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エピソード5 灰はまだ息をしている

灰はまだ息をしていた

熱は消えていない

夜は廃墟にしがみつき まるで起きたことを手放したくないみたいだった


ショーンゴは まだそこに立っていた

昨日 鋼の雪崩を止めた場所

他人の恐怖が逃げで終わった場所

そして 自分の恐怖には まだ決めさせていない場所


風が灰を地面に転がしていく

動いているのは それだけだった


闇のどこかで梁がぱきりと折れた

瓦礫の奥から短い叫びが飛び出す

生きている者がいる

まだ逃げきれていない者

逃げられなかった者


ショーンゴは急がなかった

走らない

称賛も探さない

ただ 一歩踏み出した


そして もう一歩


壁の崩れた穴の前で止まり

中をのぞく


そこに動く影があった

もう一つ

弱く

怯え

煙で息が詰まっている


誰かが誰かを引っ張り出そうとしていた

指が石の上を滑る

力が足りない


ショーンゴは黙って身を低くし

石板の縁をつかみ

持ち上げた


石はすぐには屈しない

だが 屈した


中にいた者たちは固まった

誰も礼は言わない

誰も言えるはずがない


彼らはショーンゴを見た

一動きで自分たちを終わらせられるとでも言うように

昨日 門の前で全てを終わらせたのと同じように


ショーンゴは一歩退き 道を空けた

それだけで 彼らは生を選んだ

這い出してくる

一人が倒れ もう一人が支える

灰まみれの顔 空ろな目


背後の高みで 人影が現れた

最初は一つ

次に二つ

そしてまた


軍じゃない

民衆でもない

ただ 去れなかった者たち

そして 去りたくなかった者たち


彼らは距離を保った

大地そのものが境界で それを越えるのが怖いみたいに


ショーンゴは顔を上げた


闇に立つ者の中に ひび割れた盾の戦士がいた

その隣に 印のない外套をまとった者

さらに 奥には 死体の野を見て 何が持っていけるか測っているような二人


略奪者

生き残り

旗のない戦士

全部が一つに混ざり

全員が同じように黙っていた


そのうちの一人が ついに踏み出した

一歩前へ

指は短刀の柄を握っている それでも短刀で何も変わらないことは分かっている


- お前

お前が一人で やったのか


ショーンゴは答えない


声は続いた さっきより低く


- 逃げた

王が逃げた

兵が逃げた

みんな逃げた


言葉を飲み込む まるで喉を切るみたいに


- それでも お前は残った


ショーンゴはまっすぐ見た

見下しもない

侮蔑もない

人間ではなく 選択を見ているみたいに


その時 背後で誰かが動いた

一つの影が死体の野へ走り出す

速く

貪欲に

手が死者へ伸びる


- 触るな


ショーンゴの声は短い

低い

だが静けさの中では それが境界線になった


そいつは固まった

苛立って振り向く


- 死んでる

もうどうでもいいだろ

ここには武器がある

鎧がある

何もかもある


ショーンゴは声を上げない


- 獣みたいに生きたいなら

一人で生きろ



最初に来た男が手を下ろした

短刀はもう脅しに見えない

ただ 何かを握っていないと落ち着かない癖みたいだった


- お前は奪わない

祝わない

喜びもしない


目が細くなる


- なら 何のためだ


ショーンゴはすぐには答えなかった


宮殿の地図を思い出す

王の目

命令の形をした恐怖

そして 答えになった灰


- 俺は逃げない


沈黙が落ちた

穴みたいに その間に


闇の中で 誰かが囁いた

世界に聞こえるのが怖いみたいに


- 本当に 逃げないんだ


瓦礫から さらに人が出てくる

黙って

疲れ切って

怒って

怯えて


声のない涙を流す者がいる

ショーンゴを憎む目もある

彼自身ではない

彼が見せたものを


残れたはずだということ

そして 自分たちは残らなかったということ


朝になり 煙が薄くなった

世界が輪郭を取り戻す

そして 問題も姿を現した


食べ物

どこへ行く

誰が導く

誰が責任を負う


誰も口にはしない

だが 全員が同じことを考えていた


これから どうする


ひび割れた盾の戦士が一歩進み

他より近くに立ち

武器を地面へ 切っ先を下ろして置いた


降伏じゃない

印だ


- お前が行くなら

俺たちは お前について行く


ショーンゴはすぐには答えなかった


廃墟を見る

灰を見る

生き残った者を見る

そして 虚ろさを感じたくなくて また略奪者に戻ろうとする者を見る


それから 東へ続く道のほうへ 一歩進んだ


命令は言わない


それで十分だった


一人がついて行く

次に二人

そしてまた


誓いの言葉はない

王国とも呼ばない

帝国とも呼ばない


今は ただ一つだけだった


逃げない者の背中へ向かう 動き

読んでくれてありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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