番外編 〜旭川麻火的視点〜
今回は、前に活動報告に書いた、永路の親友である旭川麻火くんのスピンオフです。
あくまで番外編なので、読まなくても本編には支障はありませんが、読んでいただければ、もっと本編を楽しめると思います。
それではごゆっくりとご覧くださいませ。
ゆっくりしていってね!
「ま、こんなモンだろ」
俺こと旭川麻火は呟く。
本来、親友の進道永路が書くはずの報告書。
しかし、アイツは忙しそうだったので、代わりに俺が書いてやったと言う訳だ。
と、教室のドアが開いた。
永路か?
「あ、旭川くん、まだいたの?」
だが俺の予想に反して、そこにいたのは御上穂。俺達のクラスの委員長である。
眼鏡に黒髪ロングの、いかにも優等生って感じの女子だ。
「ああ、ちょっと野暮用でね。御上こそどうした?」
俺は御上に問い掛けた。
「自分も野暮用。と言うか教室の鍵閉め」
ああ、成程。
「悪いけど、少し待っててもらえないか?多分、永路のヤツが戻って来ると思うから」
「え?進道くんもまだ帰ってないの?」
「専用機の調整だとさ。管理科に連絡行ってないのか?」
御上は俺や永路と違い、管理科に所属している。
しかも管理科は常に人手不足の為に、在学中から『アドバイザー』として仕事をこなしていかなくてはならない。
学院スタジアムの調整や生徒のスケジュール確認も管理科の仕事の一つである。
「うーん、技術科のラボの『カササギ』がスタジアムの使用許可を貰いに来てたけどそれかな?」
「『カササギ』って確か、ジルサンダー先輩のラボだっけか。じゃあそれだな」
つーかアイツ、スタジアム使うって。
いきなり飛ぶ気かよ。
厄介事に巻き込まれてなきゃいいが。
「…それにしても二人とも仲良いよね」
「永路とジルサンダー先輩か?まああの二人は幼馴染みだからな」
ジルサンダー先輩の方が一つ年上だから、仲良しと言うより姉弟みたいなものかもしれん。
「いや、そっちじゃなくて進道くんと旭川くんのこと」
あ、俺達の方か。
「そりゃあまあ、俺と永路も幼馴染みだしな」
「!?そうなの!!?」
なっ!?いきなりがっついた!?
「あ、ああ。中学は別だったけどな」
ここに入学してるって知った時はマジで驚いたっけ。
…アイツ、親父さんのこと、まだ引きずってんのかな…。
「…永×麻…。ふふふ…」
「…何か言ったか?」
「あ、いや別に何にも!」
「…ならいいが」
その割にはえらい慌て様だな。
まあ、御上が何でもないと言うのなら何でもないのだろう。
「さてっと」
席を立ち、報告書を永路の席において教室を出ようとする。
「俺はもう寮に戻るけど、御上はどうする?永路には俺から教室閉めるように言っとくけど」
「いや、自分はここで進道くんを待っておくよ」
『インスピレーションも湧いたし(ボソッ)』
……何か呟いた気がするがスルーした。
「そうか。じゃ、お先に」
ヒラヒラと手を振りながら教室を出ようとすると。
「あ、待って旭川くん」
御上が俺を呼び止めた。
「?どうした」
「その、良かったら今晩一緒に夕食でもどうかな?」
…あ〜。これがいわゆる死亡フラグってヤツか。
「悪い。晩飯は永路におごってもらう予定なんだ」
よし!これで死亡フラグ回避成功だ!流石俺!!
「そう、なんだ。じゃあやっぱりいいや…」
…あり?何この反応。
もしかして俺ってば、違うフラグを回避しちゃった?
「あ、ああ。でもまた今度、別の日にならいいけど?」
「ホントに!?」
またまたがっつく御上。
この人の食いつき所が本当にわからねぇ。
「じゃあじゃあ!」
ん!といって小指を差し出す。
「ん?…ああ、そういうこと」
一瞬、訳が解らなかったが、すぐに理解した。
子どもかよと思いつつ、同じように俺も小指を出し、御上の指に絡める。
「「指切りゲンマン、嘘付いたら「剣山」「針千本」飲〜ます。指切った」」
…あれ?今、御上、「剣山」って言わなかった?
剣山ってアレだよね?生け花で使う、針が一杯あるヤツだよね?
何で子どもっぽい約束の仕方で、一歩使い方を誤れば凶器と化す物体の名前が出て来るんだ御上?
冗談だよね?
冗談に決まってますよね御上さん!?
「ふふふっ。約束だよ?破ったら剣山飲ますからね?」
目は口ほどに物を言うってことわざ、あるだろ。アレ、本当だわ。
結局。
俺は死亡フラグを完全には回避出来なかったようでしたとさ。
番
外
編
終
わ
り
如何だったでしょうか?楽しんでいただけたら幸いです。
斬鉄犬は結構こういうスピンオフものを書くのが好きです。今回も楽しく書けました。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
また次回でお会いしましょう。
それでは。
斬
鉄
犬