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エピソード4 残った者

さらに三年が過ぎた


彼は もう世界から逃げなかった

だが 世界の中に居場所を探しもしなかった


戦争のほうが 彼を見つけた


小さな部隊

名声はない

英雄もいない


彼は黙って加わり

同じように黙って残った


何のために戦うのか 彼は問わなかった

なぜ残るのか 彼は説明しなかった


ただ 戦争だけが 唯一の場所だった

そこでは 彼は最初から追い払われなかった


彼の力は すぐに明らかになった

派手ではない

見せびらかすものでもない


効率的だった


他の者が仲間を失う場所で

彼が失ったのは 時間だけだった


やがて 彼の言葉を聞くようになった

次に 彼の判断を待つようになった


そうして彼は

階級を持つ者たちの近くに立つようになった


呼び名は自然に生まれた

闇の魔術師


彼は それを受け入れもしない

拒みもしない


彼らが仕える王国は 若かった

新しい王は まだ本当の意味で王になりきれていなかった


周辺国は それを感じ取った


敵軍は より大きく

より経験豊富で

そして自信に満ちていた


王宮の評議会には 恐怖が満ちていた


将軍たちは早口で

言葉が乱れていた


- 奴らは二万を超えている

我々は五千もいない


- ここに残れば死ぬ

引けば 軍の核は守れる


王は黙っていた

指は肘掛けを握りしめ

地図を見つめたまま そこに答えがあるかのようだった


やがて 王は闇のほうを見た


- お前は

どう思う


闇は すぐには答えなかった


彼が見ていたのは王ではない

まるで宮殿の壁の向こうを見通すように


- 都は守れる

奴らのテンポを折ればいい

俺が先に出る

先鋒を止める

お前たちは門を閉じ 陣形を保て

せめて一日だけでいい


広間に沈黙が落ちた


将軍たちは反論しなかった

ただ 信じなかった


王はゆっくり息を吸い

同じくらいゆっくり吐いた


- お前は まるで簡単だと言う

一人で止められるみたいに


闇は黙った


王は視線を落とした


- もしお前が間違えれば

都は我々ごと滅びる

そして俺も それと一緒に死ぬ


もう一秒の沈黙


王は顔を上げた


- だめだ

俺は許さない

退く

今すぐだ

これは命令だ


それは命令ではなかった

恐怖だった


評議会は すぐに終わった


広間が空になっても

闇は一人 残っていた


彼は立っていた

怒りもなく

失望もない


ただ 明瞭さだけがあった


翌日 都は燃えた


軍は消えていた

最初から存在しなかったみたいに


人々は逃げた

行ける場所へ それぞれに


闇は 一人で門の前に出た


目の前には 鋼の雪崩


彼は叫ばない

挑発もしない


ただ 一歩 前へ出た


魔術は すぐには爆ぜなかった

最初は圧力

次に破断


大地は裂け

空気が悲鳴を上げた


彼が望んだのは テンポを折ることだけ

たった一日を奪うことだけ

都が門を閉じ 耐えきるための一日


だが 雪崩は止まらなかった


彼は死者を数えなかった


身体は緊張で燃え

血が袖を伝った


それでも 彼は立っていた


すべてが終わった時

周囲に 生きている者はいなかった


都は死んだ

だが 敵も存在しなくなっていた


夜が 灰の中の彼に追いついた


彼は空を見上げ

低く言った


- 奴らは去った

俺は残った

奴らが 一日さえ足止めできないと恐れた軍を

俺は一人で止めた

奴らは俺を信じなかった

そして逃げを選んだ


- 奴らが選んだのは 安全と敗北と恐怖

俺が選ぶのは 答えと勝利と現実


彼はゆっくり立ち上がった


その目に勝ち誇りはない


あるのは決断だけ


- 俺はもう 逃げる者には仕えない

恐怖に 俺の選択を決めさせない


これは伝説の始まりじゃない

道の始まりだ

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