第二十八翔 ~未知ゆえに誤解あり?~
二年ぶり…だと…!?
何かもう、すんませんっした!
…ここは何処だろう。
確か僕はオーシャンスタジアムでレースをしてて、それから…。
『え……い…じ…』
父さん?
『え……い…じ…』
父さん!?大声で叫ぼうとして、気が付く。
声が、出ない。息が苦しい。
父さん、父さん!
『え……い…じ…』
父さん!
「父さん!」
「わあ!?」
起き上がると、見覚えのない部屋のベッドにいた。
「気が付いた?」
心配そうに僕の顔色を伺うファム。
「ファム…?ここは…」
「ここはオーシャンスタジアムの救護室。憶えてない?アンタ、レースから戻って来るなり気絶しちゃったのよ?」
「気絶って…どのくらい?」
「ものの15分くらいかな?あ、でもまだ安静にしてなよ?」
「15分…?あー…」
そう言われてみれば、確かにそうだった気がする。
確か、最終ターンで曲がろうとしたらランバーズさんが見えて、それでいきなり頭がボーッとし始めて…って!
そうだ、ランバーズさん、トーナメント!
「ファム!トーナメントは!?レースはどうなったんだ!?」
「ちょっ、落ち着きなよ!まだ安静にしてなくちゃ…」
「これが落ち着いていられるか!僕は…ッわあ!?」
「きゃあ!?」
痛ってて『ムニッ』、…ムニッ?
何だ、今のムニッて感覚?
「え、永路、重い…」
「へ?」
今、下からファムの声がしたんだけど…。
おそるおそる視線を降ろしてみると。
「おわあ!?」
ファムに僕が覆い被さる態勢になっていた。ってことはさっきのムニッはまさかファムのお―――。
ガラリ。
「何か物凄い音がしたけど、永路君起きたんス…か…?」
そしてこの最悪のタイミングでお前かよ鈴白!
「あー…えー」
目の前の状況を整理するためか、鈴白は腕を組み考える素振りを見せ、かと思うと次の瞬間には何か閃いたようにポンと手を打った。
「永路君の次の出番はまだ先ッス。お盛んなのは結構ッスけど、取り敢えずそう言うことヤるんなら手早くお願いするッスよ」
んじゃ、お邪魔虫は撤退するッス~、と手を降りながら病室から出ていく鈴白。って!
「うおおい!ちょっと待て鈴白ォ!違う、誤解じゃないけど断じて違うぞ!そういうのじゃないからなあああ!」
僕の必死の訴えはしかしながら、鈴白に届くことなく、むなしく病室内に響き渡ったのであった。
「うぅ…、駄目だ、僕もうお婿にいけない…」
「それはむしろアタシの台詞だと思うんだけど…なんにしてもS.B.W.Mの影響はそこまでないみたいね」
落ち込む僕に対しごもっともなツッコミを入れるファム。
「ってそうだ!ファム、その『しぶうぇむ』って一体何なんだ?いい加減教えてくれよ」
今まで何度か勝手に起動していたあのシステム。ファムのセリフから『S.B.W.M』って言う名前だってのは解ったけど、それ以外はほとんど何も僕は知らされていない。
前に自分で風迅のスペックカタログをチェックしたんだけど、この機能については何処にも記されていなかった。
製作者であるファムがこいつを何らかの理由で隠していることは薄々感じていたんだが、起動してしまった以上は僕にもこれがなんなのか知る権利があるだろう。
「…正直言うとね、アタシもS.B.W.Mについてはよくわかってないのよ」
ところがファムの口から出てきたのは予想の遥か斜め上を行く言葉だった。
「…よくわかってない…?」
思わずファムの言葉をオウム返ししてしまう。
「いや、もちろん性能とかは把握してるよ?ただそれを抜きにしてもわかってないことが多すぎるって言うか…」
「ちょ、ちょいまち!そもそもアレってファムが風迅のExsとして付けたんじゃないのか!?それなのにわからないって!?」
衝撃のカミングアウトに声を荒げる僕。
「うーんと、何処から説明していいものやら…。はじまりはね、風迅の設計、開発に行き詰ってた時に、差出人不明のメールが届いたのがきっかけだったのよ」
そしてファムは語りだした。
僕が知らない、風迅の開発秘話を。
リハビリも兼ねて、今回はここまで。
あと、書き方とか色々変えてます。試行錯誤中ですね、はい。
それでは、また。