表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

エピソード7 東門

夕方になると 道が硬くなった

足元の石が 柔らかい土に代わった

それは一つだけを意味していた

この近くに 人が住んでいる


セイガが先を行き 時おり掌を地面に落とした

まるで 地面の呼吸を聞くみたいに

魔術の糸はもう出さない

それでも 進む方向は迷わない


リオルは茂みに消えては戻る

最初からいなかったみたいに

余計な質問はしない

短い言葉だけを持ち帰り それが地図になる


- 壁がある

- 低い

- 小さな町だ

- 門に見張りがいる


ランゼが盾のベルトを締め直す


- 集団で見られたら こいつらは俺たちを脅威だと思う

- そうなったら 水ですら手に入らない


後ろで誰かが唾を飲み込む

飢えは人を愚かにし 喉の渇きは人を荒くする

ランゼはそれを見ていた


ショーンゴは黙って歩いていた

彼の存在は落ち着かせない

締めつける

そばにいるだけで 世界が思い出すみたいに

どんな間違いも 死に変わると


丘の向こうに門が見えた瞬間

後ろの数人が固まった

壁は低い

それでも壁だ

ここ数日 彼らが持てなかったもの


門には本当に見張りがいた

二人の衛兵

本当の戦争は知らない目

それでも その影を恐れることだけは覚えている目


リオルがすぐ言った


- 俺が先に行く

- 一人で

- 手に武器は持たない

- 集団が見えたら 奴らは聞かない


ランゼは反対しようとした

だがショーンゴが ほんの少し頷いた

それで十分だった


リオルは門へ向かった

歩幅は崩れない

掌は開いたまま


壁の上から声が飛ぶ


- 止まれ

- 何者だ


リオルは片手を上げた


- 旅人だ

- 丘の向こうに 行き場のない連中がいる

- 水と 屋根の下の一夜が必要だ

- 争いに来たんじゃない


衛兵の一人が鼻で笑う


- みんなそう言う


リオルは気にしない


- 騙すつもりなら もっと綺麗に言う

- 俺はただ言う

- 俺たちには 町を奪う力もない

- その意味もない

- 井戸と壁を 一晩だけ貸してほしい


衛兵たちは目を合わせた

信じてはいない

だが見ている

リオルは震えていない

貪欲に喉を鳴らしてもいない

飢えた者にしては それが不自然だった


迷っている間に 門の脇から年上の男が出てきた

白髪だが まだ骨が強い

漂うのは英雄の匂いじゃない

警備の経験の匂いだ


- 何人だ


リオルは嘘をつかない


- 数十

- 軍じゃない

- 残りだ


白髪の男は長く見て

それから言った


- 外れへ行け

- 古い倉庫がある

- 夜明けまでだ

- 町の中に入るな

- 一人でも略奪を始めたら 門を閉じて お前らを外に残す


リオルが頷く


- 受ける


門が少し開いた

群れは一人ずつ入った

ゆっくり

一歩ごとに 許しが必要みたいに


ショーンゴが門をくぐった時

衛兵の一人が思わず身を震わせた

この石の隙間だけ 空気が重くなったみたいに

石が彼を覚えたみたいに


ショーンゴは人を見ない

町を見る

守れるものか 壊せるものかを量るみたいに


外れの倉庫は暗い

古い穀物と埃の匂い

だが壁がある

水がある


ミロスがすぐ数え始めた


- 水袋はいくつ

人はいくつ

一人あたり何口

そうしないと 夜の争いは外じゃなくて 中で始まる


ランゼは黙って 二人を入口に置いた

町の見張りが敵だからじゃない

飢えと恐怖は いつも扉を探すからだ


セイガは膝をつき 地面に触れた

薄く ほとんど聞こえないほど

そして リオルにだけ届く声で囁いた


- この倉庫の下に 何かある

空洞だ

古い坑道か 通路


リオルが固まる


- 確かか


セイガが小さく頷く


- 地面の響きが違う

下が空だって分かる


リオルはゆっくり息を吐いた

そして今夜 初めて 本物の警戒が目に宿った


一晩だけ貸す倉庫

その下の空洞

それは 逃げ道か

叫びもなく閉じる罠か


リオルは闇の中で立つショーンゴを見て 思った


今夜 誰かが来る

問題は どっち側からだ

ここまで読んでくれてありがとうございます

次も少しずつ進んでいきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ