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エピソード18 闇の中の糸

扉の向こうの廊下は 狭いのではない

正しいだけだった

石を定規で切りそろえ

そのあと 余計な音を聞かないことまで教え込んだみたいに


最初の曲がり角は すぐ左

床は滑らか

でも細い筋が走っている

傷みたいな痕


セイガはその線に寄って ショーンゴの左につく

ランゼは中央 盾を胸の前に 肩でセイガをかばう

リオルは遅れずに 右の壁際 指先は温かい 血を止める準備

ケルトはショーンゴの後ろ 半歩 前ではなく横を見て 角を数えるみたいに

ミロスは入口で消えた

影だけが後ろへ滑って 光が権利を持てない場所に残った


上から水が落ちた

雫は落ちたのに 音は届かない

廊下がそれすら自分のものにしたみたいに


ランゼは小さく

- 聞こえる

- 足音じゃない

- 何かが蠢いてる


セイガは彼を見ずに頷く

- そこで何かが起きてる

- 空っぽじゃない


ケルトがようやく囁く

- ここは体を殴らない

- 権利を奪う

- 声

- 動き

- 戻る権利


ショーンゴは答えない

ただ もう一歩

そして息に触れられた感覚

指で これは誰の空気か確かめられたみたいに


黒い輪は光らない

魔法には見えない

でも少し締まっただけで 空気がすぐ重くなる

廊下が思い出したみたいに ここに一人じゃないと告げるみたいに


前に抜けがあった

光じゃない

石が少しだけ きれいに見える場所


そこに男が立っていた

背が高く 肩幅がある

飾りのない暗い上着

顔は普通 茶色い目 短い髪

首に細い金属札

指でそれをつまみ 軽く打って リズムを確かめている

それが彼のフック

耳じゃなく 金属で聞く男


彼は叫ばずに言う

- 先へは 払わずには行けない


声は普通だった

だが語尾だけが半分消える

セイガは瞬きをした

意味の一部を盗まれたみたいに


ケルトは隠さず

- タルン

- 今は見張りか


タルンは歪んだ笑み

- 見張りじゃない

- お前らが怖くなって逃げるとき

置いていくものを集めてるだけだ


ランゼは盾の帯を締める

盾が重くなった

一人ぶんの運命みたいに


ショーンゴは落ち着いて

- 俺たちは恐怖を売りに来たんじゃない


タルンが一歩

その瞬間 ランゼの足元がわずかに狂った

石じゃない

均衡の感覚

ランゼはよろめき 盾がずれる

腕が 重さの向きを忘れたみたいに


リオルがすぐ肩に触れる

- 呼吸

- まっすぐに


セイガは手を上げる

光は槍にならない

糸になる

髪みたいに細く 左の床へ置かれる

線から線へ

空間を縫って 崩れないようにするみたいに


タルンはその糸を見る

- 光を縫い目にするか

- いい判断だ


そして札を鳴らす


天井から黒い糸が落ちた

物じゃない

空気に触れる線

セイガの喉元の近くに触れて

セイガは一瞬 言葉を吐けなくなる

音じゃない 意志さえも


ショーンゴが近づく

急がない

タルンとの間を二歩だけ残す

そして指を握る


空気が硬くなる

万力みたいに

天井の糸が震えた

見えない壁に当たったみたいに


ショーンゴはすぐ代償を感じる

右の指が重い

濡れた石を乗せられたみたいに

短く

説明なしに


タルンは首を傾ける

- 圧だな

- いい

- だが ここでは圧も払う


ショーンゴは声を上げない

- 今日は退け

- 二度と戻るな


タルンが鼻で笑う

- 俺がこの場所を忘れると思うか


ショーンゴは同じ調子

- 忘れない

- ただ 来る権利がなくなる


ショーンゴはタルンを斬らない

殴らない

圧をずらす

身体じゃない 首の札へ

彼が持ち歩く規則に触れるみたいに


札が一度だけ鳴った

音がやっと石に届いた

廊下は盗み損ねた


タルンが半歩下がる

目は怒りじゃない

計算になる

初めて 攻めじゃなく出口を探した


セイガは息を取り戻す

光の糸は床に残る

道がまだあるという印


ランゼは盾を直す

重い

でも もう正しい


ショーンゴは仲間へ

- 英雄ごっこはいらない

- 静かに行く

- 必要なものだけ取る

- 答えだ


タルンは右の壁へ退く

逃げない

今はその時じゃないと認める者みたいに 道を空ける


先で廊下は もう一度曲がる

その向こうにあるのは

音じゃない

存在

見えなくても もう見られている感覚


そして上では 眠りかけの通りで 街がまた払った

今度は血じゃない

最初の叫びを上げる権利

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