エピソード7 東門
夕方になると 道が硬くなった
足元の石が 柔らかい土に代わった
それは一つだけを意味していた
この近くに 人が住んでいる
セイガが先を行き 時おり掌を地面に落とした
まるで 地面の呼吸を聞くみたいに
魔術の糸はもう出さない
それでも 進む方向は迷わない
リオルは茂みに消えては戻る
最初からいなかったみたいに
余計な質問はしない
短い言葉だけを持ち帰り それが地図になる
- 壁がある
- 低い
- 小さな町だ
- 門に見張りがいる
ランゼが盾のベルトを締め直す
- 集団で見られたら こいつらは俺たちを脅威だと思う
- そうなったら 水ですら手に入らない
後ろで誰かが唾を飲み込む
飢えは人を愚かにし 喉の渇きは人を荒くする
ランゼはそれを見ていた
ショーンゴは黙って歩いていた
彼の存在は落ち着かせない
締めつける
そばにいるだけで 世界が思い出すみたいに
どんな間違いも 死に変わると
丘の向こうに門が見えた瞬間
後ろの数人が固まった
壁は低い
それでも壁だ
ここ数日 彼らが持てなかったもの
門には本当に見張りがいた
二人の衛兵
弓
槍
本当の戦争は知らない目
それでも その影を恐れることだけは覚えている目
リオルがすぐ言った
- 俺が先に行く
- 一人で
- 手に武器は持たない
- 集団が見えたら 奴らは聞かない
ランゼは反対しようとした
だがショーンゴが ほんの少し頷いた
それで十分だった
リオルは門へ向かった
歩幅は崩れない
掌は開いたまま
壁の上から声が飛ぶ
- 止まれ
- 何者だ
リオルは片手を上げた
- 旅人だ
- 丘の向こうに 行き場のない連中がいる
- 水と 屋根の下の一夜が必要だ
- 争いに来たんじゃない
衛兵の一人が鼻で笑う
- みんなそう言う
リオルは気にしない
- 騙すつもりなら もっと綺麗に言う
- 俺はただ言う
- 俺たちには 町を奪う力もない
- その意味もない
- 井戸と壁を 一晩だけ貸してほしい
衛兵たちは目を合わせた
信じてはいない
だが見ている
リオルは震えていない
貪欲に喉を鳴らしてもいない
飢えた者にしては それが不自然だった
迷っている間に 門の脇から年上の男が出てきた
白髪だが まだ骨が強い
漂うのは英雄の匂いじゃない
警備の経験の匂いだ
- 何人だ
リオルは嘘をつかない
- 数十
- 軍じゃない
- 残りだ
白髪の男は長く見て
それから言った
- 外れへ行け
- 古い倉庫がある
- 夜明けまでだ
- 町の中に入るな
- 一人でも略奪を始めたら 門を閉じて お前らを外に残す
リオルが頷く
- 受ける
門が少し開いた
群れは一人ずつ入った
ゆっくり
一歩ごとに 許しが必要みたいに
ショーンゴが門をくぐった時
衛兵の一人が思わず身を震わせた
この石の隙間だけ 空気が重くなったみたいに
石が彼を覚えたみたいに
ショーンゴは人を見ない
町を見る
守れるものか 壊せるものかを量るみたいに
外れの倉庫は暗い
古い穀物と埃の匂い
だが壁がある
水がある
ミロスがすぐ数え始めた
- 水袋はいくつ
人はいくつ
一人あたり何口
そうしないと 夜の争いは外じゃなくて 中で始まる
ランゼは黙って 二人を入口に置いた
町の見張りが敵だからじゃない
飢えと恐怖は いつも扉を探すからだ
セイガは膝をつき 地面に触れた
薄く ほとんど聞こえないほど
そして リオルにだけ届く声で囁いた
- この倉庫の下に 何かある
空洞だ
古い坑道か 通路
リオルが固まる
- 確かか
セイガが小さく頷く
- 地面の響きが違う
下が空だって分かる
リオルはゆっくり息を吐いた
そして今夜 初めて 本物の警戒が目に宿った
一晩だけ貸す倉庫
その下の空洞
それは 逃げ道か
叫びもなく閉じる罠か
リオルは闇の中で立つショーンゴを見て 思った
今夜 誰かが来る
問題は どっち側からだ
ここまで読んでくれてありがとうございます
次も少しずつ進んでいきます




