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ブレイブ・フェザー!  作者: 斬空狼
第Ⅱ章 ~そうだ、長崎、行こう~
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第二十一翔 〜長崎は平地が少ない〜

お久しぶりの更新です。


今回から『BF!』、新章開幕です。


地元長崎で、永路はどんな目に遭うのでしょうか!?


それでは、本編をご覧ください!

「帰ってきちまった…」


飛行機で1時間ちょっと、そこから市内まで(長崎の空港は未だに長崎市ではなく、隣の市に存在する)バスで再び1時間くらい。


ずっと座っていたので身体中の筋肉が凝り固まっている感じだ。


一つ大きく背伸びをする。



「久し振りだ〜…」


春休みは入学説明会やらなんやらで、結局帰省は出来なかったから、帰って来るのは正月以来と言うことになる。


そう。

ゴールデンウイーク初日。

僕は地元長崎に帰省していた。


…まあ。


「おぉ〜!ホントに山が一杯だ〜!」


悪かったな、ビル群もない地方都市で。


「アレが噂の路面電車ですか!?すごいですね!あんな昔のテクノロジーが今なお現役として扱われているなんて!」


それは褒めてるのか、それとも貶してるのか、亜季子?


「でっけー!何スかあのでっかい鳥居は!ここはアレッスか?チャイナタウンってヤツッスか!?」


ちげーよ、新地中華街だよ鈴白。

その言い方だとマフィアかなんかが出てきそうだ。


「おお!なんか港の方に帆船がたくさん来てるよ!アレ何、永路っち!?」


アレは多分『帆船祭り』だな。

いつも4月後半に開かれる、世界中の帆船が集められ、一般公開される、人気のイベントだ。


…と言うか。


「お前ら、少しは落ち着け!はしゃぐな!静かにしてろ!!」


修学旅行生か、お前らは!!

全く…。


何故僕の帰省に『カササギ』の連中がついてきているのかと言うと。





話は3日前に遡る。






「合同研修、ですか?」


オウム返しに先生に尋ねる。


「合同研修です」


更にオウム返しで答えるトキコ先生。


「実はですね、今度のゴールデンウィークに各国の養成学院の専用FG持ちの代表生が集まって行われる合同研修があるんですけど、我が校の代表枠が一つ分空きが出たんです。本来なら三年生が選出されるはずなんですけど、肝心要の三年生には、すでに選出されている人を除いては、専用機持ちが一人もいないんです」


「そこで僕に白羽の矢が立った、と?」


「その通りです!流石進道君!」


ご褒美にアメちゃんあげます!とポケットからアメを取り出す先生。


差し出された以上はいただいておこう。

受け取った飴は水玉模様の包み紙に入って、しずくの形をしていた。

…飴だけに、雨?


「どうします?参加するなら手続きとか宿泊先は学院側が手配しときますけど?」


再度参加の是非を問う先生。


…まあ、問われる前から答えは決まってる。


「出ます。合同研修、僕も参加します」


どの道長崎には帰省するか迷ってた訳だし、実家に帰れてFGの訓練も兼ねれるなら一石二鳥、参加しない手はない。


とまあ、実に僕らしい安直な事を考えていたら。


「「「「やったぁ!!」」」」


「な!?」


いきなり事務室の扉が開かれ、毎度お馴染みの4人(言うまでもなくカササギの連中だ)がなだれ込んで来やがった。


「お、お前ら何やってんだ!?」


思わず声を張り上げてしまう。


「長崎だ〜!チャンポンだ〜!カステラだ〜!枇杷だ〜!」


「いえいえ!長崎は魚介類も美味と聞きますよ!」


「わかってないね〜!角煮まんじゅうにぶたまんこそ至高だよ!」


「否!隠れた名物、トルコライスッス!」


だ、ダメだコイツら…!

食べ物の事しか頭にないのか!?


「大丈夫だよ!ちゃんと永路っちの家を拝見することも忘れてないから!」


「一体何がどう大丈夫なのか、三文字以内に説明してくれ鈴奈。大体、僕の家って言ったって、あくまで引き取られた先の旅館だし…」


「「「「…え?」」」」


…え?

…あ。

あああああああ!!!!!

しまったああああああああああ!!!!!


「「「「りょ・か・んんんん!!!!!????」」」」


つい口が滑ってしまった!

進道永路、人生最大のミス!!

この一年中脳内お祭り野郎たちにそんな情報与えたら、食いつかずにはいられないに決まってるじゃないか!


「宿泊先、けってー!!」


「マジっすか永路君!」


「おっんせん、おんせん~!」


「会席料理!いや長崎だから卓袱しっぽく料理食べ放題じゃね!?」


あ~あ~あ~あ~!!

早くも収拾つかない事態になってるよこれ!


「ちょ、ちょっと待てよ!何でお前たちがついて行くのが確定してるみたいになってんだ!」


無駄だと思いつつ、あんまりはしゃぎすぎな連中に対し、必死の抗議を試みる。


「当ったり前でしょ。温泉の事を差し引いても、研修って事はどうせ風迅飛ばすんだし、アタシらがついて行かなきゃ何かあった時、メンテも出来ないじゃない」


ぐ…!

確かにその通りだ。

珍しくまともな意見が、ファムの口から出た。


「そうッスよ永路君。それにどっちみちシロ達だってついていくことになってたんスから」


…は?


「資料の一番最初のページ、上から三行目の参加資格の項目をよく見てみるッス」


言われるがまま指定された箇所を凝視してみると。


『…尚、この研修で使用する専用FGの整備・調整の為、やむを得ない場合を除き、必ず専属のギアニックが同行すること』


…マジで?





と言う訳で、現在に至る。


「ところで、永路さんの家ってここからどれくらいなんですか?」


興奮さめやらぬ目のまま、僕に尋ねる亜季子。


「ん〜、アレに乗って十五分くらいかかるかな?」


指差したのは路面電車。

長崎の主な観光地に行くためには、必要不可欠の交通手段だ。

速度は遅く座席もそんなに多くはないが、ゆっくり長崎の街並みを見ることが出来るので、個人的にはとても気に入っている。


「おお!乗れるんですか、路面電車!?」


いつになく目を輝かせる亜季子。

どんだけ楽しみなんだよ。


まぁ、もう少し待たなきゃいけないんだが…。


「おぉう…待たせたのう進道…」


あ、来た。






「うっぷ…」


紹介しよう。


今にもリバースしそうなこの人こそ今回の研修に同行する、ラボグループ『リュウキンカ』のリーダー、久宝くほう 歩生あゆむさん。

競翔科の三年生で唯一の専用機の所有者だ。

そして見ての通り、乗り物に弱いらしい。

飛行機とバスのコンボで、降車直後に近くのトイレでリバースしていたので登場と紹介が遅れてしまった。


「ごめんね、ファム。ウチのお馬鹿さんが迷惑かけちゃって…」


で、こっちが久宝さんのFGを設計・開発した張本人でファムのルームメイトの技術科3年、ルシーヌ=アビー先輩。

久宝さん、ファムとは親友の間柄らしい。


「うぉ!ちょっ!久宝さん、こっちにリバースとかマジ勘弁ですよ!?」


『リュウキンカ』のメンバーにして、技術科二年生、椎木しいのき=バスカヴィル=ゆう

イギリス人の母親と日本人の父親の間に生まれたハーフで、金髪に黒い瞳と、その出自が良く表れている。


「う…久宝見てたら、なんか俺も気分が悪くなってきたぜ…」


同じく『リュウキンカ』メンバーにして久宝さん、アビー先輩と同学年。

管理科で『リュウキンカ』の正式専属斡旋人アドバイザーたちばな 立花りっかさん。

本来なら一つのラボに必ず一人は橘さんみたいな斡旋人がいる。

研修とかレースに参加するときは、大きなものを除いては、斡旋人がその話を持ってくるのがFG界の掟と言うか、しきたりみたいなものだ。


…つまり斡旋人がいないままでは、大会に出ることはおろか、一般戦にでることすらかなわない。

早いとこ、ウチのラボも斡旋人つけないとな…。


以上4人が『リュウキンカ』の面々だ。

『カササギ』と違って少人数だが、それでも実力は僕らの遥か上をいっている。

実際、今でこそ再度リバース寸前だが、久宝さんなんて4月の頭の時点で卒業認可試験をクリアしてるし、その後も橘さんの斡旋の手腕もあってか、プロに混じって一般戦に出場しているらしい。


「…うぐぅっ…う…っ…」


「ちょっ、あーちゃん、ホントに大丈夫!?」


「あーちゃんって…呼ぶなや…ぐうっ…。…つかもう……ムリ」


…この様子だけ見ていれば、俄かには信じがたい話だけど。






電車に揺られること、およそ15分(その間に久宝さんは5回ほどリバースしかけた)。


「「いらっしゃいませ!照旗亭しょうきていへようこそ!!」」


僕らは研修中の宿泊先で、僕の実家でもある旅館『照旗亭』に到着した。


「遠路はるばるご苦労様です。私、照旗亭の主、進道しんどう 仙路せんじと申します。いつも永路がお世話になっております」


「妻の貴音たかねです。以後お見知りおきを」


出迎えてくれた二人―――叔父さんの仙路さんと叔母さんの貴音さん―――が笑顔で挨拶をする。

父さんが死んで、母親の居ない僕を引き取り育ててくれたのがこの人たち。

叔父さんたちへの恩返しも、僕がFG選手を目指す一因だ。


「長旅でお疲れでしょう。おーい、甲路こうじ蒼乃あおの~」


「「はーい」」


叔父さんの呼ぶ声に応え奥から二人の子供が姿を現した。


「進道甲路、中2です。いつもえーちゃんがお世話になってます」


「進道蒼乃、小学4年です!おかえり、えー兄ちゃん!」


一応弟なのに、僕を『えーちゃん』呼ばわりする方が、義弟の甲路。

お客のファム達そっちのけで、律儀にも『おかえり』を言ってくれた方が、義妹の蒼乃。


この4人と、仲居さん6人、板前さん8人の計18人で『照旗亭』を経営している。


「じゃあ、男性の皆さんは自分についてきてください。お部屋までご案内いたします」


「お姉ちゃんたちは蒼乃についてきてね~♪」


言われるがまま、それぞれ挨拶もまばらに甲路と蒼乃に付いていく。

皆を見送り、僕も自分の部屋へ戻ることにした。


「じゃあ叔父さん、またしばらく厄介になるよ」


一応家族なのだが、義理の息子と言う立場上、何となくいちいち断りを入れてしまう。


「おう!気にすんな!」


しかし叔父さんは豪放磊落な笑みを浮かべ、僕を迎え入れてくれた。

あの日と同じように。


「おかえり!!」


と。







「って何じゃこりゃああああ!!!」


部屋に戻った僕の第一声は、机の上に置いてあったガン〇ラ(最近発売されたばかりのクロスボー〇ガン〇ムX1フルクロスのMG)の変わり果てた姿を見ての悲鳴だった。


具体的にはフルクロスパーツがところどころなくなっていたり、特徴的な胸のスカルが半分くらい欠けていたり、X型の可動式スラスターなんて下半分がもげてて、これじゃあクロスボーンじゃなくて、V2だよ!


僕、V2はまだ作ったことないよ!


しかもユニコーンのブレードアンテナまで無くなっちゃてるし!

何かユニコーンモードだと、ジ〇・カスタムとちょっと区別つかなくなっちゃってるよ!


その他もアッガ〇のクローだったり、∀の髭だったりとちょくちょく破損が見られる。


お、おのれ…一体誰がこんなことを…!!


「ワン!」


怒りに打ち震える僕の足元に、ウチの看板犬の、幸 (メスのミニチュアダックスフント)が申し訳なさそうに近寄ってきた。


「…まさか…?」


まさか!!??


「あ、永路。お部屋、掃除してる時に幸が入り込んで暴れちゃったのよ。一応物は元の位置に戻しておいたけど、大丈夫?」


階下からする叔母さんの声を聞いて、僕の疑念は確信へと変わった。


「永路?」


返事がなかったのを不思議に思ってか、もう一度僕の名前を呼ぶ叔母さん。


「あぁ、うん…大丈夫…ごめん、ありがとう…」


自分のものとは思えないほど低いトーンで声が出た。

ハハハハ…。

この惨状が犬の仕業って…。

へなへなと力が抜け、その場に座り込む。








取り敢えず、やり場のない怒りを鎮めるために…。


「風呂、入ろう…」



パンパカパーン!


トキ「くぁwせdrftgyふじこlp!『教えて!答えて!トキコ先生』のお時間です!今回はFGの動力源である『エナジー』について説明いたします!」


トキ「第十六翔で進道君が『エナジーの精製元は太陽光や風力』と言った旨の発言をしていますが、厳密には少し違います。進道君、後で補修です」


トキ「実際には太陽光・風力発電で得られた電力と、新エネルギー『ハイドラ』とのハイブリッドです」


トキ「『ハイドラ』はDMの性能を100%引き出せるわけなんですけれども、微量の毒性を持っています。これを何とか出来ないかと考えた仙石技研は、ギリギリDMの性能を引き出せて、かつ『ハイドラ』の毒性を抑えるために実験に実験を重ね、漸く電気エネルギーとの混合に成功したと言う訳なのです。不幸中の幸いは、必要な電気量が太陽光・風力発電でまかなえる程度だったことでしょう」


トキ「科学の発展に犠牲はつきもの、なんて言いますが、科学者のたゆまぬ努力と汗の結晶こそ、今日の、そして未来の暮らしを支えるものなんでしょうね~(遠い目)」


トキ「さて、今回はここまでにしましょう。引き続き皆様からのご意見やご質問等をお待ちしております」


トキ「それではここまで読んでくださった読者の皆様、この場をお借りして感謝申し上げます!」


トキ&斬鉄犬「本当にありがとうございます!!」


それでは、駄犬めはこれにて失礼いたします。



斬           鉄

    (U^ω^)

      犬

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