか『髪フェチ』とか不名誉なあだ名をつけられるところだったに違いない。
「ど、どうしたの?」
伸ばしかけた手をさっと引っ込める。
どうやらバレてないみたいだ。
「はい。あのFGと永路さんのサポートや調整は、これからは私達のラボ『カササギ』で行うことになりました」
技術科には幾つかのグループがあり、それらを『ラボ』と総称している。
『カササギ』はファムがリーダーを務めるラボで、所属メンバーはファムと亜季子ちゃんの他にあと二人の、合計四人から成り立っている。
「そう言う訳で、これからもよろしくお願いします」
ペコリ、とこちらにお辞儀をする亜季子ちゃん。
「あ、ああ。僕の方こそよろしくね」
つられて僕も頭を下げる。
すると彼女は耳元に手を当てて囁いた。
「その…私の髪、触りたかったらいつでもどうぞ。永路さんになら構いませんから…」
……ゑっ?
「ゴ、ゴホン!さ、さあ、行きましょう!ファムさんがお待ちかねですよ!」
言うなり少し小走り気味に走り出した亜季子ちゃん。
……バレてたのね……。
続く。