エピソード14 街の貢ぎ
足元の石が低く唸った
大きくはない
まるで街が地面越しにため息をついたみたいに
井戸のそばの広場はまだ薄暗い
灯りが燃え残り
住人たちは水を汲みに出てきた
尖った耳の者が肩に桶を担ぎ
短い角の者が子どもの手を引く
一人が一歩踏み出し
その瞬間 倒れた
足裏が自分のものじゃなくなったみたいに
次の一歩が そもそも存在しないみたいに
鼻から血が弾けた
細く
傷じゃない
支払いみたいに
近くの売り子が手を上げた
叫ぼうとした
- おい
その言葉の瞬間 声が消える
口は開いたまま
目は丸い
息は出る
音だけが無い
規則が動いた
人は理解できない
互いを見る
空気に重さが吊り下がる
肋が さらに悪い肺になったみたいに
頭の中の名前そのものが小さくなるみたいに
街が奪っているのは血じゃない
自分である権利
神殿の柱が立つ場所で
若い衛兵が群れへ一歩出る
押しのけようとして
突然 逆へ向く
誰かが気づかれないまま 方向を変えたみたいに
衛兵は止まり
自分の足を憎しみで見下ろし
無音で呟く
選択を盗まれたみたいに
倉庫の下
広間の天井から埃が落ちる
中央の亀裂が冷気を吐く
その闇は光らない
押しつける
濡れた布が顔を塞ぐみたいに
ランゼは亀裂の前
盾はベルトに繋がれ
腕は万力みたいだ
倒れない
だが動くたび 何かを削がれて
下へ投げ込まれるみたいに
セイガは左の壁際
掌の光が震える
飾りのためじゃない
この結び目の中で 唯一の目印
リオルは右端
指は温かい
自分の傷に掌を押し当て
痛みなんて関係ないと しつこく装う
ケルトは少し後ろ
入口寄り
視線はショーンゴじゃない
ヴェルクへ
見返してくる扉へ
ミロスはヴェルクの後ろ
影の中
英雄じゃない
逃亡者でもない
肉じゃない弱点でも 見つける者
ヴェルクは亀裂の縁に立つ
フードは裂け
額の印が燃える
声は平らだ
報告書を読むみたいに
- 見えるか
- 運んでるのは人じゃない
- 街が払ってる
ショーンゴは目を逸らさない
周りの黒い輪は光らない
魔術には見えない
世界が覚えている境界
ヴェルクが指を上げる
そして遠く上で
また誰かが倒れる
糸が街の腱を引いたみたいに
ショーンゴはそれを身体で感じる
他人の痛みじゃない
他人の記録
一瞬だけ 自分の力が自分のものじゃなくなる
呼吸の権利に触れられたみたいに
セイガが歯を噛む
光が心臓の拍に合わせて暗くなる
- こいつが取ってるのは俺たちじゃない
- 表を取ってる
街の顔 進める権利だ
ケルトが囁く
鈍く
誇りはない
- 結び目は上で食う
- ここで負けたら
- 上は空っぽになるまで払わされる
ヴェルクはショーンゴを見る
片口だけで笑う
初めて ここに問題がいると認めたみたいに
- お前は亀裂に俺を覚えさせた
- なら俺は街にお前を覚えさせる
ショーンゴはゆっくり息を吸う
空気がさらに重い
肺がふるいを通されるみたいに
掌を上げる
ヴェルクへじゃない
見えない糸へ
上へ伸びている糸へ
- もういい
叫びじゃない
境界
印が瞬いた
ショーンゴは空気を細い稜線で切る
その稜線は打撃みたいに飛ばない
境界をずらす
繋がりを断つ
肉じゃない
経路を
一瞬 静かになる
上の街が 心臓を止めたみたいに
次の瞬間 ショーンゴは代価を感じる
指が重くなる
骨に鉛を流し込まれたみたいに
心臓が一秒だけ自分の拍を外れる
周りの空間が言うことを聞かない
拗ねたみたいに
ヴェルクが目を細める
平静がひび割れる
恐れじゃない
道具を折られた者の怒り
- 貢ぎを止めたと思うか
ショーンゴは真っすぐ見る
小さく
冷たく
- 最初の引きを止めた
- 次はお前の番だ
広間の下の石がまた唸る
だが今度は服従じゃない
警告
そして上で
倉庫の上で
空気に黒い後味が残る
街が理解したみたいに
下に現れたのは
頼まない者
代わりに払わせない者




