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エピソード6 出会い

彼らは夜明け前に歩き出した

止まったら 灰にまた追いつかれるとでも恐れているみたいに


背後には廃墟が残る

昨日まで街だったもの

今日は声のない場所になっていた


ショーンゴが先頭を歩く

誰かが命じたからじゃない

そうなってしまっただけだ


彼の影は 草の上を 本来より長く伸びた

時おり 空気が少しだけ濃くなる

世界がまだ覚えているみたいに

彼が軍をへし折ったあの瞬間を


後ろを歩くのは ばらばらの者たち

隊を失った兵

急に自分の手を恥じた略奪者

残ったのは恐怖だけの生存者

そして もう逃げたくないだけの数人


長い間 誰も口を開かなかった

だが ひび割れた盾を持つ男が

重い決断のあとみたいに息を吐き

言葉を出した


- 一緒に行くなら 俺たちは自分たちが誰かを知るべきだ

- そうしないと 最初の夜で引き裂かれる

- 敵じゃない

混乱だ


男は拳で胸を叩いた


- ランゼ

- 昔は隊にいた

- 今はただ 後ろの連中が獣にならないようにしたい


いくつかの視線が男に向く

誰かが頷き

誰かは歯を食いしばる

だが ランゼという名が 足場になった


横から別の声がした

痩せた男で 印のない外套をまとっている

歩き方が軽い

道がずっと馴染みだったみたいに


- リオル

- 俺は道と人が見える

- 水のある場所が必要なら 俺が見つける


ランゼは疑うように見たが 何も言わなかった

役に立つのは明らかだったからだ


三人目は無口で 目がぶれない

袋を運ぶ手つきが慎重すぎる

まるで中身が金貨みたいに

数歩のあと 短く言った


- ミロス

- 俺は数を数える

- 食い物 水 借り 言葉

- 秩序に形が必要なら 俺がやる


ランゼが掠れた笑みを漏らす


- 秩序は空気みたいに必要だ


さらにもう一人が並んで歩いていた

目立たない

だが口を開いた瞬間 声が落ち着きすぎていた

生き残りにしては 整いすぎている


- セイガ

- 伝令役ができる

- それと 道の魔術を少し知ってる


ランゼが目を細める


- 道の魔術


セイガが掌を上げる

指先に細い光の糸が生まれた ほとんど見えない

それは照らさない

骨で感じるみたいに 方向だけを示す

糸は低地のほうへ引かれていく


- あっちに水がある

- 川じゃない

でも泉だ

- 地面が生きてると 俺は分かる


リオルが小さく鼻で笑った


- 便利だな


ランゼがもっと聞こうとした その時

ショーンゴがふいに立ち止まった

セイガの指先の光の糸が揺れる

まるで誰かの指が触れたみたいに


空気が重くなる

急じゃない

ただ 胸が少し狭くなるように


ショーンゴが半身だけ振り向く

短い視線

だが 叫びより強い


- 魔術は必要な時だけ見せろ

- 証明のためじゃない

- 脅すためでもない


セイガはすぐ掌を下ろした

糸は最初から無かったみたいに消えた


ランゼは背中に冷たさが走るのを感じた

魔術が怖いんじゃない

ショーンゴが視線ひとつで 空間ごと押さえつけられることが


ランゼは考えをまとめ

ずっと空中にぶら下がっていた言葉を口にした


- 全部言う必要はない

- でも一つだけ

- 静けさが残らなくなった時 俺たちはお前をどう呼べばいい


ショーンゴは数歩 黙った

その言葉を渡す価値があるのか

決めているみたいに


それから 小さく

近くの者だけに届く声で言った


- ショーンゴ


命令でも

演説でもない

ただ 自分に確認したみたいだった


リオルは聞いても繰り返さない

ミロスは聞いて覚える

セイガは口元だけ ほんの一瞬笑った

誰も本当に笑ったのか確信できないほど速く


ランゼが頷く


- よし

- じゃあこうだ

- セイガが水へ導く

- リオルが前を見る

- ミロスが残りを数える

- 俺が人をつなぐ 崩れないように


ランゼは後ろを歩く者たちを見た


- お前ら

- ショーンゴについて行きたいなら 群れじゃなくて

- まだ生き直せる者として歩け


誰かが小さく同意を漏らし

誰かは目を落とす

だが 誰も言い返さなかった


背中には灰がある

前には 初めて方向が生まれた


セイガは歩きながら 黙って地面を感じ取る

リオルは時おり茂みに消えて 影みたいに戻ってくる

ミロスはもう水袋と配分を数え始め

ランゼはようやく 息ができた

意味のある仕事ができたみたいに


夕方までに 集落のある道へ出るはずだった

小さい

貧しい

だが井戸があり 壁がある


その想像が現実になった瞬間

ショーンゴは空気の中に かすかな反響を感じた

世界が自分から 次の試練を差し出すみたいに


水と壁がある場所には

必ず 夜に取りに来る者がいる

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